下水道促進デーへ

〈建設グラフ2000年9月号〉

特集 9月10日「全国下水道促進デー」


横浜市の下水道について

-現状とこれからの展望について-

横浜市下水道局建設部長 武藤 

武藤  むとう・たかし
群馬県出身
昭和 36年 4月 横浜市採用
平成 4年 6月 下水道局建設部北部設計課長
平成 6年 7月 下水道局河川部次長河川計画課長
平成 8年 4月 道路局港南土木事務所長
平成 11年4月 環境保全局調整部長
平成 12年 4月 現職


はじめに

 横浜市の下水道事業は、2010年(平成22年)を目標年次とする横浜市総合計画「ゆめはま2010プラン」に基づき、水洗化の普及と処理水の水質向上、浸水に強い街づくり、の二つを基本方針として下水道整備に取り組んでいる。


未整備地区の解消

 本市では、積極的な下水道整備を行った結果、平成11年度末における下水道普及率が、99.1%となっている。しかし、未だに、約3万人の市民が、公共下水道を利用できない状況にある。このため、下水道普及率100%の早期の達成に向けて、未整備地区の解消に努めている。
 未整備地区としては、通常の整備が可能な地域、周辺より地盤の低い地域、公図が混乱している地域、他の事業と関連する地域の4地域に大別される。これらの地域については、引き続き計画的な整備を進めるとともに、マンホールポンプなどによる圧送方式の採用やそれぞれの地域の課題に積極的に対応しながら、整備を推進している。


▲雨水幹線


水質の向上

  公共用水域の水質の向上に向けて、市域の約4分の1にあたる合流式下水道区域では、下水処理場やポンプ場から河川や海域などへ降雨初期の汚濁された雨水が排出されることから、この雨水を一時的に貯留し、降雨終了後、下水処理場で処理するための雨水滞水池の建設を進め、合流式下水道の改善に取り組んでいる。現在、合流式下水道地域のうち約50%に当たるエリアに対応した改善が図られている。
 また、閉鎖性水域である東京湾の富栄養化対策として、下水処理場から排出される処理水に含まれる窒素やリンをさらに削減するために、処理場の増設や更新に合わせ、高度処理方式の導入に取り組んでいる。現在、都筑下水処理場、港北下水処理場、神奈川下水処理場の一部において、高度処理方式を採用している。平成12年度は、引き続き都筑下水処理場等の高度処理を進めるとともに、新たに、北部第二下水処理場の高度処理に着手する。


浸水対策の推進

 浸水に強い安全な都市の実現に向けて、現在、5年に1回程度の降雨(50mm/h)に対応した雨水ポンプ場、雨水幹線等の整備を進めている。特に、都市型水害と呼ばれる局地的な集中豪雨などで被害を受けた地域を重点的に整備している。また、中心市街地や鶴見川流域等の人口・資産の集中する地域においては、10年に1回程度(60mm/h)の降雨に対応した下水道整備を進めている。
 さらに、昭和40年代頃までに整備した臨海部では、その後の急激な都市化の進展に伴い、雨水流出量が増大し、既存の下水道施設の能力が不足する状況となっている。これによる浸水被害の解消を目的とする増強ポンプ場や管きょの整備と併せて、雨水の流出抑制対策として、雨水調整池、多目的調整池や雨水浸透ます等の雨水流出抑制施設の設置を進めている。


▲送泥施設  


身近な水辺づくり

 平成11年度に策定した水環境マスタープラン(総合的な整備方針)を踏まえ、身近にある水辺をより快適な水環境にして行くための環境整備に取り組んでいる。平成12年度は、入江川せせらぎの支川においてせせらぎの復活を図るための環境整備を進める。
 また、枯渇し、水量の回復が望めない水路などの水源として、下水の高度処理水を導水した水辺環境の整備が行われている。現在、4箇所のせせらぎなどにおいて高度処理水が利用されている。
 資源・資産の有効利用 
 循環型社会への取組として、処理水や水処理の過程で発生する、汚泥、消化ガスなどを資源として活用するとともに、下水処理場の上部や管きょ内のスペースなどの有効利用も進めている。
 処理水は、下水処理場・競技場等の雑用水、せせらぎ用水、地域冷暖房の熱源等として、汚泥は、改良土、レンガ、セメントなどの原料に、消化ガスは、発電や燃料資源として有効利用を進めている。
 また、下水処理場や雨水滞水池等の上部は、都市における貴重なスペースであることから、公園や野球場・テニスコート等の市民利用施設として利用されているほか、光ファイバー等の情報通信網整備に際し、管きょ内のスペースを利用するなど、資産の多目的利用を積極的に図っている。


おわりに

 近年、本市の公共用水域の水質は、下水道普及率の向上に伴い、大幅に改善されてきた。しかし、横浜にふさわしい豊かな水環境を次世代に引き継ぐためには、従来進めてきた事業に加え、新たな施策が必要不可欠である。
 公共用水域の水質のさらなる改善、河川や水路の水量の確保、潤いのある水辺づくりによる快適な水環境の保全・創造の推進、また、総合的な雨水対策による災害に強い都市づくり、下水道の持つ資源・資産の有効利用などのリサイクル社会への貢献とともに、下水道施設の計画的な改築・更新や安定的かつ効率的な下水道の管理・運営など、多面的な下水道事業を積極的に展開し、行政、市民、事業者が連携しながら、水を基軸とした快適な都市環境づくりに貢献する下水道事業を進めていくことが重要である。

▲せせらぎ ▲雨水滞水池