建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年4月号〉

【寄稿】

新丸山ダム転流工事を通して交流を図る

 前田建設工業株式会社 中部支店

新丸山ダム転流工作業所  天野 暢之

図-1 工事位置図
写真-1 工事箇所上空写真

1.はじめに

 木曽川は長野県木曽郡木祖村鉢盛山(標高2,446m)を源に、長野・岐阜・愛知・三重の4県を通り、いくつかの支川を集めて、伊勢湾に注ぐ流域5,275km2、幹線流路延長229kmの大河川である。その中で丸山ダムは、木曽川の河口より約90km上流にあり、木曽川の流域面積の約半分を占めており、濃尾平野の扇の要に位置している。
 新丸山ダム建設事業は丸山ダムを20mの嵩上げと5180万m3の総貯水容量を増強し、洪水調節容量・流水の正常な機能の維持、発電能力などを高める再開発事業である。その中で新丸山ダム転流工事は既丸山ダム左岸側に洪水を迂回させるトンネルと仮排水路を構築するものである。

2.工事概要と特徴

 新丸山ダム転流工事は@呑口部(L=80m)A吐口部(L=438m)Bトンネル部(L=80m)から構成される。その内呑口部については既丸山ダムの常位満水位より20m低部に仮排水路敷を構築する工事である、この工事の中でも難易度の高い箇所と考えられる。以下それぞれの工事箇所の特徴を下記@〜Bに記述する。

@呑口部

 転流工の内、ゲートを有する坑門工を構築する箇所であり、着手前は中央部に沢のある山岳地形であった。先述の通り、坑門工の最下部は既ダム水位より20m低部となるため、施工には仮締切が必要となる。現在坑門工構築ヤードの造成するため法面段差7段、土工量6.0万m3掘削工事を完成しており、ICT土工にて実施した。今後は仮締切の施工を実施していく予定である。

A吐口部

 仮排水路と木曽川が合流する箇所であり、後述のトンネル掘削の坑口となる場所である。着手前は呑口部同様に山岳地形で、トンネル掘削に必要な坑口ヤード及びヤードへの進入路造成を実施した。その土工量は4.5万m3であり、進入路は木曽川左岸側に位置するため、一部補強土壁方式とした。今後は坑内への出入りにしばらく利用し完了後は木曽川との接続部となる減勢工の構築を予定している。

Bトンネル部

 転流工事の主工事となるトンネルは幅10m、高さ8mで側壁直型馬蹄形である。このトンネルの最大の特徴は縦断勾配が11%と急勾配であることと、呑口部は坑門工となるため現丸山ダム貯水池内となることである。よって掘削については掘進方向に貫通せず、トンネル天頂部と呑口部ヤードを直径3.4mの大口径ボーリングにて貫通させた。今後はこのボーリング孔を利用して、呑口部坑門工掘削にて発生する残土をトンネル部から搬出し、坑門工接続部であるトンネル拡幅部と底版コンクリートを施工する予定である。

図- 2 工事箇所平面図

3.転流工事の現場見学会について

 このように様々な特徴のある転流工事は、@公共事業の目的とその効果A建設産業の社会的な役割B建設業の魅力発信C見学者とのコミュニケーション等を目的として現場見学会を実施している。
 転流工事の現場見学会は、各事業団体、小学生〜大学生の学児童及び地元住民の方々と多種多様な方々が来現され、ダム事業の目的や効果について解説をするとともに、建設業の理解を深めて頂くため、現場内への案内や作業体験も実施している。
 見学会では現場案内や作業体験を企画し、トンネル部施工箇所への地元住民現場案内(写真−2)、小学生の掘りたてトンネル探検体験(写真−3)、建設作業の一部である鉄筋組立体験、呑口部ICT施工にて使用したドローンによる空撮体験(写真−4)等、現場作業に直結する内容とした。
 これらの見学会についてはいずれも好評が得られ、普段は関わりの少ない建設現場を生で見られて楽しかったとの声が多数寄せられるとともに、現場従事者についても見学者との交流を図ることにより、「社会的役割を確認させられた」との意見があった。
 このように現場内で生の現場作業に触れ合って頂くことで、過去の揶揄された3Kを脱却し建設産業のイメージアップ向上に寄与できたのでは考えている。

4.おわりに

 新設のダム転流工事とは異なり既設ダムを運用しながら工事を進捗して行かなければならない。その中でも呑口部は巨大な水圧に耐える仮設備の施工を予定しており、難易度の高い工事であると予想される。
 今後もこれらの工事内容を、現場見学会を通して安全・清潔といった現場作業環境及び最新の建設技術や工事箇所周辺環境への配慮を紹介することで、ダム事業への理解を深めて頂くとともに建設産業の魅力度向上に努めていき、建設産業の未来に貢献していきたい。

写真-2 トンネル現場案内
写真-3 トンネル探検体験
写真-4 ICT ドローン体験


HOME