建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年11月号〉

【寄稿】

“砂防”に託す未来

 新庄河川事務所安全対策協議会 会長
 株式会社 柿ア工務所 代表取締役社長
柿ア 力治朗

地元高校生の職場体験

 初めに、此の度の台風災害の被害を受けられた皆様方に心からお見舞い申し上げます。
 “砂防”それは幼い頃の私にとって格好の遊び場であり、私が土木技術員として家業で働くことの大きな「きっかけ」でありました。
 建設請負業の父を持つ私は、物心ついた頃から砂防現場のことを鮮明に覚えています。国の工事は中学の頃までは直営工事でしたので、官民一体となっての仕事でした。今でこそ現場に10人程度しか作業員は配置されてませんが、当時は100人単位、その光景も圧巻でした。社会人になって初めての担当は飯豊山系の梅花皮沢砂防工事でした。国立公園内なので木を伐採できずルート変更ばかりで図面はなきも同然でした。遠い記憶に懐かしさを感じる現場です。
地域住民との美化活動
地元小学生の砂防現場見学

 月日は流れ、砂防整備も完了期に入ってきた感は否めません。しかし、今時台風災害も含め、昨今の自然災害の状況を目にするたび、将来の砂防のあり方を考えずにいられません。土砂崩れや地すべりは即、重大災害につながります。その復興には膨大な時間と費用を要し、復興も儘ならない現状もあるのが現実です。これでは、ほんとうの意味での国土強靭化は実現できないでしょう。国や地方自治体のみならず、我々建設業者や地域住民と一緒に考えていかなければならない問題だと、今あらためて感じております。「安心・安全」は暮らしにとって重要なキーワードであり、それを支えるための環境整備のひとつとして砂防工事は大きな役割を担います。
 安心・安全をともに考えることで、建設業者の災害対応能力の向上にもつながると確信しております。是非、業者側も積極的に参加できるような仕組みができることを期待して止やみません。
 終わりに此の度の台風も含め日々、黙々と努力を続けておられる関係各位に敬意と感謝を申し上げるとともに、“砂防”に対する理解がより一層深まることを願います。


HOME