建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年4月号〉

【寄稿】

富士砂防事務所工事安全協議会の活動について

 国土交通省 中部地方整備局

新丸山ダム工事事務所

位置図

1.はじめに

ダム側面図
貯水池容量配分図

 木曽川は鉢盛山(標高2,447m)に源を発し、長野、岐阜、愛知、三重県の4県を流下して伊勢湾に注ぐ幹川流路延長229kmの我が国でも有数の大河川である。流域及び洪水氾濫区域内の市町村には、約232万人(20市13町4村)の人々が生活しており、この地域の産業・経済・社会・文化の発展の基盤を築いてきた。また、流域内は東西を結ぶ、国土の基幹をなす交通の要衝となっている。下流域は我が国最大規模の海抜ゼロメートル地帯となっており、堤防が洪水等により決壊氾濫すれば、極めて甚大な被害が発生すると想定される。
 木曽川の中流部、河口から約90km地点に位置する丸山ダムは、戦後の電力不足と頻発する洪水に対応するため、発電と洪水調節を目的として建設が進められ、昭和31年に完成した。
 丸山ダム建設後、木曽川では大きな洪水は発生していなかったが、昭和58年9月に台風10号と秋雨前線により戦後最大規模となる洪水が発生し、岐阜県美濃加茂市などで約4,600戸が浸水するなど、甚大な被害が発生した。
 新丸山ダム建設事業は、昭和58年9月と同規模の洪水が発生した場合でも安全に流下させることなどを目標に、既存の丸山ダムの嵩上げによる機能アップを図ることとして整備を進めている。

2.事業概要

 新丸山ダム建設事業は昭和61年に洪水調節、流水の正常な機能の維持、発電の3つの目的を有した多目的ダムとして建設に着手した。
 既設丸山ダムの下流47.5mの位置に、20.2m嵩上げして洪水調節等の機能アップを図るダム再生事業である。洪水調節容量7,200万m3は丸山ダムの約3.6倍の量を確保するものである。また、新たに確保する不特定容量1,500万m3により、渇水時にも河川環境の保全等のために必要な流量の一部を確保できることとなる。

3.事業進捗状況と工事の特徴

 新丸山ダム建設事業は、平成4年から用地買収に着手し平成14年までに水没等家屋全49戸の移転を終えている。現在、水没する国道・県道の付替道路は約70%、工事用道路は約90%の進捗状況となっている。
 平成28年9月からはダム本体工事の前段となる転流工工事に着手し平成31年1月にはトンネル部が貫通した。付替道路では、付替国道418号の工事の進捗を図るとともに、付替県道大西瑞浪線の用地取得や設計を進めている。令和2年1月には完成した新管理所への移転も終えた。また、平常時の水位が上昇することから、現在、関西電力(株)により、取水口や水路等の改築工事が進められている。
 このように、新丸山ダム本体着工に向けた事業の進捗を図っているところであるが、木曽川のような大河川で、既設丸山ダムの機能を維持しながら大規模なダムの嵩上げを行う工事は、設計や施工方法など技術的に先駆的なダム建設となる。

4.おわりに

 これまで丸山ダムが果たした役割を受け継ぐとともに、今後のダム再生事業に資する技術開発を担いつつ、流域の安全・安心の確保のため早期の本体着工を目指し、無事故・無災害で1日でも早く新ダムの竣工が迎えられるように当事務所としても努力してまいりたい。

新丸山ダム完成イメージ

ダム周辺の状況(令和2 年2 月21 日撮影)

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