建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年9月号〉

特集

次世代の水道サービスを推進する東京水道

高質な水道を提供するガイドライン「東京水道経営プラン2004」

東京都水道局

東京都水道局は、質の高い水道サービスの提供を実現すべく、昨年策定した「東京水道経営プラン2004」に基づき、主要施策となる「質の高い水道サービスの提供」、「多摩地区水道の広域的経営」と「効率経営の推進」に取り組んでいる。次世代の新しい水道事業の取り組みとして、東京都水道局の政策について特集した。
▲小河内ダム ▲下久保ダム
▲金町浄水場 ▲水運用センター
水道経営の指針となる「東京水道経営プラン2004」
「東京水道経営プラン2004」の主要施策の1点目は「質の高い水道サービスの提供」である。その実現に向けて、「安全でおいしい水の安定的な供給」、「お客さまサービスの向上」、「地球環境の重視」をかかげている。「安全でおいしい水の安定的な供給」では、およそ10年以内に達成を目指す施設整備長期目標を数値化している。
具体的には、渇水時に安定供給するための水源確保率を、平成15年度の実績92%から100%に向上。利根川水系での高度浄水処理率を、35%から100%に向上。停電時の給水確保率は62%から100%に向上。漏水率は、4.7%から4.0%に抑制。経年管の解消率は、92%から100%に向上。初期ダクタイル管の解消率は、4%から30%に向上。18年度までに鉛製給水管の解消率は90%から100%へ向上させる目標で、かなりのレベルアップを目指している。
目標の実現に向けて、水源確保や施設の耐震化、バックアップ機能の強化などに取り組む。また、利根川水系の全浄水場に、高度浄水処理を順次導入するとともに、直結給水方式の普及や鉛製給水管の取り替えなどを進める。
安全でおいしい水のサービス実現に向けては、「安全でおいしい水プロジェクト」を推進しており、国の水質基準をさらに上回る「おいしさに関する水質目標」を設定して、その実現を目指している。例えば、残留塩素については、国が0.1r/l〜1.0r/lとしているのに対し、都では0.1r/l〜0.4r/lとしており、臭気強度は国が3以下としているのに対して、都は1としている。カビ臭物質である2-メチルイソボルネオールやジェオスミンについては、国が10ng/l以下としているのに対し、都では0ng/lとしている。味覚に関しては、国では有機物質を5r/l以下としているが、都では1 r/l以下とし、外観についても、色度や濁度は、国がそれぞれ5度以下、2度以下としているのに対し、都は1度以下、0.1度以下とするなど、無味無臭のクリスタルのような高度の水質を目指している。
▲大船配水所
▲山口貯水池堤体強化工事
「お客さまサービスの向上」に向けては、都民のニーズを一層反映させることで、サービスのレベルアップを目指す。お客さまセンターを設置して平日の窓口業務を8時30分から20時までと拡大し、漏水事故などの緊急受付については、365日24時間対応とする。すでに区部では今年から実施されており、来年度からは多摩地区でも導入される。
また、口座振替利用者には、今年から割引制度が適用されることになった。さらに、水道の使用開始または中止した場合の料金算定に、日割算定方式を今年度から導入したほか、支払い方法も料金収納サービスや口座振替受付サービスなどのマルチペイメントネットワークの導入を検討している。
「地球環境の重視」に向けては、まず水道水源林の管理を充実させる。水道水源林の荒廃を防止し、良好な状態に管理することで水源涵養機能、土砂流出の防止機能、水質浄化機能の向上を図り、二酸化炭素の削減に寄与する。一方、多摩川水源森林隊による森林整備などの活動も、さらに拡充する。
また、コ・ジェネレーションシステムや、太陽光発電設備の導入によって、よりエネルギー効率の高い水道システムを構築する一方、浄水場発生土や建設発生土の有効利用など、資源リサイクルも推進する。
こうした取り組みによって、15年度には3.9%だった複層林の構成率を、18年度には4.4%に向上させ、自然エネルギーによる発電容量は、同1,600キロワットを6,800キロワットへと飛躍的に拡大。浄水場発生土の有効利用率も、68%から88%に向上。そして、二酸化炭素総排出量の低減率は、平成2年度より2%低減することを目標としている。
▲多摩丘陵幹線トンネル工事 ▲多摩川水源森林隊の活動 ▲朝霞浄水場の太陽光発電設備
▲高度浄水処理におけるオゾン処理
▲配水管取替工事
多摩地区水道の統合によるサービスの充実とスムーズな運営
