道の日へ

〈建設グラフ2000年8月号〉

特集 8月10日は道の日


ふるさとの ぬくもり伝える 道づくり

建設省北陸地方建設局 長岡国道工事事務所長 平田 五男

平田 五男  ひらた いつお
昭和 48年 3月 名城大学理工学部卒業
    48年 4月 建設省入省
平成 4年 4月 富山工事事務所副所長
    6年 4月 河川部河川工事課長
    8年 5月 企画部工事評価管理官
    10年 4月 河川局防災海岸課災害査定官
    12年 4月 長岡国道工事事務所長

はじめに

 長岡国道工事事務所管内は、長岡・魚沼両地方生活圏を主体に6市21町9村からなっており、新潟県の人口の約3割、72万人が居住しています。
 近年、経済や産業、情報活動など実に様々な場面や目的で、これまで以上に道路が利用されるようになっています。この道路を利用する誰もが使いやすいように、そして「ゆとりある社会の実現」さらに「魅力ある町づくり」を進めていくうえで、地域間の広域的な交流・連携のための道づくりはますます重要になってきています。
 長岡国道工事事務所は、こうした「道づくり」の軸となる一般国道8号・17号116号の3路線計208kmの改築及び維持管理と、一般国道289号の新潟・福島県境11.8km区間の改築を権限代行で実施しているほか、地域高規格道路である上越魚沼地域振興快速道路の計画区間のなかで最大の難所である、「八箇峠道路(平成9年9月に整備区間に指定された十日町市〜六日町間約10km)」の事業を実施しています。
 また、中越地域は日本有数の豪雪地帯でもあり、特に標高1,000mの三国峠を経て関東圏とを結ぶ一般国道17号の冬期道路の交通確保は大きな課題となっていることから、道路利用者が冬期においても安心して通行できる道づくりを進めています。
 事業を進めるにあたり、「ふるさとの ぬくもり伝える 道づくり」をキャッチフレーズとして据えています。これは、職員公募の中から選ばれた優れた作品です。ふるさとの地域特性(親しみやすさ、懐かしさ)に、ぬくもりという心の暖かさが感じられます。自然のたくましさ、優しさへとイメージが広がっていきます。同時にここには道づくりという自らの使命(役割)に込められた、願いとメッセージが託されています。


▲八十里越イメージ図

長岡国道工事事務所における道路整備の基本方針

  社会生活、経済活動が人を中心として一層効果的・効率的に展開されることを目標にし、これからの道路整備に役割を考え、平成10年度に、新たな道路整備五箇年計画が策定されました。
 長岡国道工事事務所でも、中越地域の特性を踏まえつつ、この道路整備五箇年計画の4つの柱となる施策に基づき、各事業を計画的に推進していきます。
1.新たな経済構造に向けた支援
 わが国の各産業の国際競争力の向上と地域の自立的発展のため、幹線道路の整備や情報ハイウェイ構築の支援、ITSの推進を行います。
2.活力ある地域づくり・都市づくりの支援
 道路交通渋滞の解消、地域・都市の基盤整理の形成のため、バイパスの整備促進、交通不能区間の解消を図ります。
3.よりよい生活環境の確保
 道路交通の安全確保、環境を重視した道路施策へ転換を目指し、交通安全施設、交通騒音対策等を実施します。
4.安心して住める国土の実現
 冬季の安全で円滑な道路確保・道路管理のため、除雪・防雪対策、防災対策を推進します。


新たな経済構造実現に向けた支援

●上越魚沼地域振興快速道路 「八箇峠道路」
 この道路は、上越市を中心とする「上越地方生活圏」と十日町市・六日町を中心とする「魚沼地方生活圏」とを相互に連絡する延長約60kmの道路です。
 この道路は、北陸自動車道・上信越自動車道といった日本海側・甲信地方の高速交通網と、関東圏に向かう関越自動車道をより短時間で結ぶことになり、東京・大阪などの大都市圏との結びつきを強める重要な幹線道路の役割も担うことになります。
 このうち、平成9年9月に整備区間に指定された「十日町市〜六日町間(約10km)」は、一般国道253号の一般通行規制区間や当該地域最大の難所である「八箇峠」の交通障害を解消するとともに、「十日町生活圏・六日町生活圏の地域活性化の促進・一体的圏域形成」「十日町生活圏の定住促進」及び、地域振興プロジェクト「マイライフリゾート新潟」等を支援していきます。
 また、環境に十分配慮しつつ、事業を進めていきます。

