建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年10月号〉

シリーズ
わが国の農業 ─北海道編─

生態系と資源を生かした環境整備を促進

快適な農村生活環境をめざす

北海道宗谷支庁農業振興部



 宗谷支庁は北海道の最北に位置し、オホーツク海、日本海の双方に面している。北は宗谷海峡を経てサハリンを望み、西方20qの日本海には利尻・礼文の両島が望める。
 宗谷には、酸性褐色森林土及び疑似グライ土、灰色及び褐色低地土、泥炭土など農耕に適した特殊土壌が広がっており、当初はでんぷん生産を主とした畑作を行っていたが、相次ぐ冷害やでんぷん価格の暴落などもあって、次第に酪農・畜産に転換してきた。昭和30年代には利尻・礼文地域を除く管内全域が集約酪農地域に指定され、草地や生産施設の整備・乳牛改良等が進められてきた。今日では国内でも有数の酪農地帯となっている。
 産業の構造を就業人口の内訳でみると、平成13年で農業の割合は全体の約5%で、第一次産業の割合は年々低下してきている。現在、農家戸数は1,249戸(専業657戸)で、耕地面積は55,400ha、離島三島を除く一戸当たり乳用牛飼養頭数は82頭となっている。
 農業粗生産額は約244億円で、このうち畜産部門が99%を占め、酪農は92%を占めているが、担い手の高齢化・後継者不足による戸数の減少が続いており、生産性の高い酪農経営の確立、優れた技術と経営感覚を持つ農業者の確保と育成が課題である。
 宗谷支庁では、現在快適な農村生活環境を創造することを目的に、様々な農業農村整備事業に取り組んでいる。農業農村整備事業を事業費別に見ると、緊急畑総・営農用水・魚道整備・中山間事業が21%、広域・農免などの農道整備が28%、海岸保全・地すべりなど防災事業が6%、草地整備・公共牧場など草地整備事業が45%となっている。
 また、平成14年度の新規着工地区は魚道整備・農道見直・担い手草地で5地区、小規模土地改良事業で2地区が予定されている。
 このうち、枝幸町においては農道特別山臼地区が着工し、農業生産の効率化と農産物の流通の合理化を図り、あわせて農村環境の改善を図っている。中頓別町においては担い手草地中頓別地区を着工し、家畜排泄物土地還元施設および安全で良質な農畜産物を低コストで提供できるような農業基盤の整備促進をめざしている。
 歌登町と中頓別町では魚道整備ポンポロベツ地区2期、ペンケナイ地区、上頓別地区の魚類の遡上・降下を容易にする魚道を設置して河川の生態系と水産資源の保護を図ることとしている。また、管内の懸案事項であったホタテの貝殻は産業廃棄物として扱われるなど「厄介者」であったが、これを有効利用するための一方策として農道資材として利用することが注目されている。平成12年度には道営一般農道整備事業の浅茅野台地地区及び浜頓別中部地区で試験施工が行われ、今後管内での利用が期待されている。調査・試験は、これからも引き続き行われる予定だ。