建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年3月号〉

【寄稿】

「石垣港新港地区旅客船ターミナル整備事業」で7万トン級から将来は20万トン級クルーズ船に対応

―― 世界のセレブに恥じない港湾整備を

 沖縄総合事務局
 石垣港湾事務所長
知念 正吉


H30.4月撮影


 私たち石垣港湾事務所は、石垣港の整備、竹富南航路の開発・保全を行なっており、現在は、竹富南航路の延伸事業と大型国際旅客船ターミナルの整備を進めています。
 竹富南航路は、沖縄県最南端にある八重山諸島の石垣島南西に位置するサンゴ礁海域の狭水路で、石垣島から各周辺離島に通ずる生活のための航路として古くから利用されてきました。
 航路整備前は、水深−0.6m、幅20mしかないサンゴ礁の割れ目であり、利用は満潮時に限定されるなど大きな制約により、大半は遠距離となる迂回路を利用する状況でした。
 しかし、1972年5月の沖縄本土復帰後は、年々大幅に増加する旅客及び貨物に対処することや、定期船の定時性及び水路での安全航行を確保し、離島住民の民生安定に資することが求められ国の竹富南航路整備が行われ全長約45kmの内、約2.5kmの航路が昭和56年に供用されました。

竹富南航路(黄色部分が当初供用箇所、赤色部分が整備中の拡大箇所)


 その後、残った部分についても船舶航行の安全度向上等を図るため2011年7月に開発保全航路の指定区域を拡大し、現在は可能な限りサンゴの移植を行うなど環境へ配慮しながら整備を進めています。
 一方、近年の石垣港は、クルーズ船の寄港が増加しており、2019年の寄港回数は148回(速報値)と過去最多を更新し、全国では5番目(速報値)を記録しました。2020年には更なる寄港回数の増加が見込まれており、200回を超える寄港を予定しています。
 クルーズ専用岸壁が未整備の頃は、寄港するクルーズ船は、貨物専用岸壁での受け入れを余儀なくされており、クルーズ船は他の貨物船と調整しながら施設を利用することから寄港可能日が限られ、さらには、貨物と旅客の輻轄が生じ、荷役作業の効率性も旅客の安全性も、ともに確保されておらず、港の観光玄関口としてはふさわしくない状況でした。
 また、7万トン級を超えるクルーズ船は接岸できないため、石垣港の沖に停泊し、テンダーボードに乗り換えて上陸せざるを得ず、乗客全員が上陸するまでには数時間を要するなどの課題も発生していました。これらの課題に対応するため、2005年に「石垣港新港地区旅客船ターミナル整備事業」に着手することとなりました。
 当初は7万トン級クルーズ船を対象船舶としましたが、近年のクルーズ船の大型化を踏まえて、2017年には世界最大級の20万トン級クルーズ船まで対応できるよう、岸壁延長を340mから420mへ、岸壁及び泊地等の水深を9mから10.5mへ計画変更し、整備を進めているところです。

暫定供用中のクルーズ専用岸壁(2隻同時入港時の様子、手前はスーパースタージェミナイ5万トン級、
奥はワールドドリーム15万トン級)


 この事業の整の進捗に伴う暫定供用により、当面は7万トン級までのクルーズ船がクルーズ専用岸壁に着岸可能となります。その結果、これまで課題となっていた貨物船との利用調整が解消され、より多くのクルーズ船の受入れが可能となります。
 また、貨物と旅客の輻輳についても解消され、荷役作業の効率性と旅客の安全性が確保されます。
 そして、クルーズ客の買物・ツアー代等1人当たりの観光消費額は13,767円/人で、これをベースに2017年1月〜12月迄の経済効果 は約49億円となりました。
 本事業は、今後とも引き続き早期完成を目指し、事業を促進させます。岸壁・泊地の完成により、これまで7万トン級を超えるクルーズ船の沖泊及び乗客のテンダーボートでの上陸という手間が解消され、所要時間が短縮されるとともに、世界最大級の20万トン級の大型クルーズ船までの着岸が可能になります。
 今後もアジアのクルーズ需要は、大幅に増加する見込みであることから、本岸壁に引き続き、2バース目のクルーズ専用岸壁の整備が計画されています。


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