建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年10月号〉

【寄稿】

航路ネットワークが拡充の一途を辿る境港

―― さらなる100年への一歩を踏み出す

 国土交通省 中国地方整備局
 境港湾・空港整備事務所 所長
鎌倉 崇

境港

 私たち境港湾・空港整備事務所は、境港、鳥取港、浜田港など、鳥取県、島根県内の港湾・海岸、空港を管轄し、重要度が高い港湾・海岸施設の整備、利用、保全並びにそれら施設の災害復旧に関する事務を行っています。

境港の概要

 境港は北方を島根半島で遮蔽された良港で、地理的にも敦賀港、関門港のほぼ中央に位置し、阪神、山陽、九州の各経済圏とも密接な関係を有する港です。また、古くから大陸貿易の拠点港として重要な位置も占めてきました。
 近年では、中国、韓国との定期コンテナ航路に続いて、2009年6月に境港〜韓国・東海〜ロシア・ウラジオストクを結ぶ環日本海国際定期貨客船が就航しています。
 また、2011年1月に山陰地方初の総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)に指定され、同年11月には日本海側拠点港(国際海上コンテナ、外航クルーズ、原木)に選定されました。これにより更なる利便性向上のための取り組みの促進も期待されています。そこで、現在整備している施設についてご紹介します。

外港竹内南地区岸壁(-10m)

 山陰地方は国内海上輸送網のミッシングリンクとなっており、境港周辺の企業は非効率な輸送方法を選択せざるを得ない状態となっています。
 また、境水道沿いの既存施設は老朽化や背後用地の不足、船舶航行の安全性確保の観点から、他地区への移転・集約が急務となっています。
 さらに、境港に定期就航している船舶が利用している岸壁は耐震強化されていないことから、大規模地震発生時の物流・人流機能の確保が課題となっています。
 このため、新たな国内RORO船や大型クルーズ船の就航にも対応した貨客船ターミナル(耐震強化)を整備するとともに、境港のふ頭再編を行い、物流・人流機能の効率化による山陰地方の産業競争力強化を図っています。

外港地区防波堤(2)

 防波堤(2)は、外港各地区の諸施設を日本海の荒波から防護し、港内の静穏度確保のため、1968年(昭和43年)から2018年までに延長3,820mが整備され、現在は防波堤(2)の残り30m区間の整備を進めており、今後も港内静穏度確保による荷役稼働率向上を図ります。

鳥取港の概要

鳥取港

 鳥取港は「賀露港」として古くから知られ、江戸時代鳥取藩32万石の港として繁栄しました。1975年(昭和50年)には重要港湾に指定され、千代川河口付替工事と合わせ大型岸壁の整備が図られました。
 現在では、砂、石材等の建設資材の流通拠点として発展していますが、物流の拠点だけでなく地域との結びつきや賑わいをもたらす“鳥取・賀露みなとオアシス”にも認証され交流・憩いの場としても発展が期待されています。

千代地区第1防波堤

 鳥取港では、荒天時に既存の第1防波堤を波が越波して港内に押し寄せるなど、港内静穏度に問題がありました。このため、防波堤前面に消波ブロックを設置することにより、反射波対策と港内の安全性向上を図っています。
 千代川の河口付近に位置する千代航路周辺は、冬季風浪や台風などの厳しい気象、海象条件などにより特殊な波が発生することがあり、特に波浪の影響を受けやすい中小型船舶にとっては入出港時の安全性向上が課題となっております。
 また、鳥取港より西方向から入出港する船は、大きく迂回をしなければならず、入出港時の利便性向上も求められています。 この様な状況を改善するため、第1防波堤の西側を延伸し、荒天時にも安全な水面を確保した上で、新たな航路(西浜航路)開設に向けて整備を進めています。

浜田港の概要

浜田港福井地区臨港道路福井4号線

 浜田港は島根県西部のほぼ中央に位置し、自然条件にも恵まれていたことから古くより九州や北陸地方との貨客交流や、朝鮮との貿易などにより発展してきました。1899年(明治32年)に境港と共に開港場に指定され、全国でも8番目に古い外国貿易港としての歴史をスタートさせました。
 1957年(昭和32年)に重要港湾に指定され、2001年に韓国・釜山港との国際定期コンテナ航路が開設し、2008年にはロシア・ウラジオストク港とを結ぶ国際RORO船航路が開設されました。
 また、2011年11月には日本海側拠点港・原木に選定され、山陰西部の国際貿易港として更なる発展が期待されています。

福井地区防波堤(新北)

 1999年に福井地区に新しいターミナル岸壁(-14m)が完成し、2001年からは国際定期コンテナ航路が開設されるなど、山陰地方西部の物流拠点としての重要性が高まっていますが、浜田港は冬季風浪により、船舶航行の安全性や福井地区岸壁を中心とした施設前面の静穏度が不足し、定期航路の運航に不可欠な定期性の確保に支障を来たしています。
 このような状況を改善し、年間を通じて安全で利用しやすい港となるよう、防波堤(新北)の整備を進めています。

福井地区臨港道路福井4号線

 浜田港で外貿貨物等を取り扱う主要なふ頭のある福井地区と背後を結ぶ既存の臨港道路福井1号線は、接続する幹線道路の渋滞や急勾配による大型貨物車両の速度低下等により、増加が見込まれる円滑な貨物輸送に支障となっていましたが、2012年度より福井ふ頭と浜田・三隅道路のアクセスを改善する臨港道路福井4号線を整備し、2018年3月に供用し、浜田港背後圏域との陸上輸送機能の効率・安全化、物流コスト削減を図っています。


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