建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2018年7月号〉

【荒川改修100年記念企画・続編】

H29-32荒川宗岡副水路樋管新設工事について

 荒川上流工事安全協議会
 大成建設株式会社  現場代理人
 所長 松葉 保孝


【図-1】全景

1.はじめに

 荒川は、埼玉県、長野県、山形県の県境にある甲武信ヶ岳を水源とする、延長173km、流域面積2,940km2の、一級河川です。荒川の流域は、埼玉県と東京都にまたがり、埼玉県に関わる流域面積は、埼玉県全面積の約3分の2を占めています。途中、利根川中流域の利根大堰で取水された、利根川の水の一部が、武蔵水路を通じて鴻巣市で、荒川に導水されます。
 本工事は、利根導水路大規模地震対策事業の一つとして設置されることとなった副水路樋管を、荒川中流域に位置する秋ヶ瀬取水堰近傍の荒川右岸堤防下に、新設する工事です。この宗岡副水路を通じて取水された水は、東京都の都市用水として朝霞浄水場へ送られる他、墨田川の水質改善のための浄化用水として、墨田川上流の新河岸川へ注水される計画です【図-1】。
 工事当該地区においては、既存の水路(宗岡水路)が存在していますが、レベル2地震動に対し、所定の耐震性能を保有しておらず、また、東京都の将来取水計画流量を確保できていません。この、宗岡副水路の新設により、所定の耐震性能及び通水機能を確保できることとなります。

【図-3】平面図
【図-4】地盤改良断面図

2.工事の概要

【図-2】全体位置図

 工事場所は、埼玉県志木市宗岡地先の、荒川右岸34.8k-50mになります【図-2】。発注者は、国土交通省関東地方整備局であり、工期は平成30年1月30日から、平成32年6月15日までの、約2年4か月です。場所打ちコンクリート構造の、副水路樋管諸元は、内空断面が3.2m×3.2mの2連、敷高はAP-0.566m(TP-1.700m)、函渠延長は約83.4mです【図-3】。基礎地盤は、軟弱な砂質土層及び粘性土層が、深さ方向に約11m続いているため、液状化対策及び沈下対策として、セメント系の材料を用いた、高圧噴射撹拌工法及び機械式撹拌工法により、地盤改良を行います【図-4】。
 施工の順序は、まず初めに、渇水期である平成30年5月末までに、樋管の周囲約250mの範囲を、壁長19.5mのV型鋼矢板による二重式仮締切工にて、締め切ります。こうすることで、6月以降の出水期以降も、以降の工事が可能となります(通年施工)。
 二重締切り完了後、既存の堤防天端AP+15.425mの堤体をAP+6.334mまで約9m掘削して、地盤改良施工基面の整形を行います。続いて、高圧噴射撹拌工法及び機械式撹拌工法にて、AP-2.666mからAP-15.666mの、深さ13mの範囲を、高圧噴射撹拌工法及び機械式撹拌工法にて、地盤改良します。改良後、土留め支保工(切梁式)による開削工法にて、樋管床付けレベルまで掘削し、樋管躯体を構築します。
 平成30年度は、二重式仮締切工から堤体掘削、地盤改良までを行い、平成31年度以降に、樋管躯体を構築する予定です。躯体数量は、コンクリート約3,000m3、鉄筋約250tonです。

3.工事の特徴

 本工事の特徴として、昭和56年より地盤沈下に伴い使用を中止している、旧朝霞水路の基礎杭(φ400鋼管杭)が100本以上、今回の新設樋管が設置される堤防下川裏側に残置されていることが挙げられます。そのため、基礎杭が残置されている川裏側の地盤改良工法として、高圧噴射撹拌工法が、基礎杭が無いとされている川表側の地盤改良工法として、機械式撹拌工法が選択されています。
 また、秋ヶ瀬取水堰への管理橋が樋管に近接して工事の支障となるため、管理橋のうちの2スパン(計22m、重量約20ton)の撤去及び復旧が必要となります【写真-1】。

【写真-1】連絡橋撤去状況

4.近隣対策

 工事個所の川裏側には、家屋が密集する人口集中地区(DID)となっているため、工事によって発生する騒音や振動の影響が最小限となるよう、対策を行います。バックホウ等重機については、低騒音型の建設機械を用いる他、二重式仮締切工及び土留め支保工の鋼矢板打設工法として、油圧式可変超高周波型バイブロハンマ(ゼロバイブロ)工法及びサイレントパイラー工法を採用しています【写真-2】。
 また、工事車両の進入・退出ルートには、交通誘導員を配置して、秋ヶ瀬公園他の河川敷施設を利用する方々や、近隣住民の方々に対する安全配慮を行います。

【写真-2】鋼矢板打設状況

5.おわりに

 荒川上流工事安全協議会は、荒川上流河川事務所管内で実施される工事の施工に係わる労働安全衛生、交通安全、防犯等に関する諸対策について協議するとともに、関係各機関との連絡を密にし、工事の円滑な進捗を図ることを目的に活動しています。
 本工事は、平成32年6月まで続く、2年以上の長期間にわたる工事となります。工事期間中は、近隣住民への配慮と感謝の気持ちを忘れず、同協議会の安全パトロール等の取組を通じて、労働災害及び交通災害の発生を未然に防ぎ、労働者の安全衛生及び職場環境の向上に努め、無事故・無災害で工事完了を迎えられるよう、努力してまいります。


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