●道路交通情報通信システム(VICS)
 長岡国道工事事務所では、道路交通情報をリアルタイムに走行中のドライバーへ提供するため、平成11年2月4日から北陸地方建設局管内の一般道路では初めて、国道17号の湯沢地区でVICSによる情報提供を行っています。
 VICS情報は、国道沿いに設置した電波ビーコンから発信され、VICS対応のカー・ナビゲーションで受信します。現在は試験運転中で、VICSセンターと接続していないため、文字と簡易図形で表示してますが、本格的な運用時には地図形式での情報提供も予定しています。


活力ある地域づくり・都市づくりの支援

●八十里越
 一般国道289号は、新潟市を起点として福島県いわき市に至る総延長312.6kmの本州を横断する広域幹線道路で、日本海側と太平洋側を結ぶ大動脈として産業・経済そして文化等の発展に大きく関与しています。
 このうち、新潟県南蒲原郡下田村大字塩野渕から福島県南会津郡只見町大字叶津間の通称「八十里越(延長19.6km)」は急峻な地形を極め、加えて日本有数の豪雪地帯のため現在も通行不能区間のままとなっています。この通行不能区間解消と、一般国道289号の円滑な交通を目的に11.8kmを権限代行として直轄事業に編入し、事業を進めています。
 この事業を推進するにあたっては、環境に十分配慮をし、「八十里越環境検討委員会」を設置し、委員会の意見を聞きながら進めています。

●柏崎バイパス
渋滞の列が続き8号柏崎市内 柏崎バイパスは、柏崎市大字長崎〜同市大字鯨波間延長11.0kmのバイパス事業です。
 本現道区間は、近年の交通需要の増加により慢性的な交通渋滞を引き起こしています。そこで、本バイパス事業により柏崎市街を南側に迂回し都市内交通の円滑化、都市機能の活性化を図ります。




●栄拡幅
 栄拡幅は、南蒲原郡栄町大字猪子場新田〜同町大字千把野新田間延長5.1kmの現場拡幅事業です。
 本事業は、一般国道8号の交通渋滞解消と沿道環境の改善を目的とし、平成9年までに猪子場新田地区0.3km、千把野新田地区0.7kmを4車線供用しています。

●長岡バイパス
 長岡バイパスは、長岡市川崎町〜同市大積町間延長15.25kmのバイパスです。
 昭和61年に全線供用し長岡東バイパスと結合したことにより、地域間を結ぶ幹線道路と長岡市内の交通ネットワークの役割分担が明確になり、その後も15.25kmのうち12.25kmを4車線に拡幅したことにより長岡市中心部の交通渋滞は緩和されてきました。

●湯沢交差点改良渋滞する17号湯沢町宮林交差点
 本事業は、冬期休日におけるスキー客等による交通量増加で、湯沢IC交差点を中心とした著しい交通混雑を解消するため南魚沼郡湯沢町大字神立地先1.1kmの交差点改良を行うものです。



●六日町バイパス
 六日町バイパスは、南魚沼郡塩沢町大字竹俣〜同郡六日町大字庄之又間延長5.1kmのバイパス事業です。
 六日町周辺においては、上越新幹線や関越自動車道といった高速交通体系の発達に伴い交通量が増大し、市街地を中心に交通混雑が発生しています。このため、本バイパス事業により六日町市街部を西側に迂回し、交通混雑の解消と健全な市街地の形成を図っていきます。

●浦佐バイパス
 浦佐バイパスは、南魚沼郡大和町大字市野江甲〜北魚沼郡小出町大字虫野間延長6.6kmのバイパス事業です。
 本現道区間は、市街地を中心に交通混雑が発生し、冬期間における除雪の障害となる箇所も存在します。
 こうした問題の解消と、本バイパスルートに隣接する「奥只見レクリエーション都市公園浦佐地区(平成12年度末一部開園予定)の支援を含め事業を推進します。

●和島バイパス
部分供用した和島バイパス(三島郡和島村両高地先) 和島バイパスは、三島郡和島村大字両高〜同郡寺泊町大字硲田間延長6.26kmのバイパス事業です。現道は、集落内を通過しているため道路幅員が狭いうえ、急カーブ区間やJR越後線との踏切交差があることから、交通混雑や交通事故が多く、沿道住民にとって交通環境は深刻な問題となっています。こうした問題を解消するため本バイパス事業が計画されました。
 こうした中、平成11年4月27日には、三島郡和島村大字両高地先の1.17kmを部分供用し、「道の駅 良寛の里わしま」へのアクセスも容易になりました。また、和島バイパス法線上には計13箇所の遺跡があり、新潟県・和島村等と調査しながら発掘調査をし、景観整備も合わせて工事を進めています。

