建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2018年3月号〉

【寄稿】

名古屋港金城ふ頭の再編改良事業

 国土交通省 中部地方整備局
 名古屋港湾事務所
 所長 池田 哲郎




1.名古屋港の概要

図-1 金城・弥富ふ頭での完成自動車取扱台数と今後の見通し
 名古屋港は、中部圏のものづくり産業を支える、総取扱貨物量年間約2億トン、貿易額年間約15.2兆円(輸出:約10.7兆円、輸入:約4.5兆円)を誇る日本屈指の産業物流港湾です。とりわけ完成自動車は年間約132万台を輸出しており、我が国の拠点港湾となっています(いずれも平成28年値)。一方で、自動車取扱拠点の一つである金城ふ頭では、非効率な荷役形態や施設老朽化等への対策が喫緊の課題でした。本稿では、課題の解消に向け実施中の金城ふ頭再編改良事業について紹介いたします。

2.自動車取扱に係る現状と課題

 名古屋港の公共ふ頭での完成自動車取扱は、金城・弥富両ふ頭を中心に行われています。リーマンショックによる低迷から順調な回復を見せており、特にアジア・アフリカ・中東での中古車の需要増が見込まれています。
 また、トランシップ(T/S)についても東南アジア・インド等での生産拠点拡大、及び北米・南米を中心とした需要増により、名古屋港での取扱増が見込まれています。一方で、完成自動車取扱上の課題としては、「完成自動車取扱い機能が分散していること」、「自動車運搬船が大型化していること」、「大規模地震が発生した際の完成自動車物流機能への影響が危惧されていること」、そして「施設が老朽化していること」があります。

図-2 名古屋港における自動車運搬船の船型大型化の進展

3.事業の概要

 前述の課題を踏まえて、本事業では下記の目的を達成するための整備を行うこととしました。
(1)自動車取扱機能の集約及び、交流拠点機能との分離
 泊地の一部埋め立てにより新たな土地を確保し、ふ頭内外に点在するモータープールや自動車取扱岸壁を集約することで、横持ち費用の解消につなげます。また、ふ頭北東部に集約される交流拠点機能との位置関係も明確に区分けすることで、一般・貨物交通流の分離・円滑化や安全性向上につなげます。
(2)岸壁の増深及び耐震化
 既存の岸壁(水深12m)1バースを延伸改良して大型自動車運搬船への対応を可能にすると共に、(1)で述べた埋立地を利用した耐震強化岸壁(水深12m)1バースを新規に整備します。これにより、自動車運搬船の大型化への対応や大規模地震災害時の完成自動車物流機能の維持を図ります。
(3)老朽化施設の維持管理コスト縮減
 金城ふ頭南東部泊地埋立により突堤式埠頭内の老朽化施設を一部利用転換・廃止し、維持管理・更新コスト縮減につなげます。

写真-1  施設の老朽化

4.工事の概要

図-3 金城ふ頭の再編計画

 本工事は、供用中の既存岸壁(水深10m)を延長60mに増深改良(水深12m)することで、大型自動車運搬船への対応を可能にする工事の一部(30m分)です。工事では、既設岸壁の上部コンクリートと既設タイ材を撤去し、新たに既設岸壁の背後に打設した鋼管矢板と既設矢板を上部コンクリートで一体化させました。また、施工に当たっては、工事によって供用中の既設岸壁に影響が出ることを抑えるため、既設矢板や矢板全面の被覆コンクリートの変位・変状を抑制すること、並びに供用中の近接バースへの影響を最小限に留めることに留意しました。

5.おわりに

 本工事は供用中の既設岸壁への影響が懸念されていたものの、平成29年3月に無事故・無災害で完成しました。工事完成にあたり、工事関係者に深く感謝申し上げます。名古屋港湾事務所は今後も名古屋港の着実な整備により、中部圏の発展に向けて取り組んでまいります。

写真-2  鋼管矢板の建込・打設状況

HOME