建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年1月号〉

【寄稿】

クルーズと物流の拠点として飛躍する金沢港のいま



 国土交通省 北陸地方整備局
 金沢港湾・空港整備事務所 副所長
関口 忠志

金沢港全景

1.はじめに

 金沢港湾・空港整備事務所は石川県内の港湾・空港の整備を所管し、重要港湾としての金沢港・七尾港、避難港としての輪島港、そして小松空港の整備を進めています。
 このうち金沢港は、昭和45年に開港した比較的新しい港ですが、昔から海上交通の要所として利用された歴史があり、評価の高い石川県のモノづくり産業を支える重要な港です。また、平成27年3月の北陸新幹線金沢開業も追い風に、クルーズ船の寄港も大幅に増加しており、物流と観光の両面で、その重要性は飛躍的に高まっています。現在、金沢港では港湾施設の老朽化対策に併せて、増加する大型クルーズ船の受け入れ拠点と災害時の緊急物資の輸送拠点としての機能を確保するための岸壁の再整備事業を進めています。

寄港が増大するクルーズ船

2.金沢港の沿革

 金沢港は、日本海沿岸の中央部に位置し、江戸時代加賀百万石の城下町として栄えた金沢市街地を貫流して日本海にそそぐ大野川、犀川の2つの河口を包含した掘込港湾です。
 大野川河口の大野地区は古くから栄えた港泊地で、遠く奈良時代から大陸との往来があったそうです。江戸時代には北前船がこの地を本拠地として活躍し、いわゆる御手船、廻米船の名で江戸、大坂に往来していました。このころ、豪商銭屋五兵衛が、宮腰(金石地区)を拠点として、関西、東北、北海道の諸国との間に、米、雑貨の移出、材木、海産物の移入を主とした海運を活発に行い、広く海外とも交易し、商船も入港して繁栄していたそうです。
 金沢港建設の契機となったのは、昭和38年1月の豪雪(いわゆるサンパチ豪雪)です。
 陸上輸送路が途絶した教訓から海上輸送が見直され、各界からの金沢港の整備に対する要請が高まりました。
 翌年の昭和39年には重要港湾に指定され、石油岸壁4バース(5千トン船舶の入港能力)が整備され、併せて関税法による開港指定、検疫法における検疫港指定、植物防疫法による輸入木材指定港を受け、昭和45年11月に開港し今日に至っています。
 また、物流機能の効率化を図り地域産業の国際競争力等を支援するため、平成18年度より大浜地区において船舶の大型化に対応した水深-13mの国際物流ターミナル整備事業に着手し、平成20年11月に暫定水深-12mでの供用を開始し、現在も引き続き水深-13mを目指し浚渫工事を進めています。

3.クルーズ船寄港状況

金沢港のクルーズ船寄港状況

 金沢港における平成31年のクルーズ船の寄港は、8万トンを超える大型クルーズ船が11本と過去最高となるなど、51本が寄港しており、7年前と比較すると約8倍に増加しています。さらに、金沢港発着のクルーズ数が多いのが特徴となっています。
 この理由としては、加賀百万石の歴史と文化にあふれる金沢市の中心市街地まで約5kmと比較的近い利便性や、市内の兼六園のみならず、日本有数の加賀温泉郷、世界農業遺産の能登の里山里海など世界的に評価の高い観光地が集積している魅力に加えて、平成27年3月の北陸新幹線金沢開業により「レールアンドクルーズ」が可能となり、首都圏からの利用の促進など、様々な点が評価されているものと考えています。
 さらに近年では、アジアのクルーズ需要を見込んだ海外の大型クルーズ船社による市場開拓が進んでおり、今後も大型クルーズ船の需要が見込まれています。

4.金沢港の整備状況

 こうした金沢港を取り巻く環境の変化をふまえ、当事務所では無量寺岸壁の老朽化対策に併せて、増加する大型クルーズ船の受け入れ拠点と、災害時の緊急物資の輸送拠点としての機能を確保するための無量寺岸壁再整備事業を行っており、また、石川県においては「金沢港クルーズターミナル」の整備をはじめ、ふ頭に点在する上屋の移転・集約や、臨港道路、駐車場、緑地の整備など、金沢港の機能強化を図るための「金沢港機能強化整備計画」を策定、着手し、現在、2020年春の供用に向けて整備を進めています。

無量寺岸壁再整備事業

5.おわりに

 金沢港は、建設当時の燃料を中心とした生活物資や木材基地としての役割から、建設機械や産業機械などモノづくり産業の発展を支える港としての役割に加え、クルーズ船の寄港で観光を支える役割を担うようになり、まさに地域経済の発展を支える基盤としてその重要性はますます高まっています。2020年は金沢港開港50周年という大きな節目の年となります。
 今後とも、金沢港が日本海側の拠点港として飛躍できるよう、また、新たな歴史を刻んでいくに相応しい港となるよう、整備を進めてまいります。


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