〈建設グラフ1997年10月号〉

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◆島牧村村長の証言

発生直後各世帯に緊急無線

島牧村長 水守義則氏

昭和12年11月22日生まれ
平成7年8月初当選
前職:北海道土木部留萌土木現業所管理部長


今回の事故について、島牧村の水守義則村長は「私自身、現場を見てゾッとなった。事故当時は、偶然にも役場の水産課職員が別の業務で現場を船で通りかかって発見し、2時30分過ぎに報告してきた。事故の起こる以前、私自身もこのトンネルはよく通った。特にこの現場だけを注意して見ていたわけではないが、時々、通行止めになっていたことがある。村は崖地が多い地形でもあり、危険は感じていたし、住民もそれは感じていたと思う。だから、報告を受けたときは、いよいよこれは大変なことになったと思った」と話している。
 事故発生後は、「直ちに各世帯に設置されているオフトーク(緊急用無線)と街頭に設置してある拡声器で事故を周知し、不明な点については役場に問い合わせてもらうよう伝えた。幸い、地元住民の安全はすべて確認できたので人的被害はない」という。
 これまで、国に対しては「覆道やトンネルが非常に多く、開発局の調査で危険度がAランクとなっていたので、崩落の時期が分かっていたわけではないが、できるだけ早期に対策を講じてもらうよう様々な機会を見ては地元の小樽開発建設部や、総合開発期成会の一員として北海道開発庁に何度も要望してきた。回答は点検、調査中なので、時期は明確にされなかったが対策は必ず行うということだった」とのこと。
 今回の事故での影響については、「行政上の業務としてはあまりない。というのも、南部方面で村が関係を持っている行政機関は、函館営林支局、自衛隊、道警函館方面本部、その他隣接町村くらいで、それ以外は倶知安町の後志支庁や小樽市の小樽開発建設部など北部方面の機関がほとんど。札幌市内へ行く場合にも、寿都町や黒松内町を通って行くことになるので影響は出ない」とのことで、むしろ「瀬棚町の方が大変でしょう」と気遣っている。
 しかし、「観光地でもあるので、南から観光客が訪問できなくなったのは困る。地元の旅館も民宿も営業できず、観光産業に影響が出ている。また、村外へ勤務する人もいるし、役場職員にもこのトンネルを通って通勤している者もいる。だから、とにかく一刻も早く復旧を完了してもらうよう、国に求めたい」と話している。
 同村長は関係機関で構成された現地合同本部の一員として本部に詰めているが、本部内には仮眠をとるスペースは無く、関係者が交代で休息をとるだけという。「昨日も泊まり込みだった」とのことで、疲れの色が見える。


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