 
よりよい生活環境の確保

●バリアフリー事業
 バリアフリー事業とは、高齢者、障害者等の社会参加を支援するために、駅、公共・福祉施設、病院等の主要施設周辺を中心に、「平坦性と快適な通行空間を確保した連続性のある歩道」等の整備を積極的に推進するというものです。平成8年12月に、現状の歩道について「車椅子の通行しやすさ」の観点に立って点検を行い、その結果に基づいて歩道改良を実施しています。

●事故多発箇所対策
 「事故多発地点緊急対策事業」は、交通事故のデータをもとに抽出された緊急度の高い事故多発地点について、公安委員会と連携し重点的に対策を講じることにより交通安全の確保を図ることを目的として行っているものです。

●自歩道の整備
 歩行者と自転車利用者、そして自動車利用者が共に快適な道路空間を通行するために自転車歩行者道(自歩道)を特定交通安全施設等整備事業で整備しています。この自歩道は歩行者と自転車が共に通行できるよう3m以上の幅員を確保しています。

●バス停整備
 平成10年度から本格的に整備を始め、高齢者や障害者の方々に安全でかつ円滑に公共交通機関のバスを利用して頂けるようバス停を整備しています。これからもバス停とその周辺をコミュニテイ広場として整備し、街角“ふれあいの場”として提供していきたいと考えています。

●地域との植栽作業
 国道脇のチョットしたスペースや歩道内の植樹帯等に地元の方々と一緒に季節の花を植えています。春はパンジー、夏はハナスベリヒュー、そして秋のサルビア等々、色々な花が国道を彩ります。地元の方々からも水やりや草取り等の日常管理に御協力を頂いています。
安心して住める国土の実現

●除雪事業
・除雪体制の充実
 スタッドレスタイヤ時代に対応したきめ細かな、かつ効率的な除雪を実現します。
・歩道除雪の充実
 冬期歩行者空間確保計画(雪みち計画)に基づき、歩道除雪の拡充を図ります。

●防雪事業
 雪に強い道路とするために雪崩防止施設、消雪施設、気象情報装置等の整備を行います。

●雪寒機械設備
 除雪作業の効率化・省力化の向上を図るため除雪機械の整備を行い、冬期交通確保の充実に努めます。

●堆雪幅確保
 国道の除雪作業で路側に寄せられた雪による通行に支障が生じないように、堆雪できるスペースを設けます。

●防災対策
 当事務所管内では、豪雨・豪雪地帯や急峻な地形を数多く抱え、防災対策は緊急を要する事業の一つに挙げられます。道路の安全性・信頼性の向上を図るため、平成8年度に実施した道路防災点検に基づき危険箇所の防災対策工事を行っています。

●橋梁補修
 近年の車両の大型化や交通量の増大により損傷した老朽橋梁の補修や、塗料の塗り替え等を行っています。また、兵庫県南部地震の教訓を生かし、橋脚の耐震補強も進めます。

●舗装修繕
 わだち掘れやひび割れが生じ、損傷している箇所の舗装修繕を行っています。

●管理
・行政上の管理業務とは
 道路管理者が法律(道路法)に基づき自ら行う権利及び業務行為であり、一般的に次のような業務を行っています。


住民参加による道路づくりの進め方

●住民参加による道路づくりの進め方
・PI(パブリック・インボルブメント)
 これからの道路づくりにおいて、地域住民の方々の意見、考えに耳を傾けることが最も重要になってきます。こうした「住民参加」により道路づくりを進めていくことを「PI(ピーアイ)」といいます。
 当事務所では平成10年度より、一般国道17号「湯沢塩沢道路」に「PI」を導入し、下図のような手法で進めており、計画段階での住民の合意形成が図られ、事業展開が円滑になることや、検討内容を公表することで事業に対する理解が得られることがおおいに期待されます。


文化を大切にし、地域との交流を支えます

●快適オアシス「道の駅」
 生活を支える道路を快適に使用してもらうため、長岡国道工事事務所管内に10箇所の「道の駅」があり、道路や地域の情報を提供する施設を備えた休息設備が備わっています。また、特産物や資料館を備えた駅など地域に密着したサービスも提供しています。

一般国道116号バイパス八幡林トンネル 八幡林遺跡(国指定史跡・トンネル上部)を守るためのトンネル施工●埋蔵文化財の保護
 豊かな自然環境に恵まれた新潟県には、先人の生活の足跡を物語る遺跡が11,000箇所以上あります。当事務所管内の直轄事業においても、これら遺跡の発掘調査を事前に行うことで、貴重な出土遺物が数多く発見されています。
 これらも、ふるさと新潟県の歴史を考え、解明していくための遺跡を大切にしながら道路事業を進めていきます。

●イベントを通した地域との交流
 日頃慣れ親しんでいる道路の役割を、長岡国道の事業を通して理解していただくとともに、地域の生の声を感じ取るために様々なイベントを開催し、地域との交流を図っていきます。