建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年2月号〉

【寄稿】

生産性向上だけではない デジタル技術は工夫次第

―― 安全に楽しく仕事をする工夫



 湯澤工業株式会社
 常務取締役
湯沢 信

1.はじめに

 当社は山梨県南アルプス市で建設業に加え、産業廃棄物の中間処理業及び木質バイオマス事業を行っており、従業員数60名の中小企業です。土木工事においては技術職員15名技能労働者30名程度で特殊工事を除き極力自社で一貫した施工が出来るような会社を目指しております。それは、地方の建設業者は公共工事などのインフラを整備するとともに災害時にはいち早く復旧作業に参加して地元貢献ができる企業を目指しているからです。

2.ICT測機・ICT建機の導入

 当社においても技能労働者の高齢化、若手社員の確保の難しさに直面し働き方改革は緊急課題となっております。当社はバックホウ、ブルドーザ等の重建設機械を35台程保有していることからICT施工においても建設機械メーカーやコンサルティング会社に外注するのではなくビジネスパートナーとして支援を受け測量・施工・出来形管理まで一貫して自社施工が出来る体制を目的として導入しました。

MC建機と自作MG機器

3.当社の施工事例

@レーザースキャナーを使用した施工管理

 当社は南アルプスの麓に位置しているため山間部の工事が多く急峻な法面や高所での測量、出来形測定時の安全確保は最重要課題です。そこでレーザースキャナーによる測量を行い3次元点群データを作成しメッシュ法で解析、数量算出を行いました。レーザースキャナーでの測量は1,000m2程度の法面測量において通常の親綱による測量では8人工程度かかるがレーザースキャナーを使用すると2人工で計測する事ができ、解析作業も通常の半分以下の時間で行う事が出来ました。法面での崩落・転落などの事故防止もできることから非常に有効な手段と考えられます。

AICT土工

 現在ICT土工の施工は砂防工事、河川工事の2件で実績があり、砂防工事においては仮締切工の施工をマシンコントロール、砂防CSGの施工をマシンガイダンスで行いました。マシンコントロールでの盛土工は熟練した技能者と同じような出来栄えを確保する事が出来、砂防CSG工法ではガイダンスのモニター画面の表示により施工するため丁張の設置が不要となりました。
 河川工事ではレーザースキャナーによる測量、三次元データの作成、マシンコントロールによる掘削・法面整形、マシンコントロール付ブルドーザによる出来形管理を行っています。(現在施工中)
 2件の施工結果より、UAV、レーザースキャナーの測量、三次元データの作成等は測量・解析に要する時間が短縮できるとともに測量時の危険源が減少して事故を防止する事が出来ます。ICT建機による土工は機械と作業員が混在する作業が無くなるため事故防止が図れ、出来形、出来栄え共に通常の作業以上の結果が得られました。
 また、三次元設計データの測量・作成においては従来の測量に比べ作業が簡単で楽になり、作成データは完成をイメージしやすく作業員に伝えやすくなります。しかし、データ入力ミスによる間違った設計データによる不適合構造物が出来てしまったり、通信技術に頼りすぎ技術者の技量・知識不足が懸念されます。
 施工実績が少ないこともありますが、施工能力の点ではまだICT施工が熟練技能者による施工を上回ることが出来ませんでした。また、通常土工事は掘削・運搬・敷均し(盛土)と複合作業となっており熟練技能者技術(匠の力)、総合的なプロデュースとの融合によりより効率的で安全な作業が期待できると思います。

MC建機で作成した文字「I LOVE 土木(アイ ラブ ドボク)」

4.おわりに

 ICT施工は一般的に大型工事や大企業に有効な手段と思われがちですが、中小企業や中、小規模工事においても安全性の確保、工程の短縮、若手技術者の確保などに有効であると思います。当社においても若手の確保にとどまらず建設業界のイメージアップや生産性の向上を図り楽しみながら働けるダイバーシティーな建設会社を目指して様々な取り組みを続けてまいります。


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