建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2020年1月号〉

【寄稿】

信濃川の治水安全度を高めるために

(建設グラフ2018年5月号続報)

 国土交通省 北陸地方整備局
 信濃川河川事務所 所長
室永 武司


図2 観測史上最高水位17.06m を観測

1.はじめに

 信濃川中流域では、優先的に整備する事業として大河津分水路の改修を平成27年(〜令和14年完了予定)から進めているところです。 (流域概要などの詳細は、建設グラフ2018 年5月号参照願います。)

写真1 平常時 大河津分水路 2019/10/12 15:02    写真2 出水時 大河津分水路 2019/10/13 15:12
 
写真3 出水時 野積橋付近 2019/10/13 14:15

2.台風19号の洪水では計画高水位を超えた

 先の10月12〜13日の台風19号では、当事務所の小千谷及び大河津の両水位観測所において計画高水位を大きく上回る大きな洪水となりました。そのようななかで関係機関との連携により早期避難や水防活動などにより、浸水被害が発生したものの堤防決壊という大惨事には至らず安堵したところです。
 この洪水により、現在着手している大河津分水路の早期改修により水位低下を図る必要性が一層高まったところです。

3.大河津分水路改修事業  令和元年より新第二床固工事が本格化

写真4 大河津分水路河口付近の状況(2019/10/31 撮影)

 2018(平成30)までに、用地取得や調査・設計、山地部掘削で発生する土砂を運ぶ工事用道路の整備を概ね完了させ、山地部掘削工事、野積橋架替工事に着手したところです。
 その後、事業着手から5年目の本年は、昨年度契約した第二床固の改築工事に本格的に着手し、今秋以降からいよいよ本体のケーソンがその姿を現しました。
 また当事務所は、i-Constructionの取り組みをリードする全国10事務所の一つに指定され、当事業では、調査・設計から維持管理までBIM/CIMを活用しつつ、3次元データの活用やICT等の新技術の導入を加速化させる「3次元情報活用モデル事業」となっています。具体的には、第二床固改築工事や山地部掘削工事において施工ステップごとに、構造物や掘削形状等を3次元でモデル化した「統合モデル」により可視化することで、発注者・施工業者・設計コンサルタントの間で、よりスムーズに施工段階の確認・協議が可能となり、効率化と円滑化を実現しています。

写真5 鋼殻ケーソン泊地係留状況 2019/11/9

4.地域活性化とインフラツ−リズムの取り組み

 一方、山地部掘削では約1,000万立方メートルの土砂が発生することから、河川堤防の拡幅など河川管理者自らの利用のほかに、「大河津分水が“ひらく”地域活性化プロジェクト」として、防災、産業、交通、観光など、大河津分水路周辺地域の各分野のプロジェクトと連携を図り、掘削土砂の有効活用を実施しているところです。
 具体的には、自治体等が行う工業団地の造成やほ場整備事業での活用などを進めており、今後も関係機関と連携して、地域活性化につながる取り組みを進めていく予定です。
 もう一つは、全国的にも規模の大きい事業で起重機船など普段目にすることのない建設機械や工法を用いることから、これら地域の観光資源の一部としての利活用を検討しているところです。現場周辺にある大河津分水の歴史や役割を展示する「信濃川大河津資料館」や、工事過程のVR(バーチャルリアリティor仮想現実)などの最新技術を駆使した工事情報を発信する「にとこ工事みえーる館」(令和2年春リニューアル予定)と周辺観光施設をパッケージ化するなど、今後も、県内外を問わず多くの方々に訪れていただけるよう、積極的に情報を発信し続けていく予定です。

図3 CIM・BIM 活用及び共有化
図4 にとこ工事みえ〜る館(現在と新館計画)、来客者の推移


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