建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2018年9月号〉

【寄稿】

三遠南信地域の産業や生活を多面的にバックアップする三遠南信自動車道

 国土交通省 中部地方整備局
 飯田国道事務所長
尾出 清



飯喬道路
 天龍峡大橋(仮称)


 飯田国道事務所では現在、自動車専用道路である三遠南信自動車道の整備を重点的に進めています。これは長野県飯田市山本の中央自動車道を起点として、静岡県浜松市北区引佐町東黒田の新東名高速道路までを結ぶ延長約100kmの自動車専用道路として計画されました。三遠南信自動車道の整備により、県境を越えた広域ネットワークが形成されるものと期待されています。
 この三遠南信地域の「三」とは、愛知県豊橋市を中心とする東三河地域、「遠」は静岡県浜松市を中心とする遠州地域、「南信」は長野県飯田市を中心とする南信州地域をそれぞれ示しています。
 かつての三遠南信地域は、街道や舟運を通して人や物資が行き交い、広域的な交流が進んだ地域でした。

飯喬道路 飯田上久堅・喬木富田IC


 三遠南信自動車道の整備促進の機運が高まる中で、三遠南信地域には新しい交流も生まれており、かつての秋葉街道や天竜川の代わりとなる「三遠南信自動車道」の整備が切望されています。
 その整備効果としては、異常気象時通行規制区間を通らずに、幹線道路へアクセスできるネットワークが形成されます。また、地震・豪雨などの災害時において、緊急物資の輸送や救援ルート、救急医療サービスを確保する信頼性の高い道路ネットワークを確保します。
 さらに、三遠南信地域の市町村では毎年、行政・経済団体が一堂に会し「三遠南信サミット」を開催しています。その他にも多彩で豊かなこの地域の自然や文化を活かし、多種多様なイベントが共同開催されています。
 三遠南信自動車道は、飯喬道路、小川路峠道路、青崩峠道路等で構成されています。飯喬道路は、飯田市内の中央自動車道から分岐し、飯田市内を横断する道路です。
青崩峠道路 長野側坑口
青崩峠道路 静岡側坑内

 工事は平成10年度から始まりました。現在は、飯田山本ICから天龍峡IC及び龍江ICから飯田上久堅・喬木富田ICが開通しています。天龍峡ICから龍江ICでは、現在、名勝天龍峡に架かる天龍峡大橋(仮称)の工事を平成31年度供用に向けて全面展開しています。
 小川路峠道路は、伊那谷と遠山谷を結ぶ国道256号が途中の小川路峠付近の急峻な山道のため、自動車の通行ができず、そこで、これに代わる新たな交通路として、また長野・愛知・静岡県境を越えた新たな連携を促進する三遠南信自動車道の一部として整備を進めました。
 現在は喬木村氏乗から飯田市上村程野までの、矢筈トンネル区間4.8kmを供用しています。
 青崩峠道路は、三遠南信自動車道の中でも、県境の扉を開ける路線として、また、通行不能となっている国道152号の代替路として大きな期待を寄せられています。
 現在、本坑工事に先立ち、平成26年より調査坑に着手し湧水・地質データを収集しているところであり、平成30年度より本坑工事に着手する予定です。
 安心できる暮らし、文化の交流、産業の発展に役立つことが、飯田国道事務所に与えられた使命です。


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