注目の現場 −construction site−
![]() ▲断崖掘削機「クリフスパイダー」 |
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![]() ▲待機中の「クリフスパイダー」 |
![]() ▲斜面を自走する「クリフスパイダー」 |
北砕工業株式会社(本社:北海道札幌市・定久典英社長)が考案した断崖掘削機「クリフスパイダー」が、北海道函館土木現業所の防災工事で初めて採用された。現場は、北海道奥尻町の「奥尻島線災害防除工事(ホヤ石)」(施工:高木・海老原・堀清水JV)。
この「クリフスパイダー」は、無線式電動ショベルの断崖掘削機と支持機(重機)で構成され、支持機で吊り下げた断崖掘削機が自走して、発破をかけた後に残る岩石や土砂などを除去する「ズリ処理」を行うもの。
従来の「ズリ処理」は、10人から15人の人力のみで行っていたが、足場の悪い高所での作業となるため、落下事故や岩石の崩落などの危険性が高く、また人材不足という問題もあり、業界共通の課題となっていた。
だが、この「クリフスパイダー」によって「ズリ処理」は機械化され、処理に係る人数も約半分で済むほか、人力では1日当たり80m3の処理量だったが100〜130m3となり、安全性と能率の向上が図られることになった。また、2t以下のユニットに分解することが可能なので、従来の重機などが持ち込めない場所にもヘリコプターで搬送することができる。断崖などの上方に支持機を設置できない場合には、法面にホイスト(支点)を設置し、支持機を下に置いたまま支点を介して滑車で掘削機を支持することも可能だ。
今回、初めて採用されたこの現場は、それまでは奥尻島西側の海岸線を走る「一般道道奥尻島線」の災害防除として、平成5年度から着手していた。高さ160mの断崖に足場を設置して、人力によって不安定な岩塊などを除去する計画だった。
ところが、その7月に「北海道南西沖地震」が発生し、亀裂がさらに拡大したため、作業員の安全確保がむりと判断され中断を余儀なくされていた。
そこで、「クリフスパイダー」をはじめ、無線で操縦する油圧ショベルとキャリアダンプ(9年8月に発生した国道229号第2白糸トンネル崩落事故の災害復旧工事で活躍)が導入され、9年度から工事が再開されることになった。
今回は、斜面の途中に幅約4mのベンチを発破により設け、そこへ断崖掘削機を降ろし、「ズリ処理」を行い、さらに下方に発破をかけ、ベンチを形成して、そこへ断崖掘削機を降ろすという作業を繰り返した。1日あたりの平均撤去量は約130m3で、平成9年内に全体の約71.4%にあたる約15,000m3を除去した。
なお、同社では掘削機の重量を1t増加し、4.5tとなる2号機を今春までに完成させる予定だ。
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