建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年2号〉

年 頭 所 感

国土交通大臣 北側 一雄

平成17年という新しい年を迎え、謹んで新春のごあいさつを申し上げます。
昨年を振り返りますと、豪雨や相次ぐ台風の上陸、新潟県中越地震などにより、多くの被害が発生しました。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々に対し心からお見舞い申し上げます。あわせて、関係者による昼夜を問わない復旧・復興の取組みに対し、心から敬意を表します。
今年一年、大きな自然災害が発生しないことを切に祈るとともに、国土交通省としましても、被災地の早期復旧・復興に全力で取り組みます。
国土交通行政は、国土政策、社会資本整備、交通政策等を総合的に推進するという幅広い任務を担っており、いずれもが国民生活に密着しています。
国土は、暮らしや経済活動の舞台そのものであり、社会資本や交通はそれらを支える最も基本的な基盤です。
そのため、国民の皆様の期待に応えることができるよう、国土の将来像を踏まえ、国民の立場・視点に立った国土交通行政を着実に推進します。
こうした幅広い任務の下、国土交通省が重点的に取り組む課題をいくつか申し述べます。
時代の要請に相応しい国土交通行政の新たな展開
我が国全体として構造改革の推進が求められる中、国土交通行政についても一層の改革を進めます。
社会資本整備については、「社会資本整備重点計画」に基づき、達成される成果に重点を置いて進めるとともに、効率的な整備が行われるよう、事業の重点化、コスト構造改革の推進、費用対効果分析を含む事業評価の厳格な実施等を推進します。また、価格だけでなく技術や品質を含めた評価の下で健全な競争を促進するため、入札・契約の一層の改革・適正化に取り組みます。
道路関係四公団については、本年10月を目標に民営化します。また、民営化の目的を踏まえ、高速自動車国道について、有料道路事業費をほぼ半減するとともに、etcを活用した割引制度により、通行料金の平均1割以上の引下げを本年4月から完全実施します。
住宅金融公庫については、整理合理化計画に基づき、平成18年度中に廃止し、証券化支援業務等を行う新たな独立行政法人を設置することとし、そのための法律案を今年の通常国会に提出する予定です。
ユニバーサルデザインの考え方に基づく国土交通政策の構築
国土交通省全体を挙げて取り組む課題として、障害の有無や年齢、性別、言語等にかかわらず、「どこでも、誰でも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に基づく国土交通政策の構築を進めます。
このため、省内に「ユニバーサルデザイン政策推進本部」を設置するとともに、「ユニバーサルデザインの考え方に基づくバリアフリーのあり方を考える懇談会」及び「公共交通の利用円滑化に関する懇談会」を関催し、障害者団体、事業者、地方公共団体等の皆様から御意見を頂き、全ての人が自立し、安心して暮らし、持てる能力を最大限に発揮できる社会、ユニバーサルデザインの社会を目指して幅広く政策の検討を進めてまいります。
また、「心のバリアフリー」の実現や、itの活用により移動時に必要な情報を利用できる自律移動支援プロジェクト等を推進します。
地域再生・都市再生
全国各地域では、高齢化の進展、中心市街地の空洞化等の課題を抱えており、地域経済の活性化や地域雇用の創出等を目指す「地域再生・都市再生」の実現が重要です。
このため、使途の自由度の高い「まちづくり交付金」の拡充や、汚水処理、道、港の政策テーマ別に省庁を超えて一本化した交付金の創設等地域の自主的な計画への支援を行い、地域の創意工夫を生かした地域の再生を後押しします。
また、全国のまち再生への取組みに民間資金を誘導する方策や都市再生緊急整備地域における民間都市再生事業への支援などにより、民間のノウハウを生かした特色あるまちづくりを推進します。
さらに、都市鉄道等の利便性を増進させる制度の創設、まちづくりと一体となった次世代型路面電車システム(lrt)の整備促進、バス交通再生プロジェクトや地方鉄道の再生等による公共交通の活性化、航空交通容量の拡大や整備新幹線の着実な整備等により、利便性・快適性の高いモビリティの確保に努めます。
このほか、地域の基幹産業である建設業の再生に向け、新分野進出に関するサービスをまとめて受けられるワンストップサービスセンターを都道府県ごとに設置し、関係省庁と連携した支援を行います。
観光立国の実現・良好な景観の形成
2010年までに訪日外国人旅行者を倍増の1千万人とし、「住んでよし、訪れてよしの国づくり」の実現のため、観光立国担当大臣として、観光立国の推進に取り組みます。
