建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年2月号〉

トピックス

新潟県中越地震−群発した余震の恐怖

インフラ整備の後れが如実に反映

▲山古志村 遮断された道路 ▲小千谷市 道路通行止め
▲山古志村 隆起した路面 ▲小千谷市 道路段差
昨年10月23日17時56分に新潟県中越地方で発生した中越地震は、深さ13kmでマグニチュード(m)6.8で、強震観測史上最大値となる最大加速度2,515ガル(震度6強)が観測された。その後は、川口町で最大震度7を観測したが、それだけに止まらず、震度6弱以上を観測する余震が4回も発生した。後に震度5弱以上の余震は11月10日のm5.3を最後に、余震活動は減衰したものの、震度1以上となる余震は1日あたり1〜2回の頻度で発生した。この地震で受けた被害は甚大だったが、地震そのものによる被害だけでなく、土砂崩れや河川水の氾濫など、インフラの後れによる被害が目立った。この震災で40人が死亡、492人が重傷、4,051人が軽傷を負った。
【道路・港湾、交通機関被害】
港湾施設では、新潟空港、佐渡空港とも異常はなかったが、新潟みなとトンネルでは、山の下側立坑下左側自歩道で、冷却水オーバーフローによる水漏れが発生した。
道路施設で通行止めとなった箇所は、土砂崩れによる場合が30箇所、路面陥没や路肩決壊によるもの27箇所、危険予防措置としては3箇所で、合計60箇所、延べ全面通行止箇所224箇所に上った。
こうした交通止めによって、いくつもの集落が陸路を遮断された。その内訳は小千谷市の十二平地区と、山古志村全域14地区の計15箇所となった。一方、山古志村の楢木、木篭は、逆に陸路での一時帰宅ができなくなった。また、上越新幹線は下り路線で車両が脱線した。
▲山古志村 前沢川合流点 ▲山古志村 東竹沢地区
▲小千谷市 水配給を待つ市民 ▲小千谷市 被害
▲川口町 自衛隊救助テント ▲山古志村 道路の寸断で陸の孤島
【河川被害】
河川施設や海岸では、河川堤防・護岸の亀裂などが278箇所、河川埋塞147箇所、海岸護岸2箇所の計427箇所で被害を受けた。
このため、河川埋塞した朝日川は、 11月9日の時点で建物上流部の流木処理を完了。仮水路を大型土のうで一部補強し、応急仮工事完了。野辺川は12月6日に応急仮工事(仮水路)を完了。和田川は河道埋塞した12箇所のうち、緊急対応が必要な6箇所について、10月28日までに河道確保した。
堤防亀裂の被害を受けた刈谷田川は、12月24日に地盤改良実施に係る準備工を実施。一部区間は地盤改良実施に係る準備で休止。12月25日に、地盤改良実施に係る準備工を継続。太田川は、11月10日に応急本工事として良質材による置換え・築堤を完了。渋海川も、11月6日に応急本工事として良質材による置換え・築堤が完了した。
【下水道被害】
下水道処理施設は、信濃川下流流域下水道(長岡処理区)で、長岡1号幹線管渠の小千谷市千谷地内l=170m、小千谷市木津地内l=120m、川口町天納地内l=40mの3箇所に被害が発生。その他、魚野川流域下水道(堀之内処理区)の堀之内処理場(旧堀之内町新道島地内)で1箇所、堀之内1号幹線管渠(旧堀之内町竜光地内l=5m)で1箇所、堀之内2号幹線管渠(旧堀之内町宇賀地地内l=5m)で1箇所で被害が見られた。
そこで、信濃川下流流域下水道(長岡処理区)長岡1号幹線管渠と、幹線管渠(小千谷市千谷地内)被災管渠で10月30日に応急復旧完了した。
幹線管渠は小千谷市木津地内の管渠内の土砂を搬出し、11月10日に応急復旧を完了。北魚沼郡川口町天納地区の国道17号の迂回路部に仮設管渠を11月9日に埋設完了した。
なお、長岡処理区については、幹線管渠の通水機能を暫定的に確保し、処理場の処理機能は正常化したが、今後も幹線管渠の本復旧を実施していく。
また、堀之内処理区の魚野川流域下水道処理場は、12月10日に仮設沈殿池から水処理施設へ切替えて、本格復旧が完了した。
1号幹線管渠の魚沼市(旧堀之内町)竜光では、10月26日に水管橋2条配管を他方の管渠へ切り替えて処理場へ送水。2号幹線管渠魚沼市宇賀地では、10月29日に仮設配管により処理場へ送水。堀之内処理区については、幹線管渠は通水機能を確保、処理場は水処理機能を確保している。
