建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年4月号〉

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【特集 わが国の鉄道整備最前線 PARTT】


希望あふれる2003年春開業に向け、半蔵門線水天宮前〜押上間6.1kmが完成間近

街と人々との調和を大切にした環境にやさしい地下鉄建設を提唱

11号線(半蔵門線) 水天宮前〜押上間 帝都高速度交通営団

 11号線(半蔵門線)の延伸工事である、水天宮前〜押上間は2003年春の開業をめざし急ピッチで建設が進んでおり、現在は残りの土木工事と設備工事を行い、開通に向けての最終段階に入っている。11号線は、世田谷区の二子玉川から渋谷・大手町・水天宮前・押上等を経由し千葉県松戸に至る計画路線として「運輸政策審議会答申第7号」で策定されたもので、「二子玉川〜渋谷」間を東急電鉄が、「渋谷〜水天宮前」間を半蔵門線として営団がそれぞれ建設し、既に営業を行っている。
 今回は、営団が所管する半蔵門線の延伸工事として、現在端末駅となっている水天宮前駅から、押上駅までをつなぐ路線の建設事業を紹介する。
 この路線は、隅田川東岸地域を走る都営大江戸線、都営新宿線、JR総武線、京成押上線、都営浅草線の各路線と連絡して“鉄道ネットワーク”を充実させ、利用者の利便性を高めるものとして期待されており、また、押上では東武伊勢崎線と相互直通運転を行う予定で、これにより既に相互直通運転を行っている田園都市線を介して、神奈川県から東京都を貫通して埼玉県に至るという長大路線となる。

“地下鉄”を知り尽くした営団ならではの新技術をふんだんに取り入れたトンネル施工

 営団は昭和26年の丸ノ内線着工以来、現在までに7路線約167kmの建設を行ってきたが、この間、経済性・環境を考慮した安全で良質なトンネルを作るために多くの工法・新技術を開発しており、今回の延伸工事でも、これまでのトンネル建設技術の粋を集め、さらに種々の新技術を導入している。4駅のうち住吉駅、錦糸町駅及び押上駅の3駅を開削工法で施工し、清澄駅及び清澄留置部並びに残る全ての駅間トンネルをシールド工法にて施工している。それぞれの工法において安全性、経済性を考慮し、地盤条件、施工環境に適合した特徴ある施工法を採用している。

■開削工法
 掘削地盤は超軟弱な沖積粘性土層であるため、周辺地盤への影響を考慮し、土留めは遮水性に優れ剛性の高い本体利用の地下連続壁(厚800mm)を採用している。更に、掘削に伴う土留めの変形を最小限に抑えるため、掘削内には生石灰杭を施工し、掘削の進行に併せて、床版鉄筋コンクリートを先行打設する逆巻工法を採用して支保工の剛性を高くしている。
■シールド工法
 シールド施工区間は、超軟弱な沖積粘性土層から洪積のローム層砂質土層、粘性土層そして砂礫層と多彩な地盤が対象となっており、トンネルも単線型、複線型、三連型と多様な形状となっている。
 シールド掘進地盤が互層を成し変化に富む区間並びに大断面の三連シールド区間については、泥水式シールド工法を採用し、殆ど一様な単一層(沖積粘性土層)となる区間については、シールド発進基地の条件も考慮し泥土圧シールドエ法を採用している。
 これら各々のシールド施工区間では、対象地盤の特性、トンネル形状、線形、施工環境等を十分考慮し、各々特徴を特った6台のシールド機による施工で、安全性と経済性の確保を図っている。
 側部先行・中央揺動型三進シールドや大断面偏心多軸式泥土圧シールドに代表される新技術の開発を含め、各々、シールド技術の粋を集めた多様なシールド工法を採用しています。
 また、セグメントは幅1500mmの鉄筋コンクリート平板型(高剛性継手採用)を標準とし、経済性並びに剛性・止水性の確保を図っている。
 なお、三進シールドに今回初めて鉄筋コンクリートセグメントを採用している。

ISO14001を取得し、環境に配慮した地下鉄建設を推進

 営団では、地下鉄工事で発生する土砂の排出抑制や再生利用など、環境に優しい工法の研究開発と実用化に取り組んでいる。特に、泥水シールド工事の発生土についてはシールドトンネルのインバート材や、開削トンネルの埋め戻し材に再生利用することで新工法を確立し、リサイクルを積極的に推進している。


帝都高速度交通営団
建設本部 11号線押上工事事務所長 入江 健二

 何と言っても工事区間の軟弱地盤への対応が施工上のキーポイントであり、事故が無いよう安全には全力を傾注して参りました。また、住宅等が密集している箇所での工事であるため、沿道のみなさまとのコミュニケーションは非常に大切です。みなさまのご理解があったからこそ、これまで工事が順調に進めることが出来たと言っても過言では御座いません。
 残りの工期を待ちに待った開業に向けて、引続き慎重にかつ安全に工事を進めて参りますので、変わらぬみなさまの温かいご協力を宜しくお願い申し上げます。