建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年8月号〉

特集

首都圏の都市構造を再編・再構築―多摩地域の社会・経済・生活に活力

首都圏中央連絡自動車道

国土交通省 相武国道事務所

首都圏中央連絡自動車道(圏央道)は、都心から半径およそ40〜60kmの位置に計画されている延長約300kmの自動車専用道路である。横浜、厚木、八王子、つくば、成田、木更津、などの近郊の中核都市を結ぶと共に、東名高速、中央道、関越道、東北道、常磐道、東関道など、放射状の幹線道路とも接続し、さらには東京アクアラインとも一体となって首都圏の広域的な骨格となる幹線道路網を形成する。
多摩地域では、南北の新たな幹線道路として周辺道路の混雑緩和、行動範囲の拡大、まちづくりなど大きく貢献する路線として期待されている。圏央道は平成17年3月に日の出IC〜あきる野IC間2.0kmが開通。既に開通している鶴ヶ島JCT〜日の出IC間(28.5km)、つくばJCT〜つくば牛久IC(1.5km)と併せ、32.0kmが開通済みだ。
整備にあたっては地域の生活、自然に十分に配慮しながら事業を進めている。
▲多摩ニュータウン ▲国道16号(拝島橋周辺)の渋滞
渋滞解消の切り札・3環状9放射ネットワーク
首都圏の交通事情は年々混雑を極め、その解消のためにさまざまな道路整備が進められているが、その中核となるのが3環状9放射ネットワークである。現在、放射方向については整備が進んでいるが、環状方向は中央環状の東側、外かんの関越道から常磐道の間と圏央道の一部となっている。
このため、首都圏3環状道路のいずれかの部分で9本の放射道路を接続するような環状線(重点リング)を形成し、都市構造を再編・再構築する。
この整備により、圏央道内側の主要渋滞ポイント(約600箇所)の約6割を解消する。走行時間の短縮、燃料費の減少等による効果は年間約2兆円、用地補償費が建築物の新築等に使われることによる効果は約2兆円である。
多摩地域の交通事情
現在、多摩地域の南北方向の幹線道路としては、国道16号や国道411号があるが、慢性的な交通渋滞に陥っており、沿線環境の悪化、交通事故の誘発など、様々な問題を引き起こしている。また本来の生活道路が幹線道路の抜け道となっている状態で通学路などに使われている道路にも通過車両、大型車が流れ込んでいる。
多摩地域の交通に関するアンケートでは、力を注ぐべき整備項目として「道路網の整備」が最も高く、約半数を占める。力を注ぐべき道路としては「複数の市町村を通過する幹線道路」が6割を越え、大きく支持されており南北方向の道路による整備が望まれている。
多摩地域を支える圏央道
圏央道は多摩地域の「心(しん)」と位置づけられており、八王子、青梅を連絡し、その沿線都市が目指すまちづくりをバックアップする。さらに首都圏の中核都市と連携することで情報、物資などの交流を活発にし、文化・情報発信基地としての多摩地域の豊かな生活を実現する。
さらに東名高速、中央道をはじめとする放射状の幹線道路と結ばれることで、多摩地域から各地への移動時間が短縮され、行動範囲が大きく広がる。また、長距離を走る場合に圏央道を使うことができるため、並行する一般道路の混雑が緩和され、抜け道となっていた道路は本来の生活するための道路としてよみがえることとなる。加えて大地震が発生したときの避難路、緊急輸送道路としての役割も果たし、周辺地域の安全性も大きく向上する。
▲遮音壁
自然との調和
圏央道のみちづくりのテーマは「自然との調和」。住民の生活環境をはじめ、それぞれの地域特性に応じて樹木・景観などについても十分な検討を行い、総合的な視点で環境保全対策に取り組む。
大気汚染・騒音・振動については、沿線の暮らしやすい環境を守るため、沿線の土地利用や地域の現状に応じ、環境施設帯および遮音壁の設置、トンネル坑口の吸音処理を行うなど万全な対策を実施する。また、動植物の生息環境を保護、保全するとともに、豊かな自然環境の再生・創出につながる道路づくりを進める。
国土交通省相武国道事務所の事業概要
国土交通省相武国道事務所では圏央道の神奈川県津久井郡愛川町(国道129号)〜東京都青梅市(都県境)区間を担当している。
▲宝生寺tn ▲恩方tn
八王子南IC〜青梅IC間
