建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年11月号〉

特集

東京都新都市建設公社

豊かさと潤いのあるまちづくりのためのエキスパート

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▲推進機後部
(財)東京都新都市建設公社は、東京都を中心に八王子、青梅、町田、日野、福生、羽村の1都6市が出資して、昭和36年に設立された首都圏整備構想に基づき、新都市の総合的建設と地域開発を促進し、秩序ある発展を担っている。
その背景には、戦後の人口増加と東京一極集中による過密化で、住宅、公園、あるいは道路などの公共施設整備が追いつかず、インフラ不足が社会問題化する一方で、周辺地域は「スプロール現象」で虫食い状況となっており、不均衡な開発状況となっていた。そのため、東京近県を含む1都7県を首都圏と設定した首都圏整備法が制定され、多摩地域6市町が市街地開発区域に指定されたが、開発には莫大な開発資金や用地費などが必要となり、各自治体にとっては財政を圧迫することになる。そこで、都市整備の専門技術と資金調達の両面を一手に担う専門機関として、同公社は重要な役割を担うことになった。
事業は、出資者からの受託業務で土地区画整理、下水道、用地取得、市街地再開発、開発調査などを行うが、公社独自でも宅地造成、地域開発関連事業も行っており、さらには地域の街づくり支援や、環境対策として東京都建設発生土再利用センターの運営管理、多摩地区建設発生土再利用、緑化事業なども行っている。
これまで八王子開発を担う(株)北野タウン設立、首都圏中央連絡自動車道の用地取得、jr南武線連続立体交差事業用地取得、緑化事業拠点となる「グリーンログ新都市」の開設、「まちづくり支援センター」設立、まちづくりのための資料を集積した「まちづくりライブラリー」の開設など、様々な事業を達成してきたが、自治体財政に負担をかけずに、民間資金によって行政事務を実現してきた意義は大きい。
それら業務の中でも、近年の台風被害によって注目される雨水対策と、日々の生活利便と都市衛生に不可欠な下水道事業について、クローズアップする。
下水道事業
東京都の下水道は、23区に比べて普及が遅れていた多摩地域での整備が、緊急の課題となっていた。このため、地域の各市町村は精力的に取り組み、平成16年度末には普及率が95%に到達したが、昭和50年度から本格的に公共下水道建設の受託施行を開始した。東京都新都市建設公社は、延長2,123kmを施工し、普及率の向上に大きく貢献した。以後は維持管理業務においても受託を推進しているが、現在は第一下水道事務所及び第四下水道事務所が担当する、八王子市、町田市を中心に、11市町村の整備が鋭意進められている。
受託業務は原則として単年度ごとの「業務委託契約」に基づいて実施され、具体的には、汚水施設整備と雨水施設整備の計画設計、実施設計、建設工事及び管きょの維持管理業務となっている。
▲ケーシング立坑設置状況
管きょの維持管理業務では、多摩地区市町村の維持管理業務を支援するため、広域化、共同化に基づく効率的な維持管理を進めると同時に、下水道技術のノウハウを活かし、計画的な維持管理を行うことにより管きょの保全、長寿命化を図ることを提案している。また、東京都と市町村が整備する多摩地区の下水道管きょの台帳づくりを実施している。
一方、受託市町村との信頼を一層深め、受託事業の品質向上や効率的な執行を図るため、下水道建設工事における設計・施工の監理を対象とし、平成14年12月にiso9001の認証を取得する一方、itを活用した工事管理システムの「建設cals」を平成16年度より実施している。
受託金については、公社が受託実施する費用(工事費、調査設計費、事務費等)は委託団体から委託金として支払われ、このうち工事費、調査設計費は公社が請負者に発注した実費となる。
人件費、物件費などの事務費は、工事費を基本額として委託団体との協議によって定められているが、業務の内容に応じて工事金額などに一定の率を乗じた各団体共通の算定方式を用いている。
▲推進機搬入設置状況