さらに市町村公共下水道施設では、被害のあった25市町村のうち、すでに23市町村は応急復旧済みで、残り2市町は道路の復旧に合わせ応急復旧させている。
こうした被害に伴う12月時点の下水道利用・支障発生状況は、長岡市で27世帯に上り、高町の一部及び乙吉町(鶴ヶ丘団地)の一部は道路、宅地の被害が大きく、道路の復旧に合わせて着手する。魚沼市(旧堀之内町)は19世帯で、新道島の一部で道路や住宅の被害が大きく、その復旧に合わせて実施。
▲川口町 崖崩れ ▲小千谷市 土砂崩れ
▲山古志村 木籠〜樽木の中間付近 ▲山古志村 東竹沢小学校南側
土砂災害の発生状況と被害状況は、地すべり・がけ崩れなどは267箇所で、これに伴う家屋被災は全壊18戸、半壊27戸、一部損壊48戸の計93戸となった。
主な被災箇所の復旧状況は、地すべりによって、十日町市樽沢に生じた亀裂の目つぶし及び防水シートを設置、排土工を施した。長岡市栖吉では、防水シートの設置、押え盛土工、水抜ボーリング工が施された。小千谷市横渡は、排土工が実施され、がけ崩れの発生した小千谷市船岡では、大型土のうが設置され、吹付法枠工が12月下旬に完了した。十日町市田川では、防水シート設置のほか、鉄筋挿入工が施された。
土石流等の発生した相川川では、ワイヤーセンサーと警報器が設置され、大型土のうによる土砂止工、仮水路掘削が行われた。椿田川では埋塞土砂を撤去。法師ヶ沢川では、 ワイヤーセンサー、警報器設置のほか、大型土のうによる護岸嵩上げと河道掘削が行われた。
【建築物被害】
建築物に対する被害は、全壊が2,854棟、住宅は2,866世帯、大規模半壊は1,651棟、1,705世帯、半壊は9,197棟、9,752世帯、一部損壊は88,540棟、98,028世帯に上った。
被災宅地については、危険度判定士によって、市街地およびその周辺の造成住宅団地の土留め擁壁、宅地地盤、周囲の自然斜面など、宅地の危険度を判定。
そこで、被災者の生活の安定と被災地の復興を促進するため、住宅修繕支援隊が組織され、地元工務店等による修繕工事が支援されている。一方、仮設住宅は、要望戸数3,460戸がすべて完成している。
▲山古志村 地割れ
【農業被害】
農業施設・機械関係では、総数375,847 件の被害が確認されている。主な被害はカントリーエレベーター、ライスセンター、農業倉庫、農作業場等の破損・陥没等、種子保管倉庫等の倒壊、機器破損の他、地方卸売市場施設の損傷などとなっている。
農作物は66.35haに及び、農道不通によるユリ切り花農家の収穫遅延・不能、土砂流出による花き球根の堀取り不能となる影響が生じている。
また、農協在庫品等1,578.5tと、24地区ja倉庫内の米袋が破袋。畜産業は25,129ヶ所で、家畜死亡乳牛4戸分で8頭、肉用牛の被害は9戸分で143頭、豚は3戸で60頭となった。生乳被害は54戸で37tに上り、畜舎被害の倒壊や一部損壊が49ヶ所、その他乳業工場など関連・畜舎附帯施設の被害は10ヶ所となった。
また、被害を受けた農地は32 3,985箇所で、水田・畑地の亀裂、崩壊、液状化、土砂による埋没が1,503haを占めている。
農業用施設(生産基盤関係)は4,310,780箇所で、ダム堤体の沈下、ブロック破損、管理棟傾き、ため池堤体等に亀裂、漏水、破堤、道路の亀裂、隆起、液状化、用排水機場の積みブロック崩壊等が確認された。
農村振興局所管では、10ヶ所56 排水路に被害が見られ、土留工、堰堤工、水抜ボーリングの破損、農業集落排水処理施設の汚水管破損・マンホール浮上・排水不良が見られた。
また、県農林水産関係の庁舎・備品にも被害が13箇所で見られ、県試験研究機関等の庁舎・研究施設の破損、備品の破損などが確認された。被害総額は1,304億9,400万円に上る。
【水産林業被害】
水産業では、156,431箇所で、養殖池の崩壊・亀裂、越冬施設や共同利用施設の損壊・漏水が発生した他、コイの斃死被害も見られた。
林地・林道では、林業施設などへの被害が40640箇所となった。林地被害(山腹崩壊等)は147箇所、林道施設被害(路肩決壊、法面崩壊等)は410箇所のほか、きのこ被害(生産施設損壊、収穫不能等)は75ヶ所、その他の林業施設等被害は8ヶ所となった。
(写真提供:新潟県)

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