建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2018年9月号〉

【寄稿】

飯田国道事務所を支える安全衛生

―― 三遠南信工事連絡協議会の安全活動

 三遠南信工事連絡協議会会長、北沢建設株式会社
 作業所長
宮下 克寛



119番通報訓練

1.はじめに

 三遠南信工事連絡協議会は、国土交通省中部地方整備局飯田国道事務所が事業を進める三遠南信自動車道の受注者によって組織する団体です。平成30年7月現在で13現場加盟し、合同安全パトロールをはじめ、安全訓練など協議会全体で安全に対する取組を実施しています。

2.三遠南信自動車道とは

 三遠南信自動車道は、長野県飯田市の中央自動車道を起点として、静岡県浜松市北区引佐町東黒田の新東名高速道路までを結ぶ延長約100kmの自動車専用道路です。
 三遠南信の「三」は愛知県豊橋市を中心とする三河地域、「遠」は静岡県浜松市を中心とする遠州地域、「南信」は長野県飯田市を中心とする南信州地域をそれぞれ示しています。三遠南信自動車道の整備により、県境を越えた広域ネットワークが形成されるものと期待されています。
 現在、長野県飯田市から喬木村に跨がる飯喬工区と長野県と静岡県境に跨がる青崩峠工区において、飯田国道事務所が事業を進めています。

3.独自の取組み

 当協議会の独自の取組として、工事現場の位置情報を消防署と情報共有しています。地形が複雑で目印が少ない中山間地や山間地において、被災場所を迅速かつ正確に伝えることは非常に困難であり、消防署との位置情報等の情報共有は、工事現場と消防署をつなぐ命綱となっています。

4.取組の背景

 当協議会が関係する工事現場は、地形が複雑で目印が少ないため、被災場所を迅速かつ適切に伝えることが難しくなっています。
 当協議会において「119番通報時における現場位置の説明アンケート」を実施したところ、約70%が「通報に時間を要する」と回答されました。この結果、万が一事故が発生した場合に、事故発生場所の特定に時間を要し、救急隊や救助隊の到着が遅れること意味しています。
 また、青崩峠は、市街地から約40km離れており、飯田市立病院まで救急車で約60分、ドクターヘリ(松本市)でもヘリポート到着までに約30分、飯田市立病院への搬送に約10分を要する位置にあります。こうした状況から正確な被災場所の連絡を確立する必要がありました。

5.消防署との情報共有

 工事現場における救助要請の問題点は、位置情報の伝達の難しさです。この問題点を解決するために、消防署との情報共有がスタートしました。
 情報共有の内容については、発注者である飯田国道事務所と当該工区を管轄する飯田広域消防本部の間で取り決めており、作成方法や様式はマニュアル化されております。受注者は各現場の位置情報を整理して発注者に提出し、発注者が一覧表を添付して飯田広域消防本部と浜松市消防局に提出しています。

6.工事現場での訓練

救助 訓練

 飯田広域消防本部との情報共有の問題点把握と受注者の安全意識向上を目的に、平成24年から飯田広域消防本部と発注者、受注者で合同訓練を実施しています。情報共有資料を活用した119番通報訓練をはじめ、救急車の誘導訓練など、本番さながらの緊張感ある訓練を行っています。
 過去には、消防署救助隊と現場作業員が協力した訓練を行いました。現場内のクレーンを利用して地上20mの高さから被災者を救助したほか、不明者が発する僅かな音を頼りに捜索するサイレントタイムを取り入れた訓練を行いました。本年度も12月に同様の訓練を予定しています。

7.おわりに

 情報共有を始めて7年目となりますが、今後も到着までの時間にこだわって、この取組を継続していく必要があると考えます。
 位置の特定ができてこそ、『救命の連鎖』が実現できると考えています。安全にには事故防止が第一ですが、万が一の準備も重要だと考え、今後も当協議会では消防署との情報共有を継続していく所存です。


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