▲地盤改良状況

下水道実績
委託者 受託事業費(〜h16) 摘要
施工延長
(m)
公共下水
(百万円)
都市下水道
その他
(百万円)
調査・計画
(百万円)

(百万円)
八王子市 489,679 74,692 1,024 75,716 分流
立川市 28,425 12,255 33 12,288 合流
青梅市 232,321 24,004 275 168 24,447 分流
府中市 33,290 3,656 3,656 合流
調布市 50,639 5,799 5,799 合流
町田市 425,501 84,733 405 5 85,143 分流
小平市 119,675 15,479 86 15,565 分流
日野市 153,440 22,256 286 2 22,544 分流
東村山市 290 27 317 分流
国分寺市 147,969 24,570 108 22 24,700 合流
西東京市 7,143 515 515 分流
福生市 2,247 125 30 155 分流
東久留米市 171 171
多摩市 43,543 6,213 6,213 分流
稲城市 38,790 8,721 72 8,793 分流
あきる野市 128,820 25,907 104 26,011 分流
羽村市 96,350 10,173 136 10,309 分流
東大和市 4
武蔵村山市 3
瑞穂町 61,649 2,857 7 2,864 分流
日の出町 46,065 12,638 102 12,740 分流
檜原村 10,112 924 61 985 分流
東京都 449 449 メトロレンガほか
青梅市・羽村・福生
地区都市下水路組合
7,279 803 19 822 都市下水路
合計 2,122,936 336,263 1,877 2,069 340,202
▲雨水渠上部を利用したせせらぎ空間の創出
(町田市)
▲推進機設置状況
▲推進状況
下水道積算システム
公社は、下水道積算システム「下水道総合情報システム(通称名topicss)」を開発し導入している、平成16年1月からは新土木工事積算体系へ対応し、設計積算業務のさらなる効率化を図っている。
また、各市町村にもこのシステムを積算業務に活用できるよう援助するなど、topicssの運用により、多摩地区の下水道事業を支援している。
新しい事業の取組み
さらに、新しい事業の取組みとして浸水対策、合流改善事業、震災対策、維持管理業務を提案している。
近年の台風の頻発による雨水被害対策については、浸水対策の提案として浸水地区について流出解析シミュレーションを行い、効果的な対策を計画し、雨水管の能力が不足している区間にはバイパス管などを布設するなど、流下能力を増強するほか、浸透ます、浸透トレンチ管などの設置により、下水道への雨水の流入を低減することを提唱している。
合流改善事業については、地域特性に見合った効果的な合流改善計画を策定し、雨水吐け口でごみや白色固形物などの流出抑制対策を実施するほか、雨水浸透・貯留施設により、雨水の流入量を減らし、雨水の放流回数と放流量を削減する計画を提唱する。
合流式下水道の改善に向けては、よりよい水辺環境の創出に向けて、改善計画の策定、対策事業の実施など、合流式下水道改善事業を総合的にサポート。
一方、直下型大地震の可能性も注目されているが、震災対策としては、下水道施設としての「重要な路線」を選定し、耐震診断を行い、耐震化計画を策定し、避難所、病院などの重要施設について、管渠の酎震化により震災時におけるトイレ機能を確保する必要性を訴えている。
同公社としては、地震に強い多摩を目指し、これまで培ってきた技術力を発揮し、積極的な耐震化の提案をしていく方針だ。
その他、維持管理業務については、公社が業務を代行することにより市町村の維持管理業務を大幅に軽減し、広域化、共同化により維持管理費の削減と計画的な維持管理により、道路陥没・臭気苦情などのトラブルの抑制を提案する。
同公社では、今後も効率的な維持管理に向けて、市民が安全に暮らせる街づくりを目指し、管きょ維持管理業務代行・補完サービスにより、市町村業務を効率的にサポートしていく。
浸水対策
合流改善事業
災時仮設トイレ水洗化対策
維持管理業務

新都市建設公社 第1下水道事務所管内の整備に貢献
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