建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年4月号〉

【寄稿】

西海・九十九島をいだく佐世保港

―― 大型の外国クルーズ船による寄港が激増

 国土交通省 九州地方整備局
 長崎港湾・空港整備事務所 佐世保港整備推進室長
田代 益庸

佐世保港 各地区の機能

はじめに

16万トン級クルーズ船 初寄港(2018年7月23日)

 佐世保港は、長崎県北部地域の中央に位置する重要港湾で、湾口が狭く奥に広がる形状がヤツデの葉に似ていることから「葉港」と呼ばれる天然の良港です。
 明治22年に海軍鎮守府が開庁されたのをきっかけに佐世保の街は大きく発展し、それとともに造船業や重工業を中心とした生産拠点としての役割や、石炭や畜産資料等の輸入を受け入れる物流貿易港としての役割を担い発展を続けてきました。
 しかし、一方では長らく軍港として栄えてきた歴史も持ち、現在でも様々な制限があるため、市民に開かれた水辺が長らく存在しませんでした。
 そこで近年、佐世保市中心部に隣接した佐世保港三浦地区において、離島航路、観光旅客船及び鉄道がウォーターフロントで結節する旅客船対応ターミナル整備事業が実施され、景観に配慮した観光船岸壁や緑地、交流拠点用地といった施設が整備されており、市民に親しまれています。
 現在の佐世保港の取扱貨物量は202万トン(2017年)で、外貿は輸出が鉄鋼99.9%、輸入は飼料原料のとうもろこしが約55%を占め、西九州(長崎県・佐賀県)の畜産業を支援しています。内貿は、移出の約80%が周辺離島へのフェリーやRORO船で運送される貨物で、移入は約40%がエネルギー産業を支える重油と石油製品となっています。
 佐世保港の定期航路は、上五島や周辺離島への玄関口として、高速船31便/日、フェリー7便/日が就航しており、生活物資の多くを海上輸送に頼る周辺離島島民の生活にとって必要不可欠となっています。
 また、佐世保港の背後圏には、「世界で最も美しい湾クラブ」へ加盟した大自然が残る西海国立公園九十九島や大型観光施設ハウステンボスなどがあり、さらに、日本近代化の歴史が残る「佐世保鎮守府」や日本磁器の故郷として親しまれている「三川内焼」が2016年日本遺産に認定されるなど、豊富で多様な観光資源を有しており、2014年から東アジアに近接する地理的な優位性を活かした国際旅客船の受入を開始するなど、佐世保市は「国際観光の活性化と観光都市機能の強化」の実現に向けた取り組みを推進しています。

佐世保港のクルーズ船の寄港状況

 佐世保港では、三浦地区において2013年までは日本船社が運航するクルーズ船を年1回受け入れる程度でしたが、2014年4月供用の7万トン級岸壁や2015年4月供用の国際ターミナルの整備を契機に年々国際旅客船の寄港回数が増加し、2018年7月には16万トン級岸壁への延伸整備が完了し、2018年の寄港回数は全国8位(外国船社5位)となる108回(外国船社105回)と急増しています。

佐世保港における国際旅客船拠点計画

佐世保港(浦頭地区)官民連携による国際クルーズ拠点形成


 佐世保港は、2017年1月に「官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾」に選定され、同年7月に「国際旅客船拠点形成港湾」に指定されたことを受け、国際旅客船が安定的に寄港できる岸壁を「三浦地区」及び「浦頭地区」に整備し、優れた佐世保港の強みを十分に活かした受入体制を構築することで、東アジアから訪れる国際旅客船のゲートウェイ機能を有した全国展開できる拠点形成を目指しています。具体的には運用開始年2020年の国際旅客船の年間寄港回数を295回、4年後の2024年の年間寄港回数を395回に設定しています。

佐世保港のクルーズ船寄港回数とクルーズ客数(万人)の推移

浦頭地区におけるクルーズ拠点整備の取り組み状況

 三浦地区における整備は2018年7月に完了し供用を開始していますが、岸壁の一部が海上自衛隊と共同使用になることから、7万トン級を超える大型国際旅客船の寄港回数は年間100日程度としており、自衛隊使用時は7万トン級以下の客船を受け入れることにしているため、目標を達成するため新たな国際旅客船受入拠点として「浦頭地区」に2017年度より施設整備を進めています。
 浦頭地区の施設整備における主な役割分担は、14万トン級に対応した係留施設や水域施設を国土交通省が整備し、周辺交通対策としての臨港道路や大型バス等の駐車場などの基本施設と照明施設等は港湾管理者である佐世保市が整備し、受入促進施設の旅客ターミナルビルの整備・運営をカーニバル社が実施することとしています。
 2019年3月末現在、私たち長崎港湾・空港整備事務所が担当している「水域施設」(泊地-10m)は現地整備が完了し、「道路部86m」(岸壁本体部と既設岸壁を繋ぐ部分)は鋼管杭打設、ジャケット据付及び上部工まで概成、「岸壁本体部270m」の鋼管杭打設は完了し、ジャケット据付は海側135mが完了しています。

おわりに

 今後も、2020年4月の供用開始に向け本事業を円滑に推進していくために、佐世保市やカーニバル社とも十分連携を取り、地元の皆様に事業内容についてしっかり説明を行い、引き続き安全に留意しながらスピード感を持って事業を進めて参ります。


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