建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年11月号〉

特集・日本道路公団北海道支社

北海道の東西分断を解消する道東道 夕張〜十勝清水間

JH千歳工事事務所所管・夕張〜占冠間事業概要

▲夕張市楓地区地すべり対策工事
北海道横断自動車道は、北海道を東西に横断し、道央圏と道東地域の連携を強化し、沿線地域の産業、経済、文化の発展に大きく貢献する道路である。
この内の道東自動車道 夕張〜十勝清水間は空知地方、胆振地方、上川地方、十勝地方の4生活圏にわたりこの沿線をほぼ東西に通過している。西側は夕張山地を始め、東側にかけては日高山脈に連なる急傾斜山地地帯となっており、清水町へと続く。
気候は内陸性気候の性格が強く、年間の寒暖の差が大きい。気温は年平均値(月平均)が6度前後、年降水量は1,100〜1,300mm、積雪量は約50cm〜140cm(年最大積雪深)と、道内屈指の厳しい気候条件である。
区間の特徴
路線は標高2,000m級の山々が連なる急峻な夕張山地や日高山脈を通過するため、3,000mを越える3本の長大トンネルをはじめ、橋梁などの構造物比率は非常に高くなっている。
また、日高山脈の西側に分布する神居古潭変成体では、蛇紋岩を代表格とする変成岩が随所に出現し、風化しやすい膨潤性の地山や大規模な地滑り地帯が多く点在している。そのため当該箇所のトンネルや法面では非常に困難な工事が予想されるとともに、高度な土木技術が必要とされる。
▲鶴亀の沢川(下部工)工事
路線概況
夕張〜占冠間については平成15年3月に準備工事としての穂別川工事に着手したのを手始めに、順次本格的な本線工事に着手している。
占冠〜トマム間については平成15年9月に準備工事としてのトマム地区付替道路工事に着手したのを手始めに今年7月には本格的な本線工事となる東占冠トンネル(約2.5km)に着手した。
トマム〜十勝清水間については平成14年3月に夕張〜十勝清水間で最初の工事となる広内トンネル(約0.9km)に着手したのを手始めに、今年8月末までに全延長にわたって工事が発注され、全面展開の状況となっている。
なお、広内トンネルについては既に本体工事は完成し、無事竣工を迎えたところである。
整備効果
道東自動車道は北海道の東西分断を解消するとともに、道東圏と道東地域との連携と交流を促進する。
道東自動車道の夕張〜十勝清水間が結ばれると、急峻な地形と過酷な気象条件下にある日勝峠(標高1,022m)が回避され、道路標高が約400m下がることになるとともに、道路の線形が大幅に改善され、走行距離が約30km短縮されるとともに、所要時間が約50分と大幅に短縮される。また、標高が下がることにより、吹雪・濃霧・事故などのリスクが減少し、交通の安全性も大幅に向上することが期待される。
道内有数の山岳地帯を通過
北海道横断自動車道・黒松内釧路線は、寿都郡黒松内町を起点として、小樽市、札幌市、千歳市、夕張市、帯広市、釧路市を経由して根室市に至る延長約538kmの路線である。
この中で千歳工事事務所が担当する夕張〜占冠間は、既供用の千歳恵庭jct〜夕張icの延伸にあたる、延長37kmの路線である。
この区間は日高山脈、夕張山地を通過する本格的な山岳地域の高速道路であり、道路トンネルとしては道内で最も長い穂別トンネル(約4.3km)のほか、大夕張トンネル(約4.2km)、占冠トンネル(約3.9km)など、4,000m級の長大トンネルが3本建設される。
特に穂別トンネルは、完成すると現在道内最長である国道236号の野塚トンネルを抜き、道内最長の道路トンネルとなる。また大夕張トンネルについても道内3位、占冠トンネルについても道内5位の道路トンネルとなる。
橋梁についても鵡川橋(約700m)、楓橋(約400m)、双珠別川橋(約400m)などの長大橋があり、トンネルと橋梁を併せた構造物比率は50%を越える。
夕張〜占冠間路線概要
路線は、一般国道274号と接続する夕張icから同国道、夕張川と並行して進んだ後、久留喜トンネルに入る。その後、同国道、JR石勝線と交差後、ユーパロトンネル(約2.0km)、大夕張トンネル(約4.2km)に入り、穂別町に進む。穂別町では穂別ダム北東に位置するヌタポマナイ川と交差し、穂別ic(仮称)に至り、道道穂別インター線に接続する。穂別icを過ぎると、穂別川と交差。長和トンネル(約1.6km)、穂別トンネル(約4.3km)に入り、占冠村に進む。占冠村では占冠トンネル(約3.9km)に入り、その後タンネナイトンネル(約0.8km)、占冠中央トンネル(約0.5km)で国設占冠スキー場付近を通過し、占冠icに至る。
屈指の難工事区間
同区間は北海道中央部に南北に連なる日高山脈の西側に位置し、全般に厳しい山岳地形を有している。また日高構造線を横断することから、これまでに激しい地殻変動の影響を受けた複雑な地質構造を呈し、蛇紋岩に代表される変成岩が大量に存在している。
そのため、この路線の中でも屈指の難工事と位置づけられている。
特に技術的課題としては、地すべり対策と、蛇紋岩地質のトンネル掘削がある。蛇紋岩は風化しやすい性質を持っているため、地すべりなどの災害につながりやすいという特徴がある。jh北海道支社では道央道の旭川鷹栖ic直近の嵐山トンネルで蛇紋岩地質でのトンネル掘削を経験している。今回の穂別トンネル工事ではこれまでより土被りが大きく、難工事が予想されるが、最新の土木技術を駆使して施工していく予定である。
地すべり対策
前述のように蛇紋岩地帯では膨張性地圧や大規模な地すべりの発生が懸念される。そのため、占冠トンネルや穂別トンネルの東側、夕張市楓地区では本線に先行して地すべり対策を行っている。
穂別トンネルでは今年度集水井の掘削のほか、東側坑口付近約7.5kmにわたって約650本の鉄筋を垂直に差し込む垂直縫地工を併用し、地すべり対策を行っている。
また本線の掘削に備えて調査と排水を併用した避難坑の掘削に着手する予定だ。
▲楓橋 完成予想図