政府を挙げて取り組む観光立国行動計画に基づき、地域が取り組む姉妹都市交流を活用しながら、ビジット・ジャパン・キャンペーンの高度化による日本ブランドの海外発信の一層の充実、関係省庁との協力による訪日外国人旅行者に係る査証免除や手続き簡素化、空港から都市部へのアクセス円滑化、案内標識やitを活用した観光案内システムの整備、通訳ガイドの育成・確保等を推進します。
また、地域において民間と自治体が一体となって進める観光振興の取組みに対するハード・ソフト両面からの総合的な支援等により、国際競争力のある観光地づくりを推進します。
さらに、昨年末に施行された我が国で初めての景観に関する総合的な法律である「景観法」等に基づき、全国各地における良好な景観の形成や都市における緑地の保全・創出に取り組みます。
安心でくらしやすい社会の実現
市場・ストック重視の住宅政策への転換を図る中で、地域住宅政策を総合的・計画的に推進する交付金の創設等により住宅セーフティネットの再構築を推進するほか、建築物の安全対策として事故防止対策の検討体制の確立等に取り組みます。
さらに、自動車の総合的な安全対策として、リコールに係る不正行為の再発防止対策の強化、車両の安全性向上、事故情報の収集・分析の強化等を進めます。
このほか、「開かずの踏切」対策のスピードアップ、路上工事の縮減、道路環境の集中的改善、交通事故対策等に取り組みます。
大規模災害対策やテロ対策等の危機管理・安全保障対策等
昨年は国民の生命・財産を脅かす災害が頻発しましたが、これまでの災害対策を総点検し、ハザードマップの作成促進や地域密着の防災情報提供等のソフト対策とハード整備を一体的に実施する水害対策、土砂災害対策や地震・津波対策等に努め、災害に強い国づくりを推進します。
また、昨今の緊迫したテロ情勢を踏まえ、陸・海・空の交通機関や空港・港湾・ダム等の重要施設に対する警備の強化、港湾・空港における水際対策の強化等、危機管理・安全保障対策に取り組みます。さらに、我が国の海洋権益確保のため、尖閣諸島等における領海警備の強化、大陸棚の限界画定のための調査を推進します。
アジアとの大交流時代に向けた国際競争力及び国際連携の確保
世界各国、特に成長著しいアジアとの国際交流を支える基盤強化のため、大都市圏拠点空港の整備、スーパー中枢港湾プロジェクトの推進、三大都市圏における環状道路の整備等を進めます。
また、交通セキュリティや円滑な物流ネットワークの構築、海洋汚染防止等の分野で国際的な枠組み・連携に基づく取組みを推進します。
国土交通行政のグリーン化
本年2月の京都議定書の発効を見据え、地球温暖化対策を進めるため、低公害車の開発・普及の促進、海運・鉄道の活用による環境負荷の小さい交通体系への転換、公共交通機関の利用促進等を推進します。これらに加えて新たに、荷主と物流事業者の連携・協働した取組みの促進による物流のグリーン化や、住宅・建築物、運輸分野における省エネ対策の強化を図ります。あわせて、道路の保水性舗装化と散水等によるヒートアイランド問題への対応を進めます。
さらに、高度処理共同負担事業の創設等による水質改善や流域・川・海のリニューアル等を通じ、持続可能な国土の形成に取り組むほか、循環型社会の形成に向け、国土交通分野のリサイクルを推進します。
また、環境的に持続可能な交通(est)の実現や水と緑のネットワーク形成に向けた地域の先進的な取組みなど、様々な環境対策に総合的に取り組む地域に対し集中支援を行うため「国土交通省環境行動計画モデル事業」を実施します。
効率的で競争力のある物流対策
流通業務の総合化、効率化を進めるため、サードパーティロジスティクス(3pl)を担う人材を育成するとともに、3pl支援のための関連法の特例等を内容とする法案を通常国会に提出します。加えて、輸出入・港湾関連手続の国際標準化・効率化等を進めるほか、新しい総合物流施策大綱の策定に取り組みます。
また、革新的な次世代推進システム等により物流効率化と環境負荷低減を図るスーパーエコシップの開発・普及を進めます。
さらに、今後の経済社会の姿に適応した新たな国土計画の具体化に取り組み、地域の意見を反映した成熟期にふさわしい我が国の将来像を国民に提示していきます。
なお、国会等の移転については、国会における検討に必要な協力を行ってまいります。
以上、新しい年を迎えるに当たり、国土交通省の重要課題をいくつか申し述べました。今後とも、国土交通行政の推進に関し、国民の皆様の一層のご支援、ご協力をお願いするとともに、新しい年が皆様方にとりまして希望に満ちた、大いなる発展の年になりますことを心より祈念いたします。

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