建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年12月号〉

シリーズ・コシヒカリのふるさと
新潟県の農業農村整備


河川改修、土地改良で生まれ変わった“地図にない湖”

新潟農地事務所


▲亀田郷の農業・横越町のチューリップ畑

 新潟農地事務所の所管区域は、信濃川と阿賀野川の2つの1級河川の最下流域を占め、3市2町にわたる235.21ku。海岸線は新潟砂丘をなし、これより内陸側は潟湖に上流から土砂が運ばれてできた低く平坦な土地で、二大河川と分流した中ノ口川、小阿賀野川が流れ「亀田郷」と「白根郷」の2つの輪中が形成されている。
 亀田郷は、信濃川、阿賀野川、小阿賀野川及び新潟砂丘によって囲まれ、県都新潟市の中央部、亀田町及び横越町を合わせた11,154haの輪中で、標高が海抜0mよりも低い「地図にない湖」と呼ばれた土地が7割近くを占める。米とともに大都市・新潟市近郊の立地条件を活かした野菜類や切り花等多種多様な農産物の生産が盛んで、横越町はチューリップ球根の生産高が全国第2位。開花期に一面に広がる花畑は圧巻だ。
 一方、白根郷は、信濃川と中ノ口川に囲まれ、白根市と加茂市の一部を合わせた7,460ha、さつまいも状に細長い極めて平坦な輪中。整備された水田で良質米が安定して生産されており、河川沿いの肥沃な土壌で、なし、もも、ぶどう等果物の生産も盛ん。西洋なし「ル・レクチェ」発祥の地でもある。しかし、白根郷を縦貫して流れる鷲ノ木大通川他排水河川の中流域を中心に、地盤沈下現象が顕著となっている。
こうした地形条件から、地域は古くから洪水の常襲地帯で、農業の「水との戦い」が戦前まで続いた。
 戦後になると、安全度の高い河川改修とともに大規模な土地改良事業が実施され、輪中内の水位は機械により河川水位よりも低く保たれることとなり、かつての超湿田は汎用化水田へと生まれ変わった。今日では、農地のほかに商業地、工業団地、住宅地、公共施設等が集まり、地域はもとより県の経済、行政、文化の中核地帯が形成されている。
 今後、県下有数の農業生産高を誇る管内の農業・農村の健全な発展を実現してゆくためには、寄せ来る農業の国際化の波に打ち勝つ生産性の高い土地基盤の整備、混住化の進展に対応した質の高い生活環境の整備、整備された施設の適正な維持管理等を着実に推進していくことが必要だ。