多摩地区では、かつて各市町が水道事業を独自に運営していた。だが、人口の増加に伴う水源確保が難しく、しかも料金や普及率の格差が問題となったことから、昭和48年から順次都営へと統合し、25市町の水道事業を運営してきた。
しかし、料金徴収業務などの事務管理は市町に委託していたため、効率的な経営が難しく、広域水道としてのメリットが十分に発揮できなかった。そこで、「多摩地区水道経営改善基本計画」を15年に策定し、10カ年を目途に、概ね市町への事務委託を廃止し、都が直接事業運営に当たることにより、お客さまサービスの向上、給水安定性の向上、効率的な事業運営の推進を目指すことになった。
平成16年度から武蔵村山市、多摩市について、業務移行を進めているほか、17年度からは瑞穂町の業務を都に移管した。
多摩地区でのお客さまサービスの向上に向けての施策は、「お客さまセンター」を開設するほか、事故など緊急時の即応体制を備えた水道施設の管理事務所となる給水管理事務所を設置し、さらに料金支払いの窓口となる複数の「サービスステーション」を配置することとしている。このほか「多摩水道料金等ネットワークシステム」を構築し、今年1月から稼動している。
18年度には、受付業務や問い合わせ対応などの業務を集中的に担う総合的受付センターとなる。給水安定性の向上に向けては、市町域にとらわれない広域的な施設整備を進め、水道施設の一体的で広域的な管理体制を確立し、事故などへの即応体制を充実させていく。
事業経営の効率化に向けては、事業運営の統合、包括的民間委託などにより、効率的で迅速な業務展開を目指すことにしている。
経営効率化への取り組み
経営の一層の効率化を目指し、性能発注の考え方を導入した包括的な民間委託を推進すると同時に、pfiも活用する。pfi事業として実施した、朝霞・三園浄水場常用発電設備等整備事業は、今年4月から稼働している。
一方、水道局自らも、民間企業等の経営手法やビジネスモデルを積極的に導入する考えで、経営管理手法として、企業における個々の活動を分類、細分化し、それぞれの単独での原価を算出するabc分析(activity based costing)の導入や、キャッシュフロー計算書の活用を進める。
また、事業目標を数値化し、達成状況の評価を公表する目標管理を充実させる。例えば、職員一人あたりの効率性の向上指標として、職員1人当たりの給水件数を15年度の12,000件から18年度には14,000件への増加を目指す。配水管管理延長は、同4.8キロから5.2キロへ延長。有収水量は、292万m3から325万m3へ拡大する。
財政基盤の強化に向けては、職員給与比率を、15年度の8.4%から18年度には8.3%に抑制し、企業債残高を6,809億円から5,751億円に削減。自己資本構成比率は、65.6%から71.3%への向上を目指す。
▲安全設備
▲トレンチパイラー
コスト削減に向けての企業努力
内部努力の徹底や、創意工夫によるコスト縮減を進めることにより、18年度までに315億円の経費縮減と収入確保を目指す。そのため、職員定数を350人削減し、67億円の人件費を圧縮すると同時に、水道業務手当の見直しにより、18億円、施設整備においては、新技術導入・veの導入などによって89億円の工事コストの縮減を図る。
さらに事務経費などの節減によって103億円を削減する一方で、資産の有効活用、未利用地の売却で38億円の収入を確保する。
料金体系の見直し
水道料金については、平成6年に改定して以来、10年にわたって料金水準を維持してきたが、近年の動向は大口使用が減少する一方で、小口使用が増加しており、10m3の基本水量までは同一料金である従前の料金体系に対して、「節水努力が報われず、不公平」との都民の声が寄せられていた。このため、水道事業管理者の諮問機関「東京都水道事業経営問題研究会」に対し料金体系のあり方について諮問し、同研究会の報告を受けて改定することになった。
改定のポイントは、基本水量を従来の10m3から5m3に下げて、コストに見合った負担を実現させ、節水努力が報われる仕組みに変更することで、不公平感をなくす。
また、料金水準を1.3%、新たに導入した口座割引を適用した後では、2.2%引き下げることで、小口使用者を中心とする都民の生活に配慮した。
首都東京にふさわしい水道サービスの実現
東京都水道局では「東京水道経営プラン2004」を着実に実施することにより、わが国水道のリーディングカンパニーとして、「首都東京にふさわしい水道サービスの実現」に向けて、全力で取り組むとしている。
首都東京の水道事業に貢献 平成17年度主要工事
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