建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年2月号〉

年頭所感

国土交通大臣 扇 千景


 平成14年の新しい年を迎え、謹んで新春のごあいさつを申し上げます。
 昨年1月6日に国土交通省が発足してから一年が経過しようとしています。発足以来、国土交通省の使命である、「人々の生き生きとした暮らしとこれを支える活力ある経済社会、日々の安全、美しく良好な環境、多様性ある地域を実現するためのハード・ソフトの基盤の形成」に向けて、統合のメリットを活かし、無駄なくスピーディーに、また、コストダウンを図りつつ、質の高い施策を展開し、この改革が国民のために良かったといえるよう努めてまいりました。
 また、現在、小泉内閣の下で「聖域なき構造改革」が進められております。国土交通省としても、「二十一世紀国土交通のグランドデザイン」の策定や、施策の融合・連携、政策評価の一層の活用に努めるとともに、公共事業の効率性・透明性の向上に向け、既存事業・システムの見直し、事業評価の厳格な実施、事業のスピードアップと工事の平準化等によるコスト改革の推進、公共工事入札適正化法の厳正な運用、一般競争入札の拡大等による競争性の向上、ハード・ソフトの戦略的組み合せ、既存ストックの有効活用など、改革に取り組んでおります。
 さらに、特殊法人等改革についても、内外の社会経済情勢の変化を踏まえ、昨年12月19日に閣議決定された整理合理化計画に従って、今後も、国民にとって最善の改革となるよう積極的に取り組み、改革が着実に前進するよう努力してまいります。
 今後は、社会資本整備について、真に国民のためになるよう、長期計画・国土計画の総合的な見直し、構想・計画段階における幅広い意見反映、改正土地収用法の的確な運用を含め、改革の一層の推進を図るとともに、交通政策についても、本年が交通産業に係る需給調整規制廃止の仕上げの年であること等を踏まえ、地方運輸局の改革等を通じて地域密着型、事後チェック型への転換を進めます。
 平成14年度政府予算案における国土交通省の一般公共事業費は、厳しい財政の中でも、当初予算と平成13年度第二次補正予算を一体としたいわゆる「十五ヶ月予算」として見た場合、前年度当初予算の約6%増の予算が確保される見込みとなっておりますが、引き続き、厳しい経済情勢に対応し、事業の重点化、民間需要創出効果等に配慮しつつ、所管事業を着実に執行するほか、新市場・新産業の育成、規制改革、土地流動化、観光振興など雇用確保に資する施策を推進します。また、建設業界の再編を促進し、技術と経営に優れた企業が伸びうる環境の整備、セーフティネットの充実等を進めるほか、厚生労働省と連携し建設業就業者の雇用環境にも十分配慮するとともに、造船・関連業界の経営基盤強化、内航海運の構造改革にも取り組みます。
 重点的に取り組む施策としては、魅力と国際競争力ある都市の再生、個性ある地域・美しい国土の形成、環境にやさしい社会の実現、バリアフリーなど少子・高齢社会への対応、グローバル化の進展に対応した円滑な人の交流と競争力ある物流の実現、IT革命の推進など二十一世紀型課題に対し、国土交通省の幅広い守備範囲を活かして、総合的な展開を図ります。
 具体的には、魅力と国際競争力のある都市への再生を目指し、民間の力が最大限に発揮できるよう、時間と場所を限定し、都市計画・事業に関する措置や民間事業者に対する金融支援等のための大胆な措置を講じるとともに、民間の事業計画の都市計画への反映、民間の創意工夫を活かす設計の自由度の向上、民間都市開発に関連する公共施設の重点的な整備、マンション建替えの円滑化、PFI方式による中央官庁施設、コンテナターミナルの整備等を実施します。また、緑の創出、河川・海の再生等都市環境インフラの再生、密集市街地の緊急整備、公共賃貸住宅ストックの総合的な活用、大都市圏の環状道路の整備などの都市再生プロジェクトを強力に推進します。
 また、地方の個性ある活性化を促進するため、地域間の交流を促進する幹線交通体系の整備、中心市街地の活性化、大学を核としたまちづくり、公共交通サービスの維持・充実を図るとともに、北海道の総合開発、豪雪地帯、離島、奄美、小笠原、半島の振興を積極的に推進します。
 観光については、観光まちづくり、旅行促進等とともに、極めて少ない外国人旅行者を増加させるための誘致施策や、特に本年が日中韓国民交流年でもあることを踏まえ、中国・韓国等東アジアとの観光交流の促進に取り組みます。
 循環型社会の構築や地球温暖化対策など環境問題への対応としては、一千万台に向けた低公害車の開発・普及侭進、モーダルシフトの推進、渋滞の解消等による道路交通環境対策、住宅・建築物の省エネ対策、自然河川、干潟、緑地等の保全・再生等自然共生施策、公共工事におけるゼロエミッションなど建設リサイクルの促進、総合的な静脈物流システムの構築、自動車等のリサイクルの促進等を図るほか、水問題、海洋汚染等分野での国際連携を進めます。
 少子・高齢社会への対応としては、自宅から交通機関、まちなかまでハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境や高齢者・子育て世代が安心できる居住環境の整備を進めます。
 我が国を最先端の経済活動の拠点として再生するため、大都市圏拠点空港・国際港湾の機能強化と鉄道・道路アクセス改善等の利便性向上、主要都市間の連結を強化する幹線道路網や新幹線等の幹線鉄道の整備などマルチモーダルな交通体系や国際競争力ある物流システムの構築を進めます。
 さらに、IT革命を推進していくため、世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成、高度道路交通システム(ITS)や地理情報システム(GIS)の整備・普及等の公共分野のIT化、申請・届出等手続の電子化、港湾におけるワンストップサービス化、電子入札の普及・拡大等の行政の情報化、ワールドカップサッカーを契機としたICカードシステムの開発に努めます。
 災害・安全対策では、全国各地の水害や土砂災害の被災地域において、一刻も早い復旧に努めるとともに、公共施設の地震防災対策、水害・土砂災害・高潮に対すみ施設整備とハザードマップの作成等の対策を推進するほか、社会基盤・交通施設の管理・防災対策の充実、防災拠点ネットワークの形成、ヒューマンエラーの防止策等ソフト・ハード両面からの対策を推進します。また、国際組織犯罪への水際取締体制や海賊対策を強化します。
 また、米国同時多発テロ事件を踏まえ、引き続き、陸海空の公共交通機関や重要施設の警備を強化するとともに、テロ対策に係る国際的な取組みに積極的に参加・貢献するほか、航空会社や旅行関連事業者への支援、沖縄観光の振興に取り組みます。
 さらに、平成13年12月に発生した九州南西海域不審船事案に対しては、海上保安庁において困難な状況の下適切に任務を遂行したものと考えております。今後は、事案の鮮明に努めるとともに、今回の事案を踏まえ不審船への対処に必要な装備、体制、制度等について検討してまいります。
 以上、新しい年を迎え、私の所信の一端を申し述べましたが、今後とも、国土交通行政の推進に関し、国民の皆様の一層のご支援、ご協力をお願いするとともに、新しい年が皆様方にとりまして希望に満ちた、大いなる発展の年になりますことを心より祈念いたしまして、新年のごあいさつといたします。