建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2018年7月号〉

 副局長インタビュー 宗谷総合振興局

農水産業・観光業の振興に欠かせない交通ネットワーク強化と
安全性の向上や離島の防災・道路整備の強化

 北海道 宗谷総合振興局 副局長(建設管理部担当)
田中 洋海
 たなか・ひろみ
 昭和35年5月8日生、芦別市出身
 室蘭工業大学土木工学科 卒業
 平成21年 建設部 河川課 主幹(計画)
 平成23年 帯広建設管理部 地域調整課長
 平成25年 留萌建設管理部 事業室長
 平成27年 建設部 砂防災害担当課長
 平成29年 現職

── 副局長就任にあたりまして抱負をお聞かせ下さい
田中 社会資本整備を取り巻く環境が大きく変化する中、当部においては、地域のニーズや課題を的確に捉え安全で安心な地域づくりに向けて、関係自治体などと連携を図りながら、効率的かつ効果的な事業の推進に取り組みます。
 平成30年度公共事業の当初予算は約57億円となっており、当部としては、「ほっかいどう社会資本整備の重点化方針」や「公共土木施設の維持管理基本方針」などを踏まえ、効率的・効果的なインフラ整備はもとより、適切な維持管理を推進するとともに、既設施設の長寿命化を図ります。
── 安全で安心な地域づくりと防災対策強化に向けた取組についてお聞かせ下さい
クサンル川総合流域防災工事(補正)(繰越)
田中 道路事業では、管内特有の地吹雪や積雪、落石への対応として、稚内天塩線などにおける防雪柵の設置、礼文島線や船泊利礼公園線での落石防護網による落石対策等を行います。
 このほか、北海道橋梁長寿命化修繕計画に基づき、橋梁を合理的かつ効率的に維持管理することで安全で円滑な交通を確保するとともに、維持管理コストの縮減や平準化を図ります。
 治水事業では、自然災害から住民の生命や財産を守り、安全・安心に暮らせる住みよい地域づくりを目指して、河川整備や土砂災害対策などを進めていきます。
 河川整備としては、洪水被害の防止・軽減をはかるため、頓別川で掘削、築堤舗装や、稚内市街地を流れるクサンル川で護岸の工事を行うほか、迅速かつ確実な避難行動に資するため、洪水時に特化した水位計(危機管理型水位計)を設置します。
 土砂災害対策では、ハード対策として、近年、流域の荒廃が著しい利尻島の元村川やリヤウシナイ川において土石流による土砂災害を防止・軽減するため、砂防えん堤を整備するほか、利尻町政泊地区において、がけ地の崩壊を防止するため、急傾斜地崩壊対策を推進します。
 ソフト対策としては、関係自治体と連携し、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定を推進するため、必要な基礎調査を重点的に実施し、住民の安全・安心の確保に努めます。
 海岸事業では、高潮や波浪などの自然災害から住民の生命や財産を守るため、利尻富士町雄忠志内海岸において護岸などの老朽化更新と護岸の嵩上げを実施します。
── 平成30年度予算執行にあたり北海道基幹産業の農業・水産業の向上や観光・環境振興など
  整備事業の取組をお伺いします
オホーツク枝幸漁港(音標地区)外漁港施設機能強化工事外(補正)(繰越)
田中 農水産業や観光業が盛んな管内は、交通手段の多くを道路に依存していることから、道路交通のネットワーク強化と安全性の向上が必要です。
 このため、国道40号及び238号など主要幹線道路へのアクセスを強化し、通年の安全確実な交通を確保するため豊富浜頓別線の現道拡幅を行うとともに、離島住民の生活道路かつ観光ルートとして安全で快適な通行空間の確保のため、利尻富士町の鴛泊市街地街なみ環境整備事業と連携した利尻富士利尻線の歩道整備などを行います。
 また、空港事業としては、利尻空港において、航空機がオーバーランまたはアンダーシュートを起こした場合に航空機の損傷を軽減させる目的で、滑走路端安全区域を延伸するための調査設計を行います。
 加えて漁港事業としては、安定的な水産物の供給体制の確保や就労環境の改善を図るため、山臼漁港などにおいて、防砂堤等の整備を行うとともに、国産水産物の衛生管理のための基盤整備及び、漁港施設の地震・津波対策等を推進するため、音標漁港や山臼漁港などで、測量、調査、設計を進めるとともに、漁港施設の維持・保全を計画的に行うため、頓別漁港や雄忠志内漁港などにおいて施設等の長寿命化対策としての機能保全事業を実施します。
 公園事業では、宗谷ふれあい公園において、公園利用者の安全確保と施設の老朽化や維持管理費の縮減等の課題に対応するため、施設の長寿命化計画に基づき宿泊棟の分電盤の更新などを行います。
 このほか、河川事業では、魚類等の移動の連続性確保など、自然環境に配慮した川づくりのため、魚類等の生息環境に配慮し、天塩川水系の河川において魚道を整備します。
船泊利礼公園線(防安437)地方道工事(落石対策工)(補正)(繰越)

── 社会資本整備事業の担い手として地域社会に貢献、また災害時における復旧に活躍している建設業界へのメッセージなどお聞かせください
田中 地域に精通している地元建設業者は、社会資本整備はもとより、災害時のパトロールや復旧工事、冬季の除雪など、地域の安全や経済、雇用を支える上で大変大きな役割を担っております。
 しかし、就業者の減少などにより、人材の育成や技術・技能の承継が難しくなってきており、工事の品質確保など、建設業本来の役割を果たすことが困難になると懸念されております。
 こうした時代の様々な変化に対応し、建設産業が今後も持続的に発展するために、稚内建設管理部としても、北海道建設産業支援プラン2018をはじめとし、働き方改革の実現に向けた週休2日モデル工事やICT活用モデル工事などを進めてまいりますので、地元建設業者の皆様には、引き続き、安全・安心に暮らすことのできる、活力ある地域づくりに貢献されるよう期待します。

HOME