SEPTEMBER . 2018

ラオスのメコン川に建設されていた発電ダムであるセナムノイダムが、この 7 月に決壊し、数十人が死亡、約100人以上が行方不明となり、約 7,000世帯の住宅が流され、さらには隣国のカンボジアにまで被害が及び、17 村が水没、1,200 人が避難生活を強いられることとなった。

 決壊したのはセピアン・セナムノイ・ダムで、形式は重力式ロックフィルダム、貯水量は 11 億 t、発電量は 410Mワット。2 つのメインダムと 5 つの補助ダム、サドルダムで構成される設計だった。

 このダムの発注を巡って、日本は軟弱地盤を考慮し、基盤整備を含めた総合ロックフィルダム形式を提案し、完成後には 50 年間の保証付きで入札参加した。だが、事業者はタイと韓国 SKグループの SK 建設、ラオスの国営企業による合弁会社だったため、見た目は同じロックフィル形式を低価で入札した SK 建設と韓国西部発電による JVが落札した。

 SK 建設の提案は、事業費が日本の1/3 で工期も短期間だが、日本と同様に 50 年間の賠償保証付きである。だが、施工結果は予定の工期より 4 ヶ月も早くに竣工させ、早期完成ボーナスとして 2000 万ドル(22 億円)を獲得した。

 ところが、完成後の試験湛水では、最も小規模だった一つのサドルダムに地盤沈下が発生し、堤体には亀裂が生じたため注水を停止。早急に補修に取りかかろうとしたものの、折柄の豪雨で作業が難航。このため、メインダムのセナムノイダムから緊急に放水したが、貯水率はわづか 30%程度ながらも、異常の発生していたサドルダムが決壊した。にも関わらず、下流域の住民への警報は発せられなかったという。これによって、膨大な犠牲と莫大な損害をもたらしたのである。

 この事態に、韓国政府は 2 億ウォン(2,000 万円)の見舞金を供出したが、莫大な賠償責任を負った SK 建設は、想定外の降雨が決壊原因と主張した上に、現地のラオス労働者の質が低かったために生じた施工不良と、責任転嫁の姿勢とのこと。しかも、メインダムから放水する時点で、SK 建設のスタッフ 53 人は現場を放棄して帰国。それでいて、6 億ドルを越える事業費の一部が、世銀を通じた日本からの出資であるため、責任転嫁の矛先を日本に向ける論調もあるという。  GHQ が原爆投下の責任逃れのために、東京裁判で捏造した史観を悪用し、何かにつけ日本を敵視し、競争したがる韓国だが、ノーベル物理学賞をいくつも獲得した日本と、一つも受賞できない韓国との技術力の差は歴然としている。

 現実に、中央部が崩落したパラオの聖水大橋、一棟が傾き始めたシンガポールのマリーナベイサンズ、故障続きで廃棄されたウクライナ高速鉄道の車両、部品が作れずに完成の見込みが無くなったアラブ首長国の原発、完成して 2 日後に爆発・炎上したインドネシアの製鉄所、建設途中で傾いたマレーシアのペトロナスツインタワーと、韓国企業が世界中で無理な受注・施工により、引き起こしたトラブルや失態は枚挙にいとまがない。その中には、日本の建設会社が再建した聖水大橋や、日本企業への生半可な競争意識で、施工を急ぎすぎたために傾いたペトロナスツインタワーを、日本企業の提案で倒壊の危機から救われた事例もある。

 ちなみに、異常豪雨が連続した今夏は、我が国でもダムの緊急放水によって人命が失われたが、原因は決壊ではなく、警報発令が不十分だったことによる運用の問題であって、技術の欠陥に因るものではない。

 建設事業は多くの人命が関わる。このため、古代バビロニア王国の法典では、公共施設が崩壊した場合には、建設者が自費で修復し、人命が失われた場合は建設者が処刑され、その親族までも処罰が下る厳しい規定であった。競争意識を以て切磋琢磨するのは、文化・文明の発展には有益だが、未熟で中途半端な技術力を以て関わるのは、むしろ人類に不幸をもたらすだけであり、禁物である。




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