建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年1月号〉

日本道路公団(JH)北陸支社

日本海国土軸の要・日本海沿岸東北自動車道

阿賀のかけはしが上下線とも接続

 日本道路公団北陸支社が整備を進めている日本海沿岸東北自動車道(以下、日沿道)は、新潟県新潟市を起点とし山形県酒田市、秋田県秋田市等を経由して、青森県青森市に至り、新潟県、山形県、秋田県、青森県の日本海側主要各都市を結ぶ。その総延長は、約440キロに及ぶ。北陸道とともに、日本海国土軸の中枢を担い、北陸道、関越道、磐越道、山形道、秋田道、東北道と接続し、社会基盤として重要なネットワークを形成する。また日本海沿岸地域の連携強化と発展には欠かせない道路として大きな期待が寄せられている。

 この路線は、全区間暫定二車線施工で、新潟平野の軟弱な地盤上の水田地帯を、盛土構造を主体として通過する。そのため、盛土材料の確保と軟弱地盤対策が大きな課題となった。
 盛土材料は、区間全体で約900万立方メートルという膨大な量が必要となった。これは東京ドーム9杯分に相当する。そこで、北陸支社は、国や地元自治体が行う公共事業との調整を図って盛土材料を確保する一方、建設発生土のリサイクルによって、事業費の節減を行った。
 軟弱地盤対策としては、緩速施工や先行盛土の他、橋梁背面の土圧を軽減するため比重の軽い発泡モルタルを使用する土圧軽減工法や、現場でのセメント混合処理により地盤改良、また、一部で試験的に軟弱地盤中の水分と空気を真空ポンプで強制的に取り除く真空圧密工法などの新しい技術も導入された。
 さらに、阿賀野川交差部においては、日沿道建設予定地が、サギをはじめとする鳥類の集団繁殖地に近接していることから、工事による影響を最小限に抑えるため有識者の意見を参考に、環境保護対策を実施した。
 進捗状況は、平成13年9月時点では、橋梁上下部工工事、土工工事が約94%完了しており、舗装工事、施設工事等に入っている。
 現在は、同時開通となる連結道路事業者との最終調整、交通管理者との最終協議を行っており平成14年度内の開通をめざしている。

■浚渫土砂と建設発生土の混合でリサイクルを実施

 新潟空港ICから中条ICまでの区間は、主要道路と河川を橋梁で横過する以外は、全線盛土(延長比約85%)で構成され、盛土材として大量の土砂が使用された。
 盛土材には、国土交通省が主体として進めている新潟東港浚渫事業や、新潟県が主体である福島潟放水路整備事業等に伴って発生する建設残土を有効利用した。主な建設残土は、浚渫事業等で発生した砂と、放水路事業の掘削で発生した高含水比粘性土で、これをおおむね5:5から7:3の比率で混合することにより、盛土材料としての条件規定に適応させることができた。また、他事業者と発生時期等についての調整を図ることによって、スムーズに建設残土が確保できたことが、こうしたリサイクルを可能にした。この結果、事業費の削減も可能になった。

■多様な軟弱地盤対策工法を駆使

 日沿道が通過する新潟平野には、深い軟弱地盤層が分布(10m〜40m)しており、本線盛土による予測沈下量は、最大で3m程度とされる。このため、盛土工事や橋梁下部工工事の施工にあたっては、地盤の沈下対策や構造物などの側方変位等に対する慎重な対応が必要となる。そこで主に次のような軟弱地盤対策が実施された。
1.緩速施工:施工単位ごとに軟弱地盤層の圧密、排水を十分促進させることにより地盤の急激な強度低下を防ぐ工法
2.先行盛土:ボックス等構造物部に先行して盛土を実施し、あらかじめ沈下を促進しておく工法
3.地盤改良工法:構造物部の基礎地盤を改良するため、セメントを現地盤において攬絆混合する工法
4.土圧軽減工法:橋台背面に土より比重の軽い発泡モルタルを使用することで、自重や側方土圧の軽減を図る工法
5.真空圧密工法:軟弱地盤内の間隙水と空気を排除し。同時に大気圧を載荷することで、圧密沈下を促進させる工法(試験的に採用)

■道路と自然生態系との共存を目指して

 一方、この日沿道と交差する阿賀野川の中州は、シラサギ、ゴイサギ、アオサギといった数種のサギが、2,500に及ぶ巣を作るコロニーとなっている。サギは警戒心が強く、人の気配を感じただけで飛び立ってしまう。毎年3月頃に飛来し、中州の状況をみて、安全を確認してから営巣を始める。そのため、JH北陸支社は、工事による影響をもたらさないよう、様々な対策を行った。
 人圧(人の気配)を軽減するために目隠ネッ卜を設置するとともに、工事照明の向きにも配慮した。
 また、鳥類にストレスを与えないよう、工事用機械は自然色に近い緑の塗装とし、工事音を小さくするため防音布を設置した。
 サギが営巣する中州は、上島と下島に分かれており、巣の大部分は上島に作られる。しかし、ルートの一部が上島の一部を通過するため、下島へ移転させるべく引っ越し作戦が行われた。
 これはデコイと呼ばれるサギの実物大模型を20体製作し、下島に配置、そこにも巣があるように見せかけて、誘導するというもの。この結果、巣の分布は工事着手前の平成9年には上島2,088、下島0だったのが、上部工施工中の12年には上島2,279、下島591へと変化した。合計すると、両島合わせて2,088だったのが、2,870へとむしろ増加傾向となっていることから、この対策は大成功だったといえる。