建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2018年11月号〉

【寄稿】

中部横断自動車道の開通による効果

―― 一本の道路が地域を変える

 国土交通省 関東地方整備局
 甲府河川国道事務所長
安谷 覚



図1 中部横断自動車道路線図


 私たち甲府河川国道事務所は、河川事業では富士川、釜無川及び笛吹川等の維持管理、浸水被害解消のための築堤護岸等の整備や河川防災ステーションの整備、環境整備等を行っており、道路事業では山梨県内の一般国道20号、52号、138号、139号の改築および修繕工事、維持その他の管理、調査を行っています。
 今回は道路事業で、特に重点的に整備を進めている中部横断自動車道(富沢〜六郷)間の整備を中心に紹介します。
 中部横断自動車道は、静岡県静岡市を起点に、長野県小諸市に至る延長約132kmの高速自動車国道で、当事務所は、山梨県南部町の「富沢IC」から同県市川三郷町の「六郷IC」間の延長約28kmを直轄高速区間として担当しています。(図1)中部横断自動車道の整備により、新東名高速道路、中央自動車道及び上信越自動車道が接続され、周辺地域における生活、産業、観光面の活性化、水害時の交通寸断の改善、地震災害時の緊急輸送路の機能向上、高次医療施設への迅速な移動が可能となるなど、様々な効果が期待されます。
 静岡県と山梨県を結ぶ国道52号には、事前通行規制区間が3箇所あり、大雨等の際には通行止を行うことがあります。また、地形的な制約もあり拡幅等の改良が容易ではない中、大型車の交通も多い状況です。
 そこで、通過交通が中部横断自動車道へ転換することで、国道52号の代替路が確保されます。
 また、山梨県と静岡県の移動時間は、例えば、甲府市内から静岡市内では、国道52号を利用する場合に比べて約1時間の短縮が期待されます。(図2)

図2 中部横断自動車道の整備に伴う移動時間の短縮


 ストック効果として、開通した中部横断自動車道等の沿線では新規企業が進出し、地域の雇用機会が増加しています。例えば、平成14(2002)年度から一部区間が開通し、平成18(2006)年に増穂ICまで開通しました。過去25年間で従業者数は、沿線市町では30%(約1.4万人)増加しています。また、沿線自治体の人口は21%(約2.1万人)増加しました。今後も、六郷IC以南の開通により、周辺地域の人口増加が期待されます。(図3)

図3 中部横断自動車道等の整備に伴うストック効果


 さらに、農産物の販路拡大等にも寄与します。山梨県産のぶどう、ももは、生産量全国1位となっており、主要な出荷先は東京ですが、中部横断自動車道開通により、東海地域への販路拡大が期待されます。
 この他、上信越自動車道、中央自動車道、新東名高速道路の3本の高規格道路と結ばれることで、首都圏における環状ネットワークが形成され、首都圏防災時の代替路としても機能します。
 特に首都圏直下型地震や東海地震等の災害時は、既存の東名高速道路を利用するルートに環状ネットワークを利用するルートが加わることで、中京圏と首都圏間の災害復旧や被災地支援の連携が強化されます。(図4)

図4 首都圏における環状ネットワークの形成


 六郷IC以南については、今年度より順次開通する予定ですが、想定以上に脆い地盤でのトンネル掘削や掘削土に含まれる自然由来の重金属等の処理対策もあわせて行いながら工事を実施しているところです。引き続き、安全対策に十分配慮しながら、早期開通を目指して工事を進めて参ります。


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