建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年5月号〉

【寄稿】

国道106 号の最大難所(区界峠)の解消を目指す区界道路(区界〜簗川)

 国土交通省 東北地方整備局
 岩手河川国道事務所長
佐近 裕之

事業実施区域


 宮古盛岡横断道路は、宮古市から盛岡市に至る延長約66kmの地域高規格道路です。東日本大震災で被災した沿岸部と内陸部との強力な連携を推進することによる被災地の早期復興支援や、平常時も含めた緊急輸送圏域の拡大等による安全・安心を確保するため、「復興支援道路」として、国道106号の隘路箇所を解消し、速達性の向上を図るべく、整備を進めています。
 宮古盛岡横断道路の一部として当事務所が整備を進める「区界道路」は、宮古市区界〜盛岡市簗川を結ぶ延長8kmの自動車専用道路であり、平成23年度に事業化されました。現在、土工工事、橋梁工事、舗装工事、設備工事を進めており、令和2年内の開通を目指しています。

区界地区の急カーブ状況

■(仮称)新区界トンネルについて

 「区界道路」に並行する国道106号の区界峠は、急峻な山間地を通過するためカーブや縦断勾配がきつく、冬季は積雪量も多いため、事故の危険性が高い区間となっています。
 この最大の難所と言われる区界峠を貫くのが(仮称)新区界トンネルです。新区界トンネルは避難坑を併設する延長約5km、掘削断面積110m2を超える長大トンネルであり、完成すると東北地方で3番目、岩手県内で最長の道路トンネルとなります。
 新区界トンネルは、平成27年2月に掘削を開始し、宮古側と盛岡側の両坑口から最大4つの切羽を立て急速施工に取り組んだ結果、掘削開始から2年9ヶ月後の平成29年11月に貫通しました。
 また、区界峠は冬季には−20℃程度まで冷え込む極寒地ということもあり、道路には大量の凍結防止剤が散布されます。その影響によりコンクリートの寿命が短くなる問題を解決するため、岩手大学、岩手県生コンクリート組合、鹿島建設技術研究所と共同で通常のコンクリートよりも空気量を多くした対凍害性コンクリートを開発し、凍結防止剤の影響を受けやすい両坑口100m区間の覆工コンクリートに採用しました。
 現在はトンネル内において、コンクリート舗装工事、各設備工事を促進しており、工事は年内開通に向けて最盛期となっています。

■区界道路を始めとする宮古盛岡横断道路の整備により期待される効果

・国道106号の難所の解消と冬期交通の安全性が向上し、安全・安心な住民生活を支援します。
・国道106号沿線地域では、ほぼ全て盛岡市内の医療施設へ搬送されていることから、搬送時間の短縮や搬送時の患者負担が軽減し、迅速かつ安定的な救急搬送を支援します。
・宮古市〜盛岡市の所要時間が約30分の短縮(うち区界道路としては約9分の短縮)が図られることにより、物流の効率化が実現し、地域産業の活性化を支援します。観光面では、沿岸地域のジオパーク、復興国立公園や、内陸部の八幡平、石割(いしわり)桜(ざくら)など魅力的な観光資源が豊富にあり、復興支援道路の整備により、新たな広域観光周遊ルートが形成され観光振興が期待されます。

■最後に

 被災地の早期復興のため、関係機関並びに地域の皆様と一丸になって、区界道路の令和2年内開通を目指し事業を推進してまいります。引き続き皆様のご支援、ご協力を賜りますようお願いします。

新区界トンネル(連続鉄筋コンクリート舗装の施工状況)
新区界トンネル(宮古側坑口)
区界道路終点側(盛岡市簗川地区)


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