コスト縮減への取り組み

<波形鋼板ウェブPC箱桁橋を採用>
夕張市楓地区の楓橋では、鋼とコンクリートの複合構造を持つ、波形鋼板ウェブpc箱桁橋を採用している。この複合構造はpc箱桁橋のウェブに波型鋼板あるいは鋼トラスを用いた構造であり、約25%占めていたウェブの重量を軽量な鋼構造とすることで主桁重量の大幅な軽量化が図られる。
またコンクリートの断面積が縮小することにより、プレストレスの効率が向上し、コンクリートウェブを鋼材に置き換えることによって施工の合理化、工期の短縮、コストの低減が可能となり、橋脚・基礎を縮小することでよりコストの軽減が可能となる。
<穂別川工事>
穂別川は曲がりくねった線形であり、並行する道路では数多くの橋梁が必要となる。そのため河川管理者である北海道と協議し、河川の付替えを行う準備工事を実施。橋梁の数を極力減らし、コスト縮減を図った。
施工にあたっては、線形の変更による流速の上昇を抑えるため、勾配の緩い線形とした。また、自然回復しやすい護岸工を行い、自然環境への影響を考慮している。
▲穂別川工事 穂別川工事
▲占冠村鬼峠地区 占冠地区地すべり対策工事
▲占冠村ニニウ地区 占冠トンネル西工事
▲穂別町長和地区 新登川工事
▲夕張市楓地区 地すべり対策工事

夕張〜占冠間現在の各工事状況

<占冠村鬼峠地区(占冠トンネル東坑口)・占冠地区地すべり対策工事>
地すべり地帯を通過するため、深さ15〜35mの集水井を設置し、地下水位を下げて、地山を安定させることを目的とした地すべり対策工事を実施している。現在、集水井8基を施工済みであり、この集水井施工により、5〜6mの地下水位の低下を確認している。
<占冠村ニニウ地区・占冠トンネル西工事>
トンネル坑口付近で施設ヤードの施工が進んでいる。降雪前までにトンネル坑口付けを完了させ、この冬期間はトンネル掘削を継続して行う予定である。
<占冠村清風山地区(穂別トンネル東坑口)・占冠地区地すべり対策工事/穂別トンネル東工事>
JR石勝線清風山信号所の直近に位置する穂別トンネル東坑口においても地すべり対策工事を実施している。集水井4基を施工済みである。また、垂直縫地工は施工が完了している。
<穂別町長和地区(東長和橋、長和トンネル西坑口)・新登川工事>
東長和橋の下部工を施工中である。A1〜P1間の地下部にはJR石勝線の新登川トンネルが近接しており、変位観測を継続して実施している。
<穂別町長和地区(穂別トンネル西坑口)・穂別トンネル西避難坑工事>
トンネルの設備ヤードを造成中である。降雪前までにトンネル坑口付けを完了し、この冬期間はトンネル掘削を継続して行う予定である。
穂別トンネルでは調査結果より蛇紋岩が最も多く分布することが確認されており、技術的に困難な工事となる。そのため、外部の専門家による技術検討委員会の意見を聞きながら慎重に対応しているところである。
<夕張市楓地区(楓橋、北海道物産センター付近)・地すべり対策工事>
一般国道274号とJR石勝線を最新の技術を用いた波形鋼板ウェブPC箱桁形式の楓橋で横架する。
JR近傍は地すべり地帯となっているため、対策工を実施中である。また集水井8基を施工している。
<夕張市楓地区(ユーパロトンネル西坑口)・鶴亀の沢川橋(下部工)工事>
ユーパロトンネル坑口部が沢地形となっているため、先行して本線橋梁である鶴亀の沢川橋の下部工工事を実施している。
道東自動車道 夕張IC〜占冠IC間の整備に貢献する精鋭企業群
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