建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年6月号〉

【寄稿】

近畿圏の外郭環状を形成する高規格幹線道路「京奈和自動車道」

 国土交通省 近畿地方整備局
 奈良国道事務所 所長
原 久弥


郡山南IC付近から南を望む

 奈良国道事務所では、奈良県内において高規格幹線道路の京奈和自動車道大和北道路をはじめ大和御所道路、国道25号名阪道路(名阪国道)及び斑鳩バイパス、国道165号大和高田バイパス、香芝柏原改良、並びに権限代行として国道168号長殿道路、国道168号五條新宮道路(風屋川津・宇宮原工区)、国道168号十津川道路、国道169号伯母峯峠道路の改築事業および道路事業を実施しています。
 また、国道24号・25号・163号・165号の4路線(管理実延長約150q)の維持修繕事業、交通安全対策事業、沿道環境改善事業、無電柱化推進事業や道路管理業務を実施しています。これらの数ある路線の中から、地域社会の期待を担いつつ整備が進められている主要路線を紹介します。

近畿圏の動脈となる「京奈和自動車道」

 京奈和自動車道は、京都・奈良・和歌山を結ぶ延長約120kmの高規格幹線道路です。近畿大都市圏の外郭環状として、既存の幹線道路とネットワークを形成し、大都市圏での時間短縮、京都〜奈良〜和歌山の拠点都市の連携強化が期待されています。
 このうち、大和北道路、大和御所道路(大和区間、御所区間)、五條道路の合計約48kmが奈良県内に位置しています。
 また、県内の交流の促進や国道24号の渋滞緩和、交通事故の減少、走行時間の短縮、定時性の確保など、地域活性化に寄与します。

奈良市と奈良県内外のアクセス向上が期待される「大和北道路」

 大和北道路は京奈和自動車道の一部で、京奈道路の木津IC付近から西名阪自動車道までの区間の延長約12.4kmの道路です。
 平成21年3月に奈良IC(仮称)〜郡山下ツ道JCT間(延長6.3km)が事業化され、平成30年4月には奈良北IC(仮称)〜奈良IC(仮称)間(延長6.1km)が事業化されるとともに、大和北道路全線において、公共事業と有料道路事業との合併施行方式により整備を進めているところです。
 この整備により、奈良県の政治、経済の主要拠点であり、世界遺産などの豊かな観光資源が存在する奈良市と、県内各都市及び県外からのアクセスが向上し、県の経済活動の活性化及び広域的な観光振興が図られます。
 また、国道24号の渋滞緩和や一般道路での交通事故の削減、医療サービスの向上、地域の環境改善が図られます。 南北のアクセスを向上させるネットワーク「大和御所道路」

 大和御所道路は、大和区間と御所区間からなる専用部と一般部から構成される延長約27kmの道路です。
 この路線の大和区間は、郡山下ツ道JCTを起点とし、奈良県下の中核都市である大和郡山市、橿原市を含む3市3町を通過し、大和高田バイパスに接続する約14kmの道路で、平成18年度までに郡山南IC〜橿原北ICまでの専用部7.8kmと一般部9.2kmが開通し、平成27年3月には郡山下ツ道JCT〜郡山南IC間の専用部1.6kmと奈良県磯城郡川西町大字結崎〜田原本町大字十六面間の一般部3.5kmが開通しました。
 御所区間は、大和高田バイパスを起点とし橿原市、大和高田市、御所市、五條市の4市を通過し、五條道路に接続する約13kmの道路で、平成24年3月に橿原高田IC〜御所IC間の専用部3.7kmが2車線で開通し、平成27年3月には御所IC〜御所南IC間の2.5kmが開通。平成29年8月には御所南IC〜五條北IC間の7.2kmが開通し、全区間を暫定2車線で開通しました。

郡山南IC付近から南を望む

五條市〜橿原市のアクセス向上「五條道路」

 五條道路は、五條北ICから和歌山県境に至る延長7.9kmの道路です。平成18年6月迄に全線暫定2車線で開通しました。この整備により、五條市〜橿原市間の利便性が飛躍的に向上しました。

京奈和自動車道の整備後による効果

 京奈和自動車道の沿線地域では、整備の進捗にあわせて、新たな企業立地が進展しています。大和御所道路の整備による地域へのアクセス向上により、企業立地が促進され、地域では雇用拡大への期待が大きくなっています。特に、近畿・中部の中心都市である大阪や名古屋などへのアクセス性が向上した効果は大きいものです。
 具体的には、南大和テクノタウンの状況を見ると、全14区画のうち9区画が分譲済みとなりました。このうち、朝日ウッドテック(株)五條工場、(株)松徳工業所奈良工場、東洋精密工業(株)五條工場、吉森ホイル(株)などがすでに稼働しており、残るところの未分譲区画は 5区画となりました。
 一方、飛鳥時代より築かれた古い歴史を持つ奈良県内には、全国22箇所の世界遺産のうち「法隆寺地域の仏教建造物」「古都奈良の文化財」「紀伊山地の霊場と参詣道」の3箇所をはじめとして、国際的に優れた観光資源が多く存在しています。
 このため、奈良県では外国人観光客数が約5倍(H21→H29)に増加しています。京奈和自動車道の整備により、関空〜吉野山間の所要時間は1時間30分となり、移動時間短縮の効果が得られました。こうした効果により、沿線の大阪・関空から奈良・和歌山の世界遺産を結ぶ新たな観光地を周遊するルートが形成され、観光振興を支援する役割を果たしています。
 救急医療面では、五條市の中心部から第3次医療施設である奈良県立医科大学附属病院への救急搬送時間が短縮し、搬送患者の負担軽減など、救急医療活動の支援を果たしています。
 京奈和自動車道は80km/hで計画されており、整備前の現道の平均旅行速度は概ね30km/hでした。このことから、五條市の中心部から奈良県立医科大学附属病院までは44分もかかっていましたが、開通後は27分と17分の短縮が図られ、緊急患者の搬送に寄与しています。
 この他、管内全体で見ると京都市から和歌山市までの移動時間は、国道24号を利用していた時は京都市から奈良市まで約80分、奈良市から和歌山市まで約190分で、およそ270分もかかっていましたが、京都市から奈良市まで約40分、奈良市から和歌山市まで約60分で計100分となり、およそ170分も短縮しました。
 このように道路は、地域住民の方々の生活や経済活動を支える基盤であるとともに、企業立地の進展や雇用の拡大等の地域産業の活性化のほか、持続的な観光交流の活性化のために欠かせない重要な社会資本です。南海トラフ巨大地震への対応といった国土強靱化の観点からも、引き続き奈良県の暮らしを支えるとともに、関西圏の活性化に繋がる幹線道路ネットワークの整備について、地域の皆様方のご理解とご協力をいただきながら、取り組みを進めて参ります。


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