建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2019年3月号〉

【寄稿】

復興道路・復興支援道路の整備推進

―― さらなる100年への一歩を踏み出す

 国土交通省 東北地方整備局
 三陸国道事務所 所長
田中 誠柳

三陸国道事務所管内の整備概要

はじめに

山田宮古道路の開通式

 東日本大震災から7年半が経過した今、三陸沿岸地域では震災からの復興関連事業が総仕上げの段階に入っています。各地では「まちびらき」が行われ、被災地に賑わいが戻りつつあります。三陸国道事務所では地域の再生、創生の要である復興のリーディングプロジェクト「復興道路・復興支援道路」の整備に地域とともに全力をあげて取り組んでいます。

復興道路〜三陸沿岸道路の整備状況

〇路線概要
 三陸沿岸地域の主要幹線道路である国道45号は、カーブや急勾配が連続することから、移動距離に対する所要時間が非常に長く、流通や交流、救急医療など様々な課題を抱えています。また、震災では津波により各所で道路が寸断され、人々の暮らしに甚大な影響が生じました。より信頼性の高い高速交通ネットワークの整備は、三陸沿岸地域の喫緊の課題であると同時に、震災からの一日も早い復興、地域活力創生のために必要不可欠なものです。
 三陸沿岸道路は宮城県仙台市から青森県八戸市を結ぶ延長359qの自動車専用道路で、平時には暮らしを支え、災害時には人々を守る「命の道」となるものです。
 当事務所では岩手県山田町から洋野町(青森県境)までの約138q区間の整備を担当しています。また、この内100qは震災後に新規事業化されたものです。

舗装を待つ閉伊川橋(仮)

〇開通状況
 震災前から事業を行っていた区間においては、2013年度までに約31qが開通しています。また、震災後に事業化された区間においては、2017年11月19日に、山田宮古道路(延長14q)が事業化から僅か6年という、これまでにないスピードで開通を迎えました。さらに、2018年3月21日にも、宮古田老道路の一部(延長4q)と田老岩泉道路(延長6q)が開通しており、2017年度末時点で合わせて55qが開通しています。
 今後、2019年度に1区間約7q、2020年度に3区間約45qの開通を予定しており、その他の2区間についても早期の開通を目指して工事が最盛期を迎えています。
〇工事の実施状況
 現在、6区間=約83qにおいて土工、構造物工事を全面的に展開しています。主要な構造物は、橋梁43橋=延べ延長約6q、トンネル23本=延べ延長約20qとなり、構造物比率は約30%となっています。
 橋梁のうち、宮古市に建設が進む「閉伊川橋(仮)」は河川、県道、JRを跨ぐ橋長502mの鋼橋で、床版までが完成し舗装を待つ状況となっています。田野畑村では、この地に赴任してきた役人が、あまりにも険しい坂道に「辞職を決意して引き返した」との言い伝えが残る「辞職坂」に架かる、高さ100mを越える「新思惟大橋(仮)」の下部工の施工が急ピッチで進められています。また、久慈市においても橋長497mのPC橋「夏井高架橋」が竣工し、2019年度の開通に向け、今後舗装工事などを予定しています。
 トンネルについては、2017年度までに16トンネル=約12qが完成・貫通しています。直近では2018年10月に、普代村に建設中の「白井トンネル(仮)=延長2,058m」が貫通しました。残りの6トンネルについても1本を除き施工中となっており、着実に工事が推進しています。

下部工施工が進む新思惟大橋(仮)
奥は国道45号現道に架かる思惟大橋

復興支援道路〜宮古盛岡横断道路の整備状況

〇路線概要
 国道106号は岩手県沿岸部と内陸部を結ぶ重要な路線であり、震災時には救援・支援の緊急搬送路として重要な役割を果たした一方で、2016年の台風10号災害では国道に併走する閉伊川の増水により各所で道路が寸断され、地域の経済活動に多大な影響が生じました。
 宮古盛岡横断道路は、宮古市と盛岡市を結ぶ延長約100qの地域高規格道路です。国道106号の信頼性、速達性を高め、内陸部と沿岸部の連携強化により復興、創生を強力に推進する路線として、地域からの期待が寄せられています。
 当事務所では、宮古盛岡横断道路の一部である宮古箱石道路(宮古市藤原〜箱石)について、直轄権限代行事業として延長20qの整備を担当しています。

実貫通時の腹帯第3トンネル(仮)

〇開通状況
 現在事業中の4工区のうち、下川井工区=延長2qについては2019年度の開通、その他の3工区=延長18qについては2020年度の開通を目指して工事を推進しています。
〇工事の実施状況
 閉伊川の流れる谷間を縫うように整備する宮古箱石道路は、4区間=20qに対して橋梁10橋=延べ延長約1q、トンネル11本=延べ延長約15qと、約80%が構造物となる路線です。
 現在、全工区において工事着手しており、橋梁については10橋全てに着手しています。2018年10月には、橋長93mのPC橋「小山田こ道橋」の上部工架設が完了しています。その他の橋梁についても順次上部工の製作、架設に着手しています。また、トンネルについては、2017年度までに3トンネル=約3qが完成・貫通しています。直近では2018年10月に「腹帯第3トンネル(仮)延長=283m」が貫通し、その他のトンネルについても本体掘削が最盛期を迎えており、切り羽の安全や、掘削ズリの運搬に細心の注意を払いながら工事を推進しています。

さいごに

 当事務所管内では従来にない規模とスピードで事業が展開しています。事業の円滑な推進には地域の方々のご理解、ご協力が不可欠です。このため、「事業の見える化」「周辺環境への負荷の低減」「CSR※を含めた地域貢献」にも積極的な取り組みを進めています。
 また、復興まちづくりと一体となって現道の嵩上げや再配置を行う「国道45号復興事業」及び無電柱化、津波避難階段の整備などにも取り組んでいます。
 三陸沿岸の復興と創生に向けて、引き続き地域とともに、そして地域に寄り添いながら事業を推進してまいります。

CSR活動(道路清掃)

※CSR(corporate social responsibility:企業の社会的責任)
 あらゆる組織が、組織活動により社会に及ぼす影響に対して責任を担うとともに、持続可能な社会への貢献に責任をもつもので、法令遵守はもとより、環境負荷の軽減や、自主的な地域貢献、地域コミュニティへの参画などに取り組むもの。


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