建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年11月号〉

【寄稿】

国道289号線5号橋梁下部その2工事

(10月号寄稿記事「中越の暮らしを支えるみちづくり
国土交通省 北陸地方整備局 長岡国道事務所長 松永 和彦」連載続編)

 八十里越地区工事関係者連絡会長 大林組北陸支店
 監理技術者 八十里越5号橋梁工事事務所長
田嶋 秀一


5号橋梁全景


 当工事は、八十里越事業のうち橋長 337m の 5 号橋梁の下部工施工を行っています。橋脚高さが最大で81mあり、日本トップクラスの高さで、完成すれば新潟県内で最も高い橋脚となります。
 橋脚構造は、中空断面で 3H 工法と呼ばれる工法が採用されています。従来の軸方向鉄筋の代替としてH形鋼材を用い、その周りに PC 鋼棒のスパイラル筋を巻き付けた SRC 構造です。耐震性に優れ、工程短縮が図れます。
 また、足場型枠セルフクライミングシステムを採用し、高所作業の省力化・安全面の向上を行いました。通常は、仮設足場を地上から組立、総足場工法が従来工法ですが、施工に必要な箇所のみ足場があり、リモコンのボタン一つで足場型枠共上昇させることが可能で施工性に優れます。一連の本体躯体工事の工程短縮が見込めます。 3 橋脚の内、2 橋脚は、すでに完成し、残りの橋脚施工もあとわずかとなりました。さいごまで無事故・無災害を目指し、高品質の高橋脚を提供できるように工事を進めます。
 この工事区間の特徴としては、豪雪地帯という気候条件や山間地での工事のために、一般的な土木工事より様々な制約がある点に苦労しています。冬季は、作業休止となるために、限られた期間(7ヶ月)で工事量を消化しなくてなりません。現場に手戻りが生じないように、無駄が発生しないように詳細な施工計画・春先の工事再開及び冬季休工前の越冬対策等、工程ロスが生じないように入念な計画を行って作業を進めています。
 また、山間地であるため、工事用道路の平面線形・縦断勾配等が険しく、材料調達・運搬方法、作業員の確保も苦労しています。八十里越事業は、今年度、新潟側で7業者が工事を行っています。大型車の場合は、時間調整するなど他業者さんとの調整をうまく行いながら材料搬入・搬出を行っています。
 また、山間部のため携帯電話が繋がりません。緊急時の連絡体制として衛星電話を使用しています。ですが、携帯はできないため、衛星電話の前にいないと受診できないデメリットがあります。それを解消するために衛星電波を介して PHS を使用していますが、これも場所によっては、通話しづらい箇所もあり、通信手段の不便さが山間地ならではです。
 現場では、職員・職長に無線を携帯させ、各連絡・指示を行っています。また、電気・水道もありません。工事に必要な電力は、発電機で対応し、水は、湧水を汲みあげて使用しています。近くには大谷川があるため、工事排水を川に流さないように日々注意して作業しています。

豪雪地帯の様子


 今回、高橋脚工事に 3H工法と呼ばれる特許工法が採用されていますが、この工法は東日本での実績が少なく、弊社としても初めての工法であったため、習熟したノウハウを持った職員・作業員がいない中での作業となりました。
 事前の組立から現場建込み作業に至るまで、試行錯誤しながら、最初は、多くの時間、手間暇を要しました。事前組立については、現場ヤード狭小につき、工場で組み立てることにより、現場の施工効率を図りました。
 作業員も少しずつではありますが、慣れてきましたが、まだまだ目標施工高まで達成できていませんので、更なる工夫・改善が必要です。
 移動式型枠足場については、高橋脚工事のため、足場を地上から80mの高さまで通常の枠組足場で組み立てるのではなく、足場と型枠が一体となったセルフクライミングシステムを使用しています。
 油圧クライミング装置により、足場と型枠を一体化させたユニットをクライミングする自昇式型枠足場です。作業に必要な箇所にのみ足場があります。クレーンによる揚重作業が大幅に削減できるため安全かつ省力化が図れます。天候や風にも影響されないため、工程促進にも寄与します。
 型枠も大判パネル(8m×5.5m)を採用することにより、生産性向上が望めます。40 回転用可能な型枠のため、廃材が少なく環境にも配慮しています。
 かくして、施工現場として総括すると、決めた工程どおりに工事が進められたとき、型枠を解体した時に、きれいなコンクリート表面であったとき、昨年実施した越冬対策が、春先の工事再開時にその機能を果たせたことを確認できたときが嬉しかったです。
 これまでの工事の中では、高速道路を通行止めして、限られた時間(7時間)で決められた工事量をこなせたとき、自分が携わった道路・鉄道が開通したときは嬉しかったです。
 反面、3H工法の施工方法には大変苦労しています。なかなか目指す歩掛を達成できてない点です。重量物・長尺物の扱いに苦慮しています。また、そのような特殊工事が施工可能な作業員を確保することも苦労しています。
 日々の工事でいちばん気をつかうことは、安全です。高橋脚工事ですので、安全管理として墜落落下災害防止・飛来落下災害防止に努めています。
 弊社では、一声掛け運動・一人 ATKY 活動を推奨しています。一声掛け運動とは、ヘルメットにひらがなで名前を表示することにより、業者間を越えたコミュニケーションを図るものです。危ない作業を見つけたら誰でも注意できる環境つくりを目指しています。
 一人 ATKY 活動とは、各作業員自ら、声を出して指差呼称による点検を行う活動です。声に出すことで、頭に働きかけることができ、より安全に作業できます。事故を防止するには、しっかりとした安全設備を整え、ヒューマンエラーを防止することが重要と考えます。
 また、当現場の移動式足場は、外国製であるために、開口養生、段差養生等細かいところまで工夫を施し、作業員に怪我させない設備を整えました。
 作業員は、全員にフルハーネス安全帯を使用させ、飛来落下防止対策として、全ての腰道具に落下防止措置を実施しています。
 ヒューマンエラーを防ぐために、掲示物を増やし、安全の見える化にも努力しています。竣工まで無事故・無災害できるように今後も精進致します。
 あとは、品質です。100 年後も丈夫である構造物を造ることが我々技術者の使命です。発注者様が満足する製品造りを行っています。
 この雄大な自然の中に、80m超の橋梁を造る工事に携われているということについては、とてもやりがいを感じています。なかなかこういう工事に携わる機会は、職員を含め作業員も少ないことだと考えます。
 ですので、こういう注目される工事に携われていること、誇りを持って作業しましょうと作業員にも伝えています。安全に工期内に良いものを造り、ぜひ開通したら走行したいと思います。


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