建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年8月号〉

【寄稿】

着実に歩んできた被災地復興のリーディングプロジェクト「相馬福島道路」の建設

―― 2020年度内の全線開通に期待が膨らむ

国土交通省 東北地方整備局 道路部


図1 復興道路等の概要

■はじめに

 東北地方の太平洋沿岸を中心に未曾有の被害をもたらした「東日本大震災」から8年の月日が経過し、被災地においては、本格的な復興に向けた諸事業が関係機関で積極的に進められています。
 被災地復興のリーディングプロジェクトである復興道路・復興支援道路(以下、「復興道路等」という)は、震災後、三陸沿岸道路等の未事業化区間全てが事業化され、現在、復興・創生期間(2020年度)内の全線開通を目指し、関係者の皆様の献身的なご尽力のもと、整備が進められています。

■復興道路等の概要

 政府の諮問機関である東日本大震災復興構想会議による「復興への提言」(平成23年6月)において、「太平洋沿岸軸(復興道路)の緊急整備や太平洋沿岸と東北道をつなぐ横断軸(復興支援道路)の強化について、整備スケジュールを明確にした上で防災面の効果を適切に評価しつつ重点的に整備すべきである」とされました。
 この提言を受け、東日本大震災復興対策本部(本部長:内閣総理大臣)が同年7月、「東日本大震災からの復興の基本方針」を策定し、これらに基づき、同年11月の第三次補正予算の成立により、三陸沿岸道路等の未事業化の18区間・224kmが新規事業化され、また、東北中央自動車道の霊山〜福島間(延長12km)については、都市計画手続きを経て、平成25年5月に新規事業化されました。(図1)

■復興道路等の整備状況

 復興道路等は、国土交通省が中心となって整備を進めている路線全長550kmのうち、503km・約9割で開通または開通の見通しが確定しています。
 震災後、これまでに237kmの区間が開通(令和元年6月末時点)しており、平成31年3月には東北横断自動車道釜石秋田線(釜石〜花巻)の80kmが復興道路等では初の路線全線開通をしました。また、今年度内には、三陸沿岸道路のうち、宮城県仙台市から岩手県宮古市間が宮城県気仙沼市の一部を除き完成の予定であり、東北中央自動車道の相馬〜福島は常磐自動車道と接続する予定です。(表1)

表1 復興道路等の整備状況

■相馬福島道路

 相馬福島道路は、常磐自動車道と東北縦貫自動車道を結ぶ約45kmの高規格幹線道路です。
 これまで、福島県沿岸部の相馬市と、内陸部の福島市を結ぶルートは国道115号が主要経路になっており、東日本大震災では、「くしの歯作戦」により、津波で甚大な被災を受けた沿岸部への救命・救護ルートとして重要な役割を担いました。
 一方で、国道115号は急勾配・急カーブ、狭い幅員により、交通事故の発生が多い区間があるほか、落石等の自然災害が発生するおそれのある区間も多くあり、大雨などにより通行が規制される区間もあります。(図2)

図2 相馬福島道路


 相馬福島道路の整備により、悪天候や災害時においても寸断されないネットワークが形成され、安全で確実な交通の確保が期待されます。また、企業立地が進む相馬港周辺(浜通り地方)と内陸部(中通り地方)との物流を支える大動脈として機能し、走行性の向上や時間短縮による物流効率化で、企業活動を支援します。更に、既開通の東北中央自動車道や東北縦貫自動車道とつながることで、新たな広域観光周遊ルートの形成と、地域連携の強化により、交流人口の増加と活発な観光交流が期待されます。

■相馬福島道路の整備状況

 相馬福島道路は、5区間で事業を進め、平成29年3月には相馬山上IC〜相馬玉野IC間10.5km、平成30年3月には相馬玉野IC〜霊山IC間17kmが開通しました。
 令和元年度には相馬IC〜相馬山上IC間6kmが開通予定であり、残る霊山IC〜桑折JCT間についても復興・創生期間内(2020年度)の開通を目指し、工事を全面展開しています。(写1、写2)

写1 相馬 IC 付近の工事状況
写2 桑折高架橋の工事状況

■さいごに

 相馬福島道路をはじめとした復興道路等について、引き続き、県や沿線自治体と連携し、官民一体となって事業を進め、早期にその機能が発揮されるよう1日も早い完成に向け、地域とともに取り組んで参ります。


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