建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年2号〉


年 頭 所 感

国土交通大臣 石原伸晃

 平成16年の新しい年を迎え、謹んで新春のごあいさつを申し上げます。
 まず、我が国全体として構造改革の推進が求められる中、国土交通行政の一層の改革を進める観点から、今後の国土交通行政の基本的な考え方について申し述べさせて頂きます。
 これからの国土交通行政を進めるにあたっては、国民と向き合い成果を重視した施策を重点的に展開していくことが何より重要であると考えています。
 特に、これからの公共事業は、無駄なものを造らず、「選択と集中」の基本の下、限られた資源を今後の日本にとって真に必要な事業に投入することが必要です。先般、公共事業関係の長期計画を一本化した「社会資本整備重点計画」を策定致しました。これを契機として、国土交通行政における政策の目標について、企画立案(plan)・実施(do)・評価(see)のサイクルに沿って、国民が納得できる成果が達成されたかどうかを絶えず評価し、その結果を踏まえた施策の実施を進めていく「事業評価」をさらに徹底します。
 施策の展開に当たっては、民に委ねられるものは民に委ねるなど効率性の重視。また、個性ある地域の発展のための地方の主体性・裁量性の向上の二つの視点を重視します。
 効率性の重視の観点からは、特殊法人等改革、pfiの推進、行政手続の簡素化、社会資本の管理や地域交通における住民参加の促進、既存ストックの有効活用、入社契約適正化法の的確な運用による公共事業の透明性の確保と公共事業コストの構造改革、事業評価の厳格な実施等の施策に着実に取り組みます。
 特に、道路関係四公団の民営化については、一昨年12月の道路関係四公団民営化推進委員会の意見を基本的に尊重し、昨年12月、政府・与党協議会を経て、基本的枠組み(「道路関係四公団民営化の基本的枠組みについて」)を決定しました。これは、「抜本的見直し区間の設定」、「有料道路事業費の半減」、「民営化後の45年での債務の確実な返済」、「国からの命令方式を廃止するなどによる会社の自主的な経営判断に基づく新規建設の仕組み」など、道路行政の一時期を画する、画期的なものとなっています。これによって、「40兆円に上る有利子債務の確実な返済」と「真に必要な道路について、会社の自主性を尊重しつつ、できるだけ少ない国費負担の下で建設する」という民営化の原点を実現することのできる仕組みができました。今後、平成17年度中の民営化に向けて、関係法案を次期通常国会に提出すべく、全力で取り組みたいと考えています。
 地域の知恵と創意工夫の発揮の観点からは、従来の補助金とは全く異なり「求めるのは成果、方法は地方に任せる」を基本にした「まちづくり交付金」の創設、地域の課題解決に資する複数の道路事業をパッケージで支援する地方道路整備臨時交付金の改革等、地方の裁量を高める方向で、国庫補助負担金の廃止・縮減等の改革を推進します。また、ローカルルールの導入や、地方ブロック戦略会議等を活用した国と地方との対話型行政の推進等に取り組むとともに、国土計画の改革を進めます。
 次に、今後、国土交通省として重点的に取り組む課題について申し述べます。
 第一に、国際競争力の向上等に向けた取り組みを推進します。
 経済活動の拠点である大都市圏と海外・国内各地を結ぶ人流・物流のボトルネックの解消を通じ国際競争力の向上を図るため、大都市圏拠点空港、中枢国際港湾、アクセス道路・鉄道の整備のほか、航空産業の競争力強化、海上物流改革の推進、首都圏三環状道路を始めとする大都市圏における環伏道路体系の整備等を推進します。また、東アジアに開かれた交通施策の展開、水問題など世界的問題に対応した国際連携・国際協力に関連する取り組みを着実に推進します。
 特に羽田空港については、関係省庁及び関係自治体の御理解、御協力も得つつ、四本目の滑走路等を新設する再拡張事業に来年度から着手し、2009年中の供用開始及び国際定期便の就航に向けて最大限努力します。
 第二に、緊急の取り組みが求められている環境問題に対応するため、排出ガス規制や低公害車の開発・普及、公共交通機関の利用促進等、地球温暖化対策推進大綱の見直しを見据えた地球温暖化対策や大気汚染対策等による快適な生活環境の実現を推進します。また、自然環境の保全・再生、健全な水循環系の構築、リサイクルの推進等による循環型社会の形成、国民生活・経済活動での環境配慮の促進など、環境重視の施策に積極的に取り組みます。
 第三に、観光立国の実現と美しい国づくりを推進します。
 観光は、我が国の経済、雇用、地域の活性化に大きく貢献しており、また、国際相互理解の増進、美しく魅力ある目本の形成に資するものです。観光立国担当大臣として、関係省庁と連携して、「観光立国行動計画」を推進するとともに、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」や「一地域一観光」等の取組を、官民一体となって強力に進めます。
 また、「美しい国づくり」の観点から、良好な景観を次世代に引き継ぐべく、美しい景観や豊かな緑の形成を促進するための法制度の整備や、電線類の地中化等を進めます。
 第四に、危機管理・安全保障対策に取り組みます。近年頻発している世界各地におけるテロ事件、国内における地震・集中豪雨などの自然災害や不審船・工作船事案などに連切に対応します。また、我が国の治安の急速な悪化に対応した密輸・密航等海上犯罪の取締りや、改正solas条約(海上安全人命条約)への対応、psc(ポートステートコントロール)の厳格な実施、物流セキュリテイ対策等を通じた港湾・空港等における水際対策等の安全・保安対策の強化を講じるとともに、放置座礁船対策等に努めます。
 第五に、安心でくらしやすい社会の実現に取り組みます。大規模地震対策、都市浸水対策を始めとする水害対策、土砂災害対策、密集市街地対策、地下駅火災対策等を重点的に実施します。また、情報と土地利用と防災施設とが一体となった安全な地域づくりを進めます。また、少子高齢化が一層進展する中、すべての人々が安心して生活できる環境を整備するため、公共交通機関、歩行空間、住宅・建築物等のバリアフリー化を推進するとともに、npo法人等が高齢者や障害者の方々を自動車で送迎する特区制度を全国的に展開します。さらに、陸・海・空にわたる総合的な交通安全対策を推進します。
 第六に、経済の活性化のために需要を拡大し、地域の基盤強化を推進します。
 我が国の経済環境が厳しさを増している中、デフレを解消し、民需の自立的な拡大を実現するため、住宅ローン減税の延長や個人の土地長期譲渡所得に係る税率の引下げ等の土地・住宅税制の活用を図ります。同時に不動産証券化の促進、土地取引情報等の整備・提供等により、土地の流動化や土地・住宅市場の活性化を進めます。
 また、厳しい経営環境にある建設業について、不良・不適格業者の排除を徹底するとともに、経営の効率化、企業間連携を促進します。併せて構造改革特区制度を活用した農業への参入、酒造業など地域の風土・伝統に根ざした産業への進出など事業転換等を推進し、技術と経営に優れた企業が伸びていくことのできる環境整備を図ります。
 さらに、地域の活性化を促進するため、地域間の交流を促進する幹線道路網、新幹線等の整備や、地方鉄道、バス等の地域交通の再生等公共交通サービスを改善します。また、商店街の活性化等を支援するくらしのみちゾーンの形成等を推進します。同時に北海道総合開発の推進や奄美群島・小笠原諸島の振興など、個性ある地域の発展に積極的に取り組みます。
 都市再生については、これまで都市再生プロジェクトの推進とともに、都市再生特別措置法等による規制援和や金融支援等の措置を講じてきました。今後とも都市再生本部と連携し、民間の力を最大限活用します。また「稚内から石垣まで」を基本に全国の都市における新たな支援の基本的枠組みを構築し、地域の歴史・文化や創意工夫を活かしつつ、豊かで快適な都市の再生に取り組みます。
 地域再生については、それぞれの地域自らが意欲を持って地域経済の活性化と地域雇用の創造に取り組むことが重要です。そのために地域再生本部や観光立国関係閣僚会議と連携しつつ、積極的に地域の取り組みを支援します。また、構造改革特区を引き続き着実に推進します。
 なお、国会等の移転については、国会において検討が進められているところですが、引き続き必要な協力を行ってまいりたいと考えています。
 第七に、都市再生の円滑な推進等を図るための地籍整備を進めます。また、海底等における天然資源に関し主権的権利を有する大陸棚の限界を延長するための大陸棚調査等を関係省庁と連携を図り推進します。
 以上、新しい年を迎え、私の所信の一端を申し述べましたが、今後とも、国土交通行政の推進に関し、国民の皆様の一層のご支援、ご協力をお願いするとともに、新しい年が皆様方にとりまして希望に満ちた、大いなる発展の年になりますことを心より祈念いたしまして、新年のごあいさつといたします。


HOME