建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年5月号〉

【寄稿】

大和川河川事務所の事業概要

 国土交通省 近畿地方整備局
 大和川河川事務所長
白波瀬 卓也


大和川流域

1.はじめに

 大和川は、奈良県の笠置山地を源流とし、亀の瀬狭窄部を通って大阪府に入り大阪湾に注ぐ幹川流路延長68km、流域面積1,070km2の一級河川です。流域は奈良県、大阪府の両府県にまたがり、大阪市、堺市、奈良市などの主要都市を有しています。
 大和川河川事務所は、大和川、石川、曽我川、佐保川の計48.3kmを管理しています。
 現在、戦後最大となる昭和57年8月洪水と同規模の洪水が発生しても、洪水はん濫による浸水被害を防止すること等を目標に、上下流及び本支川のバランスを確保しつつ段階的かつ着実に河川の整備を進めています。

2.大和川遊水地事業

 亀の瀬狭窄部をはさんで上流側の奈良県域においては、大和川遊水地事業を進めています。大和川本川沿いに総洪水調節容量が概ね100万m3の遊水地を整備することで、ピーク流量の低減を行うものです。  遊水地は、奈良県川西町、安堵町、斑鳩町の3町にまたがり、保田地区、窪田地区、唐院地区、目安地区、三代川地区の5地区で整備する予定です。
 奈良県においては、今後5年間で内水はん濫による床上、床下浸水被害の解消等を目指す奈良県平成緊急内水対策事業が推進されています。当遊水地についても、保田地区、窪田地区の整備を先行して進め、この事業とあわせて総合的な効果が発揮できるよう、事業を推進してまいります。

3.高規格堤防事業

 亀の瀬狭窄部を挟んで下流側の大阪府域においては、高規格堤防事業を進めています。高規格堤防は、人口が集中した地域で、堤防が決壊すると甚大な人的被害が発生する可能性が高い区間を対象に整備することとしています。
 現在は、大和川左岸の堺市側において、阪神高速大和川線、堺市まちづくり事業と一体的に、事業延長3.1kmの整備を実施しています。今後も、関係機関との連携のもと、事業を推進してまいります。

大和川高規格堤防事業(大阪府堺市)

4.亀の瀬地すべり対策

 亀の瀬地区においては、昭和7年に地すべりによって大和川本川の河床が9m以上隆起する河道閉塞が発生し、上流側で甚大な浸水被害が発生しました。その後、地すべり防止工事を実施し、平成22年度に完了したところですが、対策区域外の稲葉山地区に局所的変位が確認されたため、平成29年度から稲葉山地区対策事業に着手しました。
 対策としては、排土工による滑動力の低減と、鋼管杭工による地すべりの抑止を行うこととしています。

亀の瀬地すべり 稲葉山地区排土工事(大阪府柏原市)

5.防災・減災国土強靱化のための3ヶ年緊急対策

 近年の災害の頻発、激甚化をうけ、国民の生命を守り、国民経済・生活を支える重要インフラが、あらゆる災害に際して、その機能を発揮できるよう、緊急点検が実施され、特に緊急に実施すべきハード・ソフト対策について平成30年から令和2年の3年間集中で実施することとなりました。
 大和川においては、藤井地区をはじめとする河道掘削や樹木伐採、危機管理型ハード対策としての堤防のり尻補強などを実施しています。

6.おわりに

 かつては日本で最も汚かった大和川の水質も着実に改善し、10年前には既にアユの遡上も見られるまでになっています。これは、下水道整備はもとより、流域住民のみなさまの取り組み等による結果と言えます。今後も、地域と連携しながら、河川環境の維持・向上を図るとともに、河川の整備を推進し、地域の安全・安心確保を図ってまいります。

藤井地区河道掘削工事(奈良県三郷町)


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