建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年1月号〉

シリーズ・コシヒカリのふるさと
新潟県の農業農村整備


北蒲原地域の生産基盤を総合的に整備し、併せて農村環境整備も確立

新発田農地事務所

新発田北部地区〜左写真は施工前、右は施工後

 新発田農地事務所の所管区域は、新潟県下越地方北部に位置し、東に福島県境山岳地帯、西に日本海砂丘地域、南は阿賀野川、北は胎内川右岸流域に広がる1,140kuの3市6町4村からなる行政区域(いわゆる北蒲原地域)である。
 江戸時代以前、この地域の河川は、日本海の北西風と河川により流下された土砂によって形成された砂丘に行く手を阻まれ、現在の信濃川河口と荒川河口でようやく海に流下するありさまであった。このため、この地域は、北は荒川から信濃川に至る潟湖の様相を呈し、福島潟、紫雲寺潟(塩津潟)に代表される低平な湿地帯であった。
 また、本地域は荒川と阿賀野川の間に流下する胎内川、落堀川、加治川、新井郷川流域の河川により形成された沖積平野で、これら河川が現在のように日本海へ流下できるようになったのは近世以降のこと。先人の努力により開削されて海への直接排水が可能となったことや、戦後に展開された土地改良事業(内水排除の実現)により、今日の北蒲原地域の農業基盤、生活基盤が確立された。
 しかし、一応の排水施設は整備されたものの、低平な排水不良地域であることに変わりはなく、新井郷川流域では福島潟の水位を日本海の潮位より1m程度低く保つため、新井郷川排水機場で終日排水を行っている。
 こうしたことから地域の排水改良に対する意識は高く、新発田川放水路、福島潟放水路の新規開削や国・県営農業農村整備事業へ脈々と受け継がれており、現在では用排水施設の改良整備と併せ、担い手育成ほ場整備事業、(25地区)広域農道整備事業(4地区)等の取り組みが本格化している。

▲安野川地区〜安野川水門から上流を望む ▲集落地の湛水初害〜平成10年8月4日の豪雨で、
大荒川沿川の大野地集落(水原町)は甚大な被害を被った

主要事業(1) 県営ほ場整備事業・新発田北部地区 (担い手育成基盤整備事業)

 計画区域は新発田市の北部、二級河川・加治川左岸に展開する耕地で、米作経営を主体とした土地利用型の平地農業地域。本地区は区画整理済みであるが、明治末期から大正初期にかけて10a区画を標準に整備されたもので、小区画の湿田状況のため自己完結型営農が主体で、農地の有効利用や集積による生産コストの低減等が著しく遅れている。
 そこで、大区画ほ場の施工と暗渠排水の実施により、水田の汎用化を進め、農地の高度利用と担い手農家への農地集積を図り、効率的で安定的な農業経営を目指す。
 地区面積は301ha。主要工事の概要は、区画整理工事(274ha、区画形状50a〜100a)、用水工事(加圧機場3箇所、パイプラインL=30.2q)、排水工事(排水フリュームによる自然排水L=17.8q)、農道工事(幅員5.0m〜7.0mの支線農道L=20.6q)、暗渠排水
工事(205ha)などとなっており、総事業費は約38億5,800万円。工事は平成8年に着工し、平成16年に完了の予定。現在は区画整理を終え、暗渠工事を実施中(進捗率30%)である。
 また、営農面では、現在2つの生産組織が設立され、110haと地区面積の40%を経営。その他、アスパラの生産組合(7戸、2.3ha)が平成12年度に設立され平成13年より出荷を始め、高収益を上げている。

主要事業(2) 湛水防除事業(大規模)・安野川地区

 計画区域は新潟平野北部、阿賀野川の右岸。北蒲原郡水原町、安田町、京ヶ瀬村、笹神村の4か町村にまたがり、大半は低平地の水田地帯となっているが、東部の五頭山地から流下する山地流域も含まれる。
 この地域は、地形的に日本海の海岸線に沿って形成された砂丘列と、阿賀野川の自然堤防による微高地に挟まれており、排水機能が極めて低く、かつては田舟を使い、胸まで泥に浸かりながらの農作業が行われていた。
 戦後、この泥田を乾田化・汎用耕地化するために、各種土地改良事業を実施し、基幹排水施設や地区内排水路の整備を行ってきた。本地区は「国営阿賀野川農業水利事業」(安野川・大荒川・小里川の改修、昭和22年〜昭和48年)の完了からおよそ25年が経過し、流域内では、道路改修・公共用地の造成・宅地開発の進行により、河川への流出率が大きく増加。また、地盤沈下等による排水施設の機能低下が進んだことによりしばしば湛水被害が発生し、その都度、ポンプによる応急排水が実施されてきたが、特に平成7年8月、平成10年8月の湛水で農作物や一般資産に甚大な被害が生じた。
 そこで、対策として、排水路3路線(安野川・大荒川・小里川、L=13.9q)の改修と排水機場1箇所(法柳排水機場)の改築を行うことにより湛水被害を解消し、農業経営及び住民生活の安定を図ることとした。総事業費は約268億円で、平成10年度に着手されている。

主要事業(3) 県営地域用水環境整備事業・加治川地区

 計画区域は聖籠町・紫雲寺町の加治川下流沿川。区域内では、農村地域の混住化の進展に伴い、生活様式の高度化に伴い農業用排水施設沿いの環境悪化も進み、特に水質の悪化、景観の損壊、親水機能の低下といった問題が生じている。
 そこで、これら諸問題を解消し、従来からの水利施設の整備による利便性の向上とともに、景観の保全、生態系の回復等の環境的観点も含めた農村の快適性を求める声は、農村の住民のみならず、近傍の都市住民からも高まってきている。
 このことから、本事業は、農業用水施設の保全管理と一体的に施設の有する水辺空間等を活用し、豊かで潤いのある快適な生活環境を創造することを目的に行われる。区域は、「四季の路ゾーン」「ふる里の農村文化ゾーン」「ふる里の水と緑を持つ回廊ゾーン」に3区分して整備され、豊かな水辺空間の創出を図る。


▲加治川地区「四季の路ゾーン」完成予想図