建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年1月号〉

【寄稿】

地域との融和を重視したダムサイト事業の推進

 設楽ダム転流工ダムサイト安全協議会幹事
 飛島建設株式会社
原田 進


ダムサイト上流側


 設楽ダムは、豊川河口から約70q上流の愛知県北設楽郡設楽町に位置し、洪水被害の低減や河川環境の保全、新規利水を目的として建設される重力式ダムである。ダム本体建設に先立ち、現在転流工やダム本体施工のアプローチとなる工事用道路やダム湖面を跨ぐ瀬戸設楽線5号橋の下部工事がダムサイト周辺で進められている。
 これら工事個所に沿って通る町道は1968年に廃線となった豊橋鉄道田口線の跡に設けられており、奥三河地区の散策コースとして人気が高く、また工事周辺に沿って流れる豊川水系寒狭川は鮎漁で賑わう。
 町道を利用する一般車両や通行人、現場を訪れる見学者の安全確保と、汚濁水処理など河川環境の保全、さらに施工者間においては道路幅員約3m程度と狭い箇所での近接作業、資機材の搬出入など、工事が安全でかつ円滑に進むよう、発注者である国土交通省設楽ダム工事事務所ご指導のもと、設楽ダムダムサイト協議会を現在ダムサイトで工事を進めている5社で組織している。
 設楽ダム転流工はこれらの工事の最下流に位置し、転流工トンネルとこれに接続する上下流の水路を施工している。トンネルは延長422m、NATM発破工法で掘削。断面積が40m2と一般的な道路トンネルと比べて半分程度のため、坑内スペースの制約から適用できる汎用機種が少なく、掘削やずり出しなどの使用機械選定と組み合わせには苦労したとともに、台風や集中豪雨による寒狭川の氾濫の影響で度々の工事中断があったが、今年の3月にトンネルを貫通させた。転流工工事は現在トンネルの上下流に接続する水路構造物などを施工しているが、2020年2月の竣工に向け、工事は最終段階に入っている。
 工事場所周辺は奥三河地区の散策コースとして人気が高いが、散策に合せて転流工工事の現場を見学するツアーなども企画され、地域住民の他多くの一般見学者を受け入れた。
 現在も日々風景が変化していくダムサイト周辺の現場見学希望者は多く、ダムサイト協議会としても積極的に受け入れ、工事に対しての理解を深めて貰いたいと考えている。
 どのような工事でも安全確保や環境保全はもちろんであるが、地元の方々との融和がとても大切になる。これからもコミュニケーションを取りながら、ご理解とご協力を得てダム本体が早期に着手できるよう協議会間で連絡を取合って工事を進めていきたい。

写真-6 設楽ダム完成予想図


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