建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年4月号〉

【寄稿】

ICT法面に向けた自動化・機械化技術の開発

―― 省人化して生産性を高める技術のご紹介

 ライト工業株式会社 西日本支社
 熊野川斜面対策工事 現場代理人
南都 和実
 監理技術者
福岡 聡司



1.はじめに

冷水西部斜面対策他工事(平成30年12月完成)

 ライト工業では更に深刻化が予想される労働力不足に対し、従来技術の自動化や機械化を積極的に推進するi-Construction対応技術の開発に力を注いでいるところでございます。従来技術の自動化や機械化といった次世代に向けた技術開発の実現は、労働者の負担軽減や省人化に繋がるだけでなく、生産性向上にも寄与すると考えています。本寄稿では紀伊山系砂防事務所管内の工事で活用したICT化として、将来的に期待されるICT法面に向けた技術開発の取組み事例についてご紹介致します。

冷水西部斜面対策他工事(平成30年12月完成)

2.自動吹付システム(Automatic-Shot)

 Automatic-Shotは、吹付プラントを1名で稼働できる自動吹付システムです。吹付機とセメントサイロ、計量器搭載ミキサーを電子制御することで、全ての機械が連動して材料を自動計量する吹付プラントの自動化を実現させました。リモコンによる遠隔操作が可能であり、ホースの閉塞時は自動で吹付機を停止します。材料の計量値は監視システムに施工記録として蓄積され、何時でも確認が可能です。

熊野川斜面対策工事(平成31年3月完成)

3.法面吹付ロボット(Robo-Shot)

 Robo-Shotは、作業員の高齢化や熟練工の減少を解決すべく開発した法面吹付ロボットです。二次災害の危険性が高い災害現場においても遠隔操作方式により短期間で安全な施工が可能です。ロボットアームはバックホウとクレーンに装着でき、クレーンによる吊下げ式にも対応できます。携帯式コントローラーで操作するため、法面作業の経験が少ない若手技能者でもゲーム感覚で容易に操作が可能です。Automatic-Shotと組合せると更なる省人化が図れ、生産性向上に繋がります。

冷水西部斜面対策他工事(平成30年7月20日)

4.UAVによる資材運搬技術

 大規模斜面やアクセスが困難な高所の施工箇所では、これまではモノレールや索道等を採用していましたが、仮設までに時間を要することと、荷取り場からの小運搬が必要不可欠でした。UAVによる資材運搬技術は、こうした仮設備の設置と小運搬が不必要となるため、効率的な運搬作業を行えます。バッテリーを含む機体重量は、40kgと軽量で取扱いが容易であり、玉掛けワイヤーの取外しを遠隔操作で行うオートマチックフックを装備しています。バッテリーの容量と積載重量により飛行時間が制限されますが、あらゆるシーンでの活躍が期待されています。

5.おわりに

 本寄稿では、ICT法面の確立に向けた従来技術の自動化や機械化として、自動吹付システムであるAutomatic-Shotや法面吹付ロボットであるRobo-Shot、資材運搬や仮設工を大幅に省力化できるUAVの資材運搬技術をご紹介しました。何れの技術も現場の技術者や技能者の負担軽減と生産性の向上を目的に開発した技術です。建設現場では担い手不足への対応や休日確保といった働き方改革に迫られ、省人化や省力化に加え生産性の向上を可能とする新たな技術開発が喫緊の課題となっています。現場を担当する我々も、現場ならではの視点による柔軟な思考を持って、新たなイノベーションの発展に貢献したいと考えています。


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