建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年12月号〉

【寄稿】

紀伊半島の命を守り地域活性化に貢献するすさみ串本道路

 国土交通省 近畿地方整備局
 紀南河川国道事務所
堤 英彰

サンゴ台地区(串本)

【全景】サンゴ台地区(串本IC)

 紀南河川国道事務所では、河川事業は熊野川、道路事業は一般国道42号及び近畿自動車道紀勢線(以後、「紀勢線」という。)の整備を中心に、地域と一体となって和歌山県南部地域を快適にする川・道づくりを進めています。
 特に紀勢線は大阪府松原市を起点に三重県多気郡多気町に至る延長約340kmの国土開発幹線自動車道で、紀伊半島の各都市と国土軸を結び、輸送時間の短縮や一般国道42号の混雑緩和を図り、地域相互の産業、経済、文化、観光の振興と発展に資することを目的とする道路です。平成27年度に田辺〜すさみ間の延長39.4kmを供用しました。
 一方、一般国道42 号は紀伊半島を結ぶ主要幹線道路であり、紀勢線と連携して観光、物流、救急医療面等で紀伊半島の交通ネットワークの中枢として利用されています。

高富地区(高富西地区東改良)

【近接】高富地区(高富西地区東改良工事)

 しかし、すさみ町から串本町までの唯一の幹線道路である一般国道42号には、急カーブなど線形の厳しい箇所や、大雨によるのり面崩落、台風による越波などにより被災するリスクの高い箇所が多数あります(この区間では平成21年度から平成30年度の過去10年間で延べ24回、約102時間の規制を行っています)。さらに、南海トラフ巨大地震の発生時には、津波の襲来により最大約6割の区間が浸水し、通行不能となることが予測されています。
 そのため、一般国道42号のすさみ町から串本町間における異常気象時通行規制区間の解消、災害時の代替路確保等を主な目的として、平成26年度にすさみ串本道路の事業化を行いました。 すさみ串本道路の開通により、線形の厳しい箇所や被災リスクの高い箇所を回避した通行が可能になります。また、南海トラフ巨大地震で予測される津波高を考慮した十分な高さで計画しており、大規模災害発生時における緊急輸送道路として救命救急や復旧活動等を支援します。
 医療面では、三次救急医療施設である南和歌山医療センターへの輸送時間が短縮されるとともに、救急搬送の定時制や走行安定性が確保され、串本町周辺住民の救急医療サービスの向上が期待されます。

和深地区(雨嶋トンネル)

【全景】和深地区(雨嶋トンネル工事)

また、串本町周辺には温泉、南紀熊野ジオパークなど、さまざまな観光地、景勝地が点在しています。すさみ串本道路の開通により、京阪神方面からの所要時間が短縮され、串本町へのアクセス性が向上することで、沿線地域の観光活性化が期待されます。
 すさみ串本道路は平成29年度から工事に着手しており、現在、改良、橋梁下部、トンネル等の工事を行っております。早期の完成を目指して工事を推進しているところです。
 すさみ串本道路以外のその他の事業として、一般国道42号では「田辺西バイパス」、直轄権限代行として一般国道169号では「奥瀞道路(V期)」を進めており、紀勢線では「新宮紀宝道路」(三重県紀宝町神内〜和歌山県新宮市あけぼの間)が平成25年度に、「串本太地道路」(和歌山県東牟婁郡那智勝浦町八尺鏡野(やたがの)〜和歌山県東牟婁郡串本町鬮野川(くじのがわ)間)が平成30年度に、「新宮道路」(和歌山県新宮市あけぼの〜和歌山県新宮市三輪崎間)が平成31年度に事業化され、紀伊半島を一周する高速道路ネットワーク全線が事業化されました。
 これら高速道路ネットワークが確保されることで、高度な医療施設への時間短縮、所要時間の短縮による観光、地域産業の活性化に貢献するほか、南海トラフ巨大地震発生時や台風等の豪雨による災害時には、迅速な救援活動や復旧活動を支援します。


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