建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年4月号〉

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【特集 わが国の鉄道整備最前線 PARTT】


未来への大きな夢の架け橋!

まちづくりと一体となった鉄道整備を全力で推進中

東京・つくば間を45分で結ぶ期待の新路線、平成17年度の開業を目指す

つくばエクスプレス(常磐新線)

◆予定路線概略図

 首都圏北東部、秋葉原・つくば間を縦断する鉄道「つくばエクスプレス」の工事が、平成17年度の開業を目指し、着々と進められている。

一体化法に基づき整備

 「つくばエクスプレス」は、昭和60年7月の運輸政策審議会の答申「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」の中で、整備を進めるものと位置づけられた路線。「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法」に基づいて整備されるが、これは、各都県作成の基本計画に従い、沿線地域での土地区画整理等との整合を図りながら、まちづくりと鉄道整備を一体的に進めていくものだ。
 これまでの地域開発は、鉄道開通後に後追い的に進められる場合がほとんどで、実際に沿線開発を実施する段階で難航することも多かった。しかし、一体化法に基づき、鉄道と沿線地域の開発を結合することにより、鉄道開通後のまちづくりのイメージを詳細に検討した上で工事が進められるので、合理的・効率的な開発を行うことができる。

◆一体化整備の手法

開通後の経済効果

 「つくばエクスプレス」が開通すれば、東京都心からつくばまでの所要時間は大幅に短縮される。同区間は現在、JR常磐線経由で85分、高速バス経由で65分を要しているが、開業後は45分に短縮。都心への通勤圏が拡大され、人や情報の一層の交流を促進し、その経済効果は、開業後の30年間で約26兆円と試算されている。これは現在日本で計画中のプロジェクトの中でも最大規模で、その景気浮揚効果は計り知れないものがある。

新しい技術開発

 建設工事の主体となるのは日本鉄道建設公団だが、同公団では、経済的で環境に調和した鉄道を建設するため、様々な技術開発に積極的に取り組んでいる。
 例えば、高架橋には、施工性を向上させ、コストダウンを図るため、景観に優れたシンプルな「アーチスラブ式ラーメン高架橋」を、トンネル工事では、防水性、経済性、施工性の向上を図るため、リングの数を減らした幅広セグメントを採用。また、高架駅は、2柱式で、両側の柱と上屋を一体化した「ハイブリッド(複合)構造」とし、駅設備の柔軟なレイアウトを可能にしている。

▲アーチ形を取り入れコストダウンを図る
アーチスラブ式ラーメン高架橋
▲2柱式により駅設備の自由なレイアウトが
可能となるハイブリッド(複合)構造の高架駅
▲筑波研究学園都市と筑波山(つくば市)

未来都市の創造を

 開業後は、沿線自治体の出資により設立された第三セクター「首都圏新都市鉄道株式会社」が運営。予定では、1日195本を運行し、輸送需要は約32万7千人を見込む。
 現在、沿線の東京、埼玉、千葉、茨城の沿線各都県で、それぞれがバラエティー豊かなまちづくりを行っているが、地域の愛称も、一般公募により「みらい平・いちさと」に決定。これは、関東平野に現れた未来へと連なるまちを意味する「みらい平」と、交流やふれあいを感じさせる「いち(一、市)」「さと(里、郷)」に、未来生活への一里塚としての想いを込めての「いちさと」という意味となっている。
 未来の新しい都市空間を創造し、地域の活性化を図るためにも、「つくばエクスプレス」の1日も早い開業が待たれるところだ。