八王子南IC〜青梅IC間の約22.5kmのうち、日の出IC〜青梅IC間の約8.7kmが平成14年3月に供用。17年3月にはあきる野IC〜日の出IC区間の約2.0kmが供用している。今年はこれに続く区間として、八王子JCT〜あきる野IC間(約9.6km)の橋梁・トンネル工事を最優先で進める。
用地取得については、16年度までに八王子JCT〜あきる野IC間の用地取得を完了。今年度は引き続き八王子南IC〜八王子JCT間の用地取得を推進する。
工事の進捗状況としては、トンネル工事は、15年9月に宝生寺トンネル、10年12月に恩方トンネル、17年2月に川口トンネルが貫通。八王子城跡トンネルについては、16年8月に先進導坑部分が貫通している状況だ。
橋梁工事では、八王子JCT〜あきる野IC間の橋梁は完成。今年度は八王子南IC付近の橋梁工事を推進する。改良工事は、八王子市恩方町地区、美山町地区、川口町地区及び八王子南IC付近で実施する。
▲八王子北IC
愛川町〜八王子南IC間
愛川町〜八王子南IC区間の約14.5kmは、引き続き調査・設計、用地取得を推進するとともに、愛川町〜八王子南IC間の全市町で工事を推進する。工事は愛川トンネル、城山八王子トンネル推進のほか、城山町において改良工事を推進する。
八王子城跡トンネル工事(仮称)
八王子城跡トンネル(仮称)は、八王子JCTから北浅川までの延長約2,400mのトンネルである。建設にあたっては多摩地域の豊かな自然環境への影響を十分に配慮しつつ、学識経験者の指導・助言を受けながら工事を推進している。
基本的な施工法については14年9月に開催された「トンネル技術検討委員会」で、施工方法を検討し、「先進導坑(シールド掘削)+natm(機械掘削)工法」を採用した。これはより短い期間で止水構造を完成させる施工方法であり、先進導坑掘削によって地山止水注入を導坑内から先行的に実施できるとともに本坑掘削も効率的に実施でき、より良い水文環境の保全が図られる工法である。
施工順序としては、(1)シールド機により先進導坑を掘削(シールド機を用いることで先進導坑を防水構造とする)、(2)先進導坑完成後にトンネル周囲に先進導坑内から、地山止水注入を施工(導坑内で複数の機械を導入することにより同時注入が可能となり、掘削作業の効率的な施工が可能となる)、(3)その後natm(機械掘削)工法で本坑を掘削する。本坑掘削後は防水シートと覆工コンクリートによって完全防水構造を構築する。
トンネル工事は、16年8月に先進導坑部分が貫通している。施工にあたっては今後も引き続き水文データ、施工データを十分に観察し、慎重に工事を進める方針だ。
▲八王子城跡tn(止水注入) ▲八王子城跡tn(北坑口)
▲川口tn(北坑口)
川口トンネル(仮称)
川口トンネル(仮称)は、東京都内区間のほぼ中央、あきる野ICの南方に位置する。延長約2,000mのトンネルで、内空径10.6m、上下線独立の半円形断面の山岳トンネルだ。施工方法はあきる野市側北坑口からの片押しのnatm(機械掘削)工法で施工している。
工事は今年2月に貫通式典が執り行われ、これによりあきる野ICから八王子JCT(仮称)までに計画されている4箇所のトンネルが全て貫通の運びとなった。今後は完成に向け慎重に工事を進める。
▲川口tn貫通式 ▲川口tn施工状況
▲八王子JCT
高尾山トンネル(仮称)
高尾山トンネル(仮称)は、八王子JCT(仮称)〜八王子南IC(仮称)間に計画されているトンネルである。高尾山トンネルと前の沢との交差部は比較的土被りが薄く、周辺では一部トンネルフォーメーションまで割れ目の褐色化が見られることから、トンネル内に水を引き込まず、他流域に水が流出しないよう十分カバーする区間を覆工止水構造としている。具体的には割れ目の褐色化が見られる箇所、透水性が比較的高いと想定されている箇所、前の沢本線の集水域を含む区間(約500m)を覆工止水構造とする。
▲八王子南IC ▲八王子南IC
▲八王子城跡TN南坑口
城山八王子トンネル(仮称)
城山八王子トンネル(仮称)は、東京都と神奈川県の県境に位置する延長約3,600mのトンネルである。
地質は中生代白亜紀の小仏層群で岩砂、頁岩が主であり、施工方法はnatm(発破)で計画している。東京都内区間では、一部土被りが薄く河川を横断する区間があり、注入式長尺鋼管先受け工等の補助工法を採用し、覆工止水構造を構築する計画となっている。
多摩地域の社会・経済・生活に活力 圏央道の整備に貢献
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