建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年6月号〉

【寄稿】

湯沢砂防事務所のとりくみ

―― 国土強靱化や地域経済の発展に資する砂防事業の推進

国土交通省 北陸地方整備局 湯沢砂防事務所


写真-1 流路工整備により発展した湯沢町の様子

1.はじめに

 湯沢砂防事務所では、信濃川水系魚野川及び清津川、中津川の3流域、新潟県魚沼地方及び長野県北部に跨がる約2200k㎡において直轄砂防事業を行っています。本事業は、昭和10年9月に魚沼地方を襲った大水害を契機に着手されたものであり、以後、流域内もしくは近傍で大きな災害が発生するたびに事業範囲を拡大しつつ、土砂災害から地域の人々や自然、文化を守り、魅力ある地域づくりを支援することを目的に事業を進めています。

2.管内の主要事業

○被災地域における再度災害防止対策

 平成23年7月新潟・福島豪雨により土砂災害が発生し、斜面崩壊や不安定土砂の堆積など流域が荒廃した地域(高棚川、登川、三国川など)において、砂防事業を集中的に推進することで、再度災害防止及び被災地の復旧支援を行っています。また、平成16年新潟県中越地震により、多くの斜面崩壊や地すべり等が発生し、土砂移動による災害発生リスクが高まった地域(芋川、相川川など)において砂防事業を引き続き計画的に実施することで、再度災害防止を図り、地域の安全性向上に努めています。

写真-2 被災地域における再度災害防止対策(高棚川第1号砂防堰堤)

○土石流や土砂洪水氾濫などの土砂災害に対する予防的対策

 管内には、土石流や土砂洪水氾濫による被害の発生が心配される流域が数多く存在しています。そのため、地域住民の生命と財産を保全することを目的とし、砂防堰堤や渓流保全工などの施設整備を推進しています。また、近年は土砂とともに流下する多くの流木が被害を拡大するケースが散見されることから、既存ストックを活用した流木対策を実施することにより、被害防止・軽減に努めています。

写真-3 土石流や土砂洪水氾濫などの土砂災害に対する予防的対策
(H23年新潟・福島豪雨時の流木捕捉状況 姥沢川第2号砂防堰堤)

○荒廃流域における土砂移動に伴った浸水被害の抑制

 主に中津川、清津川の源頭域には、苗場山、鳥甲山など火山が多く、火山噴出物が堆積した脆弱な地質構造を有するとともに、多くの崩壊地が点在する荒廃流域となっています。当該流域では、台風等に伴う出水のたびに著しい土砂移動現象が生じており、平成25年、平成27年および令和元年度においても、渓岸の侵食や地すべり性崩壊などの被害も発生しています。そのため、土砂流出に伴う侵食、浸水被害など下流域への影響、被害発生を未然に防止するため、砂防事業の計画的な推進を図っています。

○砂防施設の長寿命化対策

 管内には約300の砂防施設がありますが、一部の施設については設置から50年以上が経過し、老朽化による機能低下が懸念されています。そのため、施設の状況や機能を適切に把握したうえで、計画的、効果的な施設の機能確保対策に取り組んでいます。特に昭和初期に整備され、完成から約80年が経過している大源太川第1号砂防堰堤については、その文化的価値や景観形成など地域の観光拠点としての役割に配慮しつつ、現存する施設を極力保存しながら改築工事を行っています。

写真-4 砂防施設の長寿命化対策
(大源太川第1号砂防堰堤改築)

○大規模土砂災害への備え強化

 近年、全国において、天然ダムの形成など大規模な土砂災害が発生していますが、これらの災害対応においては、国・県・市・地域住民が連携し、迅速かつ円滑に対処することで被害を最小化することが重要です。そのため、関係機関と協力し「大規模土砂災害を想定した合同防災訓練」などのソフト対策に取り組むことで、危機管理能力の向上を図っています。
 去る1月15日に、湯沢町、新潟県、北陸地方整備局、湯沢砂防事務所で合同訓練を実施し、住民への情報提供や参加機関以外との連携など課題を抽出することが出来ました。

写真-5 大規模土砂災害への備え強化
(大規模土砂災害を想定した合同防災訓練 湯沢町)

3.おわりに

 湯沢砂防事務所の管内には、上信越高原国立公園、越後三山只見国定公園など四季の変化に富んだ豊かな自然があふれています。また、上越新幹線や関越自動車道を利用すれば、首都圏から2時間圏内にあるこの地域は、スキー場や温泉をはじめとした魅力溢れる観光資源を数多く有する日本有数のリゾート地域であるとともに、世界的にも認知度の高い「魚沼コシヒカリ」や多くの銘酒が生産されるなど、地域の重要な生産拠点となっています。
 一方で、昨年度は西日本豪雨や北海道胆振東部地震を中心に平年の3倍の件数を超える土砂災害が発生、今年度も台風19号を中心に平年の2倍を超える土砂災害が発生、全国各地で甚大な被害が発生しました。これらの災害を受け、国土強靱化3カ年緊急対策を実施中であり、今後、管内地域における国土強靱化対策を着実に実施することで、土砂災害から地域を守り、安全・安心を通じた魅力ある地域づくりや地域の活性化を支援していきたいと思います。


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