建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年9月号〉

【寄稿】

北近畿豊岡自動車道の整備状況



 国土交通省 近畿地方整備局
 豊岡河川国道事務所長
中川 圭正

図-1 北近畿豊岡自動車道の整備状況

1.事務所概要

 豊岡河川国道事務所は近畿北西部の兵庫県但馬地域に位置し、温泉やスキーなど豊かな自然を活かした観光が盛んな地域で、近年では、温泉や地域固有の資源となっているコウノトリ、山陰ジオパークの認定などにより知名度も向上し、観光客が増えています。
 当事務所では、こうした但馬地域のまちづくりに深くかかわる必要な基盤づくりとして、コウノトリ舞う但馬の豊かな自然環境を守りつつ、水害から地域を守り安全安心を確保する円山川の治水事業、京阪神との交通基盤となり産業活性化や観光交流促進を図り、雪など災害時にも強い地域を造る国道483号北近畿豊岡自動車道、国道9号の整備、維持管理を実施しています。

2.近年の道路整備状況

写真-1 令和2年開通予定区間の整備状況
図-3、4 沿線三市(朝来市・養父市・豊岡市)における
工場立地の推移と大規模小売店舗立地届出数の推移

 但馬地域は長らく「高速道路の空白地帯」と呼ばれてきました。北近畿豊岡自動車道は、兵庫県豊岡市を起点に丹波市の舞鶴若狭自動車道の春日JCTに至る延長約70kmの高規格幹線道路で、舞鶴若狭自動車道と播但連絡道路、将来は山陰近畿自動車道路と高速道路ネットワークを形成し、地域の交通のみならず国土の骨格としての重要なネットワークとなることが期待されています。
 平成17年には氷上IC〜春日JCTまでの6.9km、翌平成18年には、和田山JCT〜氷上ICまでの24.8km、平成24年には八鹿氷ノ山IC〜和田山JCTの13.7km、平成29年に日高神鍋高原IC〜八鹿氷ノ山ICの9.7kmを順次開通しており、遠阪トンネル有料道路を含めて現在約60kmが開通しています。
 未開通区間のうち、日高神鍋高原ICから北の約8kmについては現在事業を進めているところあり、そのうち(仮)豊岡南ICまでの約6kmについて令和2年度の開通を予定しています。(図-1、写真-1)

3.北近畿豊岡自動車道開通の整備効果

図-2 ドクターカー30分圏域の推移
図-5 兵庫県産ズワイガニの東京中央卸売市場における出荷量
図-6 高速バスの運行本数と利用者数の変化

3-1.地域医療に寄与

 但馬地域は兵庫県の約1/4の面積(東京都とほぼ同じ)を占めますが、第三次医療施設は豊岡市内に一つしかなく、ドクターヘリ・ドクターカーを活用する独自の医療体制により人々を守っています。北近畿豊岡自動車道は地域の「命の道」として機能し、現在事業中区間の開通により、救急搬送時の時間短縮が図られ、救急搬送の30分圏域人口カバー率が90%から95%に拡大します。(図-2)

3-2.雇用創出に寄与

 北近畿豊岡自動車道の整備により周辺地域では工場や大規模小売店舗が新たに進出し、新たな雇用を創出しています。(図-3、4)

3-3.地場産業振興に寄与

 また、高速道路ネットワークの広がりは、京阪神圏のみならず首都圏との時間距離も短縮し、地域を代表するズワイガニの東京卸売市場での取扱量が増えるなど地場産業の振興にも寄与しています。(図-5)

3-4.観光振興に寄与

 但馬地域はで、温泉や海水浴、スキーなど観光資源が豊富に存在し、国内外から多くの観光客が訪問されています。北近畿豊岡自動車道の整備により但馬地域へのアクセス向上が図られることにより観光集客力が増し、観光振興に寄与しています。平成29年八鹿日高道路の開通時には、城崎と大阪を結ぶ高速バスが2倍に増便し利用者が1.4倍に増加しています。(図-6)

4.おわりに

 北近畿豊岡自動車道は、地域外との交流を促進し地域活性化に寄与するとともに、地域の「命の道」としても早期整備が求められているところです。
 当事務所では、まずは令和2年度の(仮)豊岡南IC〜日高神鍋高原IC間約6kmの着実な開通を図るとともに、他の区間についても早期整備に努めて参ります。


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