〈建設グラフ1997年9月号〉

新製品紹介 −new product infomation−

断崖掘削機『クリフスパイダー』特許出願中

構想から5年、1号機が完成 7月10日から3日間の試験を実施

■試験の様子
7月10〜12日 於:石狩管内・浜益村
■考案の主旨
北砕工業株式会社 定久典英
▲特許出願中 断崖掘削機「クリスフパイダー」

 【試 験 の 様 子】

7月10〜12日 石狩管内・浜益村

▲断崖掘削機の試験操作

▲試験準備中の「クリフスパイダー」

▲支持機を操作する定久社長

発破による法面の形成などでその技術力が高く評価されている北砕工業株式会社(本社:札幌市、定久典英社長)は、構想から5年を経て、特許出願中の断崖掘削機『クリフスパイダー』の1号機を完成させ、7月10日から12日までの3日間、石狩管内・浜益村の岸本産業鰍フ採石場内において試験を行った。
『クリフスパイダー』は、無線式電動ショベルで断崖掘削機と支持機で構成されており、断崖掘削機は、最大70度の勾配での作業を可能とするため電動式とし、振り子式油圧タンクを採用しているほか、掘削力を保持するため、上部ユニットが傾斜に合わせて昇降するようになっている。また、4本のアウトリガにより作業面の凹凸に対し、掘削機自体が安定して作業ができる構造になっている。さらに、フロントはバックホー式、フェス式を設定しており、ブレーカによる破砕、バケットによるズリ作業を可能としている。
支持機は、断崖掘削機と支持機自体を駆動させる発電機と断崖掘削機に電源を供給するケーブルリール、キャプタイヤケーブル(130m)、断崖掘削機を保持する無線式電動ウインチから構成されている。キャプタイヤケーブルは、ケーブルリールに巻き付け、支持機の上部と断崖掘削機に連結されており、ケーブルリールによって常時165kgのテンションがかかっているため、極端なゆるみが発生しないようになっている。フロントはテレスコ式伸縮ブームで断崖掘削機を保持する作業を行う。
また、支持機・断崖掘削機ともヘリコプターに積載できる2t以下の重量のユニットに分解することができ、従来の重機などが持ち込めない場所にも搬送することができるようになっている。

▲コンサルタント会社のスタッフに説明する定久社長

●試験中のクリスフパイダー


←断崖掘削機のリモコン装置

←支持機の運転席

【考 案 の 主 旨】

北砕工業株式会社 定久典英

法面の急勾配掘削機械としては未開発の部分で、重機の自走不可能な傾斜を昇降しながら掘削出来る機械の開発を推進して居リましたが、構想5年日立建機のご協力を得て1号機の完成となりました。
従来切取り断面が広く(幅5m以上)機械の待避が可能な掘削については、各関係取締官庁の許可を得られましたが、それ以外は人力による工法以外実施出来なかった経緯があります。
従来の掘削機械(バックホウ)は、40〜45度を越えると油圧作動油に工アーが混入し、シリンダーの伸縮が不可能になる為、実作業には不適でした。急傾斜で工アー混入を防ぐ可変式の作動油タンクを考案することにより急傾斜の掘削は可能であると考え、並行して新掘削工法を考案したものです。

【考案主旨要項】

※人力による危険作業の回避を図り、国道・都道府県道等の共用道路を安全改修を機械化する事、特に高所から急勾配での施工を無人化すること。
※機械は全てリモコンにより作動し、70度前後の急傾斜にても掘削が可能であること。
※上部で昇降を支持するクレーンは分解型自走式の物で、ヘリコプター・重索道でいかなる高所であっても設置が可能であること。
※掘削時は下向き掘削であるので、自機に掘削岩片崩落の影響がなく、安全施工が可能であること。

【土砂法面切土について】

土砂(砂質土・シルト・粘質土・火山灰等)の法面は、1割〜1.5割勾配(45〜33度)の切土であるが、現在この傾斜を薄く掘削出来る機械掘削はない。今工法は面に対して掘削可能な工法であるので、重機の稼働可能な奥行き(5m以上・両切り幅)は必要としない。
【岩盤法面切土について】
通常安定勾配と言われる角度は軟岩1は八分(51度)、軟岩2・中硬岩で五分(63度)が基準であるが、土地の形状・各管理官庁の緑地保護の思惑等も絡み、安全勾配の切土は困難な状況にある。
凍上融解の中で裸出した岩盤の風化・摂理の拡大は年々進み、数十年毎に崩落を繰り返している現状の改修が推し進められている中、人力に頼らざるを得ない切土は作業員の老齢化・危険作業の回避等の理由により施工体制が組めない状況になりつつある。又振動病等労働災害の訴訟も頻繁に行われている昨今、ジャックハンマー・ハンドブレーカー・コールピック等の振動工具の使用に対しても検討が必要な時期に入ったと考える。

【従来工法との相違点】

  1. 人力でしか可能でなかった表層掘削を機械化出来る。
  2. 避難不可能な機械掘削が可能になる。(幅がなく機械の待避路・作業用道路が確保出来ない現場)
  3. 通常機械掘削不可能な急傾斜地の施工が可能になる。
  4. 発破・破砕等一次破砕のベンチ造成が広くなり、人力によるズリ撤去の危険性を回避出来る。
  5. 施工に当たっては無線ラジコン仕様であるので、切羽先端の作業を回避出来る。

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