建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年12月号〉

【寄稿】

北東北の骨格「日沿道」の整備と効果

―― 秋田県北の安全・安心・活力

 国土交通省 東北地方整備局
 能代河川国道事務所長
増 竜郎

図-1 日沿道の整備状況

1.はじめに

 令和元年10月の台風19号等による風水害でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますと共に、被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。我々国土交通省の全国各地の事務所は、災害、事故から地域を守り、道路、河川、ダム等のインフラの整備・管理を通じて、元気な地域づくりに寄与して参る所存です。
 能代河川国道事務所所管の秋田県北地域は、能代平野と大館、鷹巣、花輪の3つの盆地、4市4町1村の全9市町村から構成され、北西部に世界遺産の白神山地が広がり、東西を米代川が流れるなど自然豊かで伝統・文化が息づく地域です。
 当事務所の道路における管理延長は、国道7号が98.7km、秋田自動車道(自動車専用道路)が54.2kmの計152.9kmです。また、河川では、一級河川の米代川(延長75.6km)と平成23年に完成した森吉山ダムを管理しています。
 主要事業として、北東北の骨格としての高規格幹線道路「日本海沿岸日本海沿岸東北自動車道」(以下、日沿道)の整備を進めており、現在、二ツ井白神IC~大館能代空港ICにおいて、能代地区線形改良、二ツ井今泉道路、鷹巣西道路(秋田県施工)、大館能代空港ICの接続区間の事業に取り組んでいます(図-1)。

2.日沿道

(1)能代線形改良の進捗状況

 日本海側からの延伸として、二ツ井白神IC箇所では、交通の安全と円滑化の向上を図るための道路の線形改良が、平成27年度に事業化され、現在、改良工事と橋梁下部工工事を行っています。

(2)二ツ井今泉道路の進捗状況

 延長4.5kmの二ツ井今泉道路は、平成24年度に事業化され、現在、小繋トンネル(仮称)が本格的な掘削に入っているほか、契約済みの今泉第2トンネル(仮称)も来年度からの掘削に向けて準備作業中です。残る今泉第1トンネル(仮称)も契約手続に入り、3本のトンネルや大規模盛土を有する重要事業として、全面的に展開中です(図-2)。

図-2 小繋トンネル工事状況
(3)鷹巣西道路及び大館能代空港IC接続区間の進捗状況

 東北道からの更なる延伸として、秋田県が事業を進めている鷹巣西道路と、国が進めている大館能代空港ICの接続区間との、計7km区間は、令和2年度までの開通目標を宣言しており、遅滞なく且つ安全に工事を進めています。

3.日沿道の整備効果

 日沿道の開通時期公表や開通延伸に伴う効果の現れとして、沿線の大館市と北秋田市では、平成22年度から9年間で合わせて87工場が新増設し、新たに818名の雇用が創出されております(図-3、4)。
 この日沿道と、国道7号そして米代川の結節点に位置する「道の駅ふたつい」(能代市)は、昨年7月に、河川防災ステーション及びかわまちづくりと一体的にリニューアルされ、年間来場者が当初予想を大幅に上回る100万人を超えるなど、重要な拠点として効果を発揮してきております。日沿道延伸により更なる効果が期待されます。
 また、沿線の大館能代空港の利用者数は、平成21年以降9年連続で増加しており、広域観光ツアー企画数も増加傾向にあり、陸と空との交通ネットワークが繋がることにより、ビジネス及び観光への効果も生じています(図-5)。
 救急医療面では、搬送中の揺れや振動に細心の注意が必要とされる脳疾患と外傷の管外搬送について、隣接の病院から大館市立総合病院への搬送ルートが確保され、命を守る道としての効果が発現しています(図-6)。

図-3 大館市の工場新規増設件数と新規雇用者数の推移 図-4 北秋田市の工場新規増設件数と新規雇用者数の推移
図-5 大館能代空港の利用者数(東京便) 図-6 北秋田市民病院から大館市立総合病院への搬送時間の変化

4.さいごに

 日沿道は、未だつながっておらず、ネットワークとしての機能が十分に発輝されていません。地域の防災、産業振興、広域観光、救急搬送のため、ミッシングリンクの解消に向け整備に勤めて参ります。また、既存の国道7号及び秋田道については、維持管理、事故対応及び除排雪等を通じ、地域の安全と安心の確保に勤めて参ります。
 来年のオリンピックも契機となり、今後益々海外からの観光客が見込まれます。今年9月より、地域の主要拠点としての道の駅に焦点を当て、秋田県北地区の道の駅、DMO、県市町村及び国によるコミュニティを形成し、道の駅と共に周辺地域のインバウンド対応力強化に向け、情報交換を始めたところです。
 引き続き、新しい道路整備と共に、既存道路及び拠点等インフラの維持管理・機能強化・有効活用を通じて、地域の発展に貢献して参る所存です。


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