建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年2月号〉

特集

我が国有数の軟弱地盤を克服し、地域発展の核となる都市域を形成

広域交通拠点と有明海沿岸の都市群を連結し、
地域間の交流促進を図る『有明海沿岸道路』

国土交通省 福岡国道事務所 有明海沿岸道路

国土交通省福岡国道事務所は福岡県の南西部で地域高規格道路有明海沿岸道路の建設を進めている。福岡県大牟田市〜佐賀県鹿島市に至る延長約55kmの路線で、三池港、佐賀空港などの広域交通拠点と大牟田市、柳川市、大川市、鹿島市などの有明海沿岸の都市群を連携し、地域間の交流促進と国道208号の交通混雑緩和・交通安全確保を目的としている。整備の進む現場を特集した。
▲筑後川上空より大川市方面を望む
有明海沿岸道路の概要
有明海沿岸道路は、平成6年12月に地域高規格道路の計画路線として指定され、福岡県内においては、大牟田市新港町〜三池郡高田町黒崎開区間を「大牟田高田道路」、三池郡高田町黒崎開〜柳川市大和町徳益区間を「高田大和バイパス」、柳川市大和町徳益〜大川市大野島区間を「大川バイパス」として整備を進めている。
本事業の効率的な推進を目的として、平成15年4月に福岡国道事務所の出先機関である有明海沿岸道路出張所を設置し、より地元と密着した事業の推進体制を整えている。大牟田ic〜大川西ic間(延長約23.8km)については、一般道路を活用し、一体的なネットワークを形成するために、暫定2車線による平成20年春の供用を目指し、現在ほぼ全線において用地買収及び工事を実施している。
軟弱地盤対策
有明海沿岸道路は、有明海周辺部特有の有明粘土と呼ばれる非常に軟弱な粘性土の上に計画され、その厚さは10〜20m程度、深いところでは約50mにも及んでいる。
このような軟弱地盤上に、そのまま道路盛土を作ると、盛土の重みにより盛土自体の安定が損なわれたり、周辺地盤に過大な変形が生じるため、軟弱地盤対策が必要となる。
そこで新工法・新技術を提案し、その効果を試験盛土により確認して、その結果を踏まえ、最適な対策工法を選定し、コスト縮減を図りながら事業を進めている。
整備効果
有明海沿岸道路が開通すると、佐賀空港や三池港などの広域交通拠点と中心都市へのアクセス性が向上して、地域都市間の交流が促進し、流通の活性化や観光客の増加が見込まれる。また買い物やレクリエーション活動、通勤圏の拡大、生活の利便性の向上など、地域一帯となった発展が期待されている。さらに交通量の転換により既存道路の交通渋滞が緩和され、交通騒音、大気汚染が軽減されるとともに交通の安全性の向上が見込まれる。
加えて、緊急時における搬送時間の短縮、及び時間短縮に伴い利用可能な医療機関の範囲が拡大し、結果として、地域医療のレベルが向上する。
環境への負荷を軽減
福岡国道事務所では道路沿線の環境保全、良好な景観形成といった観点から、道路緑化を積極的に推進し、地域の人々に親しまれる「緑の回廊」構想を進めている。推進にあたっては、学識者、自治体、地元住民等で構成される「緑のみちづくり連絡会」を設置し、景観づくりのための合意形成を図る取り組みをしている。
各区間工事進捗状況 大牟田高田道路
大牟田高田道路は大牟田市から三池郡高田町に至る延長8.6kmの道路であり、平成11年に事業化され、大牟田ic〜黒崎ic間で工事を進めている。この区間の完成により、周辺幹線道路の歩行者交通事故の減少など安全性が向上するほか、国道208号の渋滞緩和が図られる。
今年度は用地買収及び工事を促進している。代表的な工事の状況を以下に示す。
▲訪公園橋上部工工事
▲堂面川橋完成イメージ
諏訪公園橋上部工工事
橋長150mの諏訪公園橋はpc5径間連続中空床版橋で、大牟田icのランプ部分に接続する橋梁である。本線部分が平成17年12月に完成し、現在ランプ橋上部工を施工中である。
堂面川橋上部工工事
橋長201mの堂面川橋では経済的で景観性に優れたニールセンローゼ桁を採用している。上部工架設工法はケーブルエレクション斜吊工法を採用し、コスト縮減のため斜材ケーブルに「より線ケーブル」を採用するとともに、桁と鋼床版を合成構造とした合理化鋼床版を採用している。現在、上部工架設が完了し現場塗装を施工中である。
昭和開地区3−4工区工事
当該区間は盛土で構築される。盛土高さは最大で10m程度となるため、盛土構築のための軟弱地盤対策工が必要となる。軟弱地盤対策工としては「補強材+浅層混合処理」、「浅層混合処理+低改良率深層混合処理」を採用している。
一部区間では黒崎堤防に盛土を構築する。この区間では既存堤防に悪影響を及ぼさないよう重量の軽い軽量盛土を用いて、盛土を施工している。
▲高田大和バイパス(完成イメージ図)
高田大和バイパス
高田大和バイパスは三池郡高田町から柳川市大和町に至る8.9kmの路線であり、昭和63年度に事業化された。同区間が開通すると国道208号の主要渋滞ポイントである「浦島橋北詰交差点」の渋滞解消が見込まれるほか、通過交通の転換によって歩行者の安全性向上が図られる。
今年度は用地買収及び工事を促進している。代表的な工事の状況を以下に示す。


楠田川橋工事
橋長74mの楠田川橋は鋼単純鋼床版箱桁橋で、設計・施工一括発注方式の試行工事であり、下部工、上部工を一括で発注している。現在a2橋台が完成し、上部工の工場製作を行っている。
矢部川橋下部工・上部工工事
橋長517mの矢部川橋は3径間連続pc斜張橋である。同橋では技術的な工夫を施し、橋全体で約20%のコスト縮減に成功している。内訳は、@上部構造の技術改善により上部工工費を約5%縮減、A塔の基礎寸法の縮小のより下部工工費を約34%縮減、B河川再協議の結果により最大支間長の約40mが縮小可能となり、さらに全体工費を約6%縮減、などとなっている。そのほか、曲線を持った斜張橋であることから、塔を傾け、支承構造などにも技術的工夫を施している。現在橋台工事に着手し、上部工工事は主塔基部の橋脚工を施工中である。
皿垣連続高架橋下部工工事
橋長423mの皿垣連続高架橋はrc18径間連続開腹アーチ橋で、大和南icのランプに接続する高架橋である。現在用地買収を完了した一部の下部工を施工中である。
▲矢部川橋完成予想写真
大川バイパス
大川バイパスは柳川市大和町から三橋町を経て大川市大野島に至る10.0kmの路線であり、平成5年度に大川市内の一部が事業化され、その他の区間が12年度に延伸事業化されている。このうち大川西icまでの区間で工事が進められている。完成すると国道208号の主要渋滞ポイント「しげあみ交差点」の渋滞の解消が図られるほか、広域交通拠点である「佐賀空港」へのアクセスが向上する。今年度は用地買収及び工事を促進している。代表的な工事の状況を以下に示す。
坂井橋下部工工事
橋長66mの坂井橋は鋼3径間連続合成鈑桁橋である。現在用地買収を完了したa1橋台、p1橋脚を施工中である。
三丸地区改良工事
当該区間は盛土で構築され、その盛土高さは最大で8.5m程度となる。当該区間における軟弱地盤対策工は、盛土部では補強盛土、道路box、水路box等の横断構造物では主に「浅層混合処理+低改良率深層混合処理」を採用している。
有明海沿岸道路では大牟田ic〜大川西ic間(延長約23.8km)の平成20年春の開通を目指し、ちゃくちゃくと整備を進めている。
陸・海・空の広域交通拠点と有明海沿岸都市郡を連結
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