建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2018年3月号〉

【寄稿】

地域と共に創る横瀬川ダム建設事業

 横瀬川ダム関連工事連絡調整会
 (西松建設株式会社)
 会長 岩川 真一




上流側より空撮

1.工事概要

 横瀬川ダムは、渡川(四万十川)水系の中筋川の左支川に建設される多目的ダムである。高知県幡多地区と呼ばれるこの地域は、平成16年の台風23号による被害をはじめ、河川の氾濫による洪水に幾度となく見舞われてきた。また幡多地区の洪水は、小規模の洪水でも家屋浸水になり、地域住民を脅かしてきた。さらに、近年の異常な気候変動による水道の断水、濁水もあり、中筋川ダムに続く横瀬川ダムの早期建設は、洪水対策と水道用水の安定供給につながり、この地域の長年の願いでもある。

2.地域の特徴

 横瀬川ダムから近い宿毛市平田地区は、県立幡多けんみん病院をはじめとする地域医療の重要な拠点となる医療機関があり、周辺には高知西南中核工業団地がある場所である。国道56号より横瀬川上流側のダム周辺は、水田を主とする長閑な田園地帯となっている。国道56号は時間帯により交通量が多いが、国道56号からダムサイトに向かう県道50号と県道から分岐してダムサイトへ向かう市道は、交通量も少なく地域住民の生活道路、農業用道路が主体となる道路になっており、所々に車幅の狭い箇所や歩道がない箇所がある。ダムサイト周辺は、かつては民家があったが、すでに移転して頂いており、現在では湛水池外に民家が1軒あるのみとなっている。ダム工事車両の入口付近には、牛舎小屋が存在する。また、ダム本体の下流側には、トドロの滝と呼ばれる滝の保全区間があり、地域の人々が祠を奉り大切にしている滝である。

3.ダム事業と地域住民説明会による活動

 ダム工事では、多くの工事車両が走行する。横瀬川ダム事業は、次の特徴がある。 @ダム本体工事で使用するコンクリート骨材は地域の砕石工場からの購入であり、最盛期には1日150台ほどのダンプトラックによる輸送がある。 Aダム工事現場までのルートは、工事車両すべてが県道50号を通行する。交通量が少なく、見通しも悪くない道路であるためスピードが出やすい。県道沿いには民家が所々に有り、農道等の狭い道路と数カ所交差している。 Bダムサイト湛水池内にある道路は、民家があるため一部が生活道路となっているが、ほとんどが工事車両の通行となっている。 Cダム用の光ケーブル配管を埋設するために、県道を片側交互通行により、交通規制をしなければならない。 Dダムサイト入口付近には牛舎があり、家畜への影響を考慮しなければならない。
 これらの問題を解決するために、事業全体の事故防止を目的とした横瀬川ダム関連工事連絡調整会を組織し、地域との調和および調整を行っている。まず工事通行車両などの問題に対し、地域のご理解を得るために、発注者(国土交通省四国地方整備局中筋川総合開発工事事務所)とともに、住民説明会を近接地区ごとに開催した。この説明会の中で、地域住民のご意見なども聞き入れ、ルールを定めている。
 ルール1:県道50号を通行する工事車両については 40Km/hr とする。
 ルール 2:通行時間も通学時間などを考慮し、8:00 〜 17:00 までとする。
 ルール 3:ダム工事車両と他車両を区分するため、車両の見やすい場所にステッカーを掲示、骨材運搬用ダンプトラックには、前後の見えやすい場所にゼッケンを装着。
 ルール 4:県道から狭く見通しの悪い農道交差部などにカーブミラーを設置。また、工事車両が農道に入らないよう通行禁止看板を設置。
 ルール 5:骨材運搬前や片側交互通行規制前に県道沿いの民家へのビラ配布。
 以上の活動により、地域住民の車両が工事車両の影響なく、安心して走行できる対策を講じている。また、ダムサイト内の生活道路については、道路清掃を徹底しており、ダムサイト入口の牛舎がある道路際には仮囲いを設置し、家畜への騒音などの影響を少なくしている。これまでに、地域との大きなトラブルや苦情はなく、事業を進行している。

下流側より空撮

4.地域と共に創るダムをめざす ―地域貢献について−

 ダム事業を促進するためには、地域と良い関係を築き、協力して頂かなければならない。地域貢献活動として組織を通じて、農道の舗装補修や田畑進入路の整備を実施している。
 また、地域住民とともに道路沿いの草刈活動、秋祭りへの協力、工事の進捗情報を記載した「横瀬川ダムだより」の配布などを実施している。そしてダムの重要性と工事規模、工事へのご理解をいただくために、地域住民を対象とした現場見学会を開催している。これからも、組織が一体となって地域と協力し、平成31年度のダム試験湛水を目指し、安全に配慮した工事施工に邁進していく。


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