建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年1月号〉

東京都建設局が建設CALS/ECを試行

電子納品により写真の編集・管理の省力化・省スペース化が実現

東京都建設局

 公共事業のIT化が進行しつつある。そのモデルが建設CALS/EC。国土交通省では、既に一部の工事で電子入札を導入しているが、東京都建設局でも、平成13年7月より建設CALS/ECの試行を始めた。現場での取り組みを取材した。

▲第一区画整理事務所・豊洲地区事務所。
発注者、業者間の工事日報等のやりとりをメールで行う。

▲大成建設の現場事務所
工事写真のデジタル化により、編集・管理作業も容易に。
東京都建設局第一区画整理事務所・豊洲地区事務所。現場監督員の蝦名氏は、業者の担当者と、工事日報や打ち合わせ事項等につき、適宜メールでのやりとりを行っている。蝦名氏は、こうしたメールでの情報連絡体制の整備により、発注者・施工業者間の打ち合わせがスムーズになったと話す。
一方、晴豊1号橋下部工事を施工する大成建設、清水建設の現場事務所。大型のスクリーンに映し出される工事写真は、デジタルカメラで撮影、整理されたもの。発注者による工事検査も、この画面を通じて行われる。
東京都が建設CALS/ECの試行対象とした工事は別紙の6工事。工事の規模や請負者の受け入れ体制等を考慮し選出された。
主な取り組み内容は、日常の施工管理情報や記録、報告書等を電子メールで送受信するなど、工事施工管理上の電子的な情報交換、竣工図書、工事記録写真の電子媒体による納品が中心。
このうち、ペーパーレスの効果が現れたのは電子納品。これまでは大量の工事写真を撮影して、1枚ずつ整理していたが、デジタルカメラの導入により、写真の編集・管理の省力化・省スペース化が実現した。
この他、書類の細かな手直しなどもオンラインで可能となり、雑務が減ったなどのメリットを指摘する声も聞かれた。
しかし、各現場とも試行を始めてから4〜5ヶ月で、まだ手探りの状態にあり、電子認証(電子決済)システムの未整備やアプリケーションの統一、ウイルス対策等の課題も残る。都建設局では今後、情報交換会を開くなど試行の結果を踏まえ、対象工事を順次広げていく考えだ。

■第一区画整理事務所、晴豊1号橋(仮称)下部工事・その3、その4工事の例

●提出書類の電子納品

【対象書類一覧】

納品対象書類 書類作成者 書類管理ファイル名 その3工事 その4工事
材料検査請求書 請負者 提出書類管理ファイル ×
協議・報告書 発注者−請負者 提出書類管理ファイル ×
指示・承諾書 発注者−請負者 提出書類管理ファイル ×
施工計画書 請負者 施工計画書管理ファイル × ×(協議の上)
承諾申請書 請負者 提出書類管理ファイル ×
休日等の工事施工届 請負者 提出書類管理ファイル
材斜搬入予定調書 請負者 提出書類管理ファイル
試験委嘱指定申請書 請負者 提出書類管理ファイル ×
(○○)記録の報告書 請負者 提出書類管理ファイル
施工管理記録等報告書 請負者 提出書類管理ファイル
報告書(主任技術者等雇用関係) 請負者 提出書類管理ファイル ×
材料搬入実績調書 請負者 提出書類管理ファイル ×
監督員資料提出届 請負者 提出書類管理ファイル
主要資材発注予定報告書 請負者 提出書類管理ファイル
完成図面 請負者 図面管理ファイル × ×(協議の上)
工事写真 請負者 提出書類管理ファイル
工事履行報告書 請負者 提出書類管理ファイル
注:提出書類については原則的にpdfファイルを使用。その3工事とその4工事で提出書類に差異を持たせ、双方の利点、欠点等を把握、整理する。凡例:網掛けは技術管理課で電子化を嚢務づけしているもの。●紙と電子化、○電子化、▲紙と電子化検討、×紙のみ

【電子メールを利用した情報連絡体制】

項目 発信者 送付者 頻度 提出期限
工事日報 請負者 第一区画整理事務所・豊洲地区 1回/日 毎日16時〜17時
工事状況写真 請負者 第一区画整理事務所・豊洲地区 適宜  
週間工程表 請負者 第一区画整理事務所・豊洲地区 1回/週 毎週金曜日まで
月間工程表 請負者 第一区画整理車務所・豊洲地区 1回/月 毎月25日
打合せ議事録 請負者 第一区画整理事務所・豊洲地区 適宜 打合せの同日
立会予定表 請負者 第一区画整理事務所・豊洲地区 1回/週 毎週金曜日まで
週間予定表 監督員 請負者 1回/週 毎週木曜日まで
指示・連絡車項 監督員 請負者 適宜  
(以上は、第一区画整理事務所、晴豊1号橋(仮称)下部工事・その3、その4工事の例)

【工事写真の電子納品】
 ・デジタル写真情報管理基準(案)による。
 ・工事写真管理ソフトにより編集後、cd-rにより提出。(moは別途協議)
 ・別途、ダイジェスト版のみプリントしたもので製本。検査対応

【その他】
 ・メールチェックは最低3回/日(朝、昼、夕)とする。
 ・使用するソフトウェアのバージョンは、とりあえず現状を使用する。(pdf主体とするため)

●建設CALS/EC

「公共事業支援統合情報システム」の略称で、「これまで紙でやりとりされていた公共事業に関する情報を、標準に基づいて電子化し、情報機器をネットワークに接続することにより、特定の機器、システムに縛られることなく、組織を越えて情報の伝達、共有、処理、加工、検索、連携を可能とする環境の総称」(CONSTRUCTION CALS/EC HTTP://WWW.CALS.JACIC.OR.JP/QUESTION/ANSWER/A1-3-1.HTMLより)を言う。
なお、CALSは“CONTINUOUS ACQUISITION AND LIFE-CYCLE SUPPORT”の略。直訳すると「継続的な調達とライフサイクルの支援」で、もとは米国国防総省が軍の後方支援のために作ったペーパーレス化のための情報システムのコンセプトを指す。一方ECは“ELECTRONIC COMMERCE”の略で、「電子商取引」の